page icon

長時間作用性β₂刺激薬(LABA)

長時間作用性β₂刺激薬(LABA)

① 薬効群の概要

長時間作用性β₂刺激薬(LABA: Long-Acting Beta₂-Agonist)は、気管支平滑筋のβ₂受容体を刺激して気管支を拡張させる「長期管理用の気管支拡張薬」。 作用持続時間が12〜24時間と長く、喘息ではICSとの併用で使用(単独使用は禁忌)、COPDでは中心的な気管支拡張薬の一つとして位置づけられる。

② 作用機序

  • 気管支平滑筋の β₂アドレナリン受容体 に選択的に結合
  • Gsタンパク質アデニル酸シクラーゼ活性化cAMP↑
  • cAMP増加により:
    • 気管支平滑筋の弛緩 → 気管支拡張
    • 肥満細胞からのメディエーター遊離抑制
    • 線毛運動の亢進 → 気道クリアランス改善
    • 血管透過性の低下 → 気道浮腫の軽減
  • SABAとの違い:脂溶性が高く、細胞膜に長時間留まるため作用が持続(12〜24時間)
  • ICSとの相乗効果:ICSがβ₂受容体の発現を増加させ、LABAがステロイド受容体の核内移行を促進

③ サブグループと代表薬(例)

一般名主な商品名剤形特徴・備考
サルメテロールセレベント®吸入(DPI)1日2回。ICS配合剤:アドエア®(+フルチカゾン)
ホルモテロールオーキシス®吸入(DPI)1日2回。速効性もあり。ICS配合剤:シムビコート®(+ブデソニド)
インダカテロールオンブレス®吸入(DPI)1日1回。COPD用。LAMA配合剤:ウルティブロ®(+グリコピロニウム)
ビランテロール(配合剤のみ)吸入(DPI)1日1回。ICS配合剤:レルベア®(+フルチカゾンフランカルボン酸)
ツロブテロールホクナリン®テープ貼付剤1日1回貼付。小児・高齢者に使いやすい。経皮吸収型。
  • 吸入LABA が主流(サルメテロール、ホルモテロール、インダカテロール、ビランテロール)
  • ホルモテロール は速効性があり、シムビコート®のSMART療法(維持+発作時の両方に使用)に利用される
  • 貼付剤(ツロブテロール) は吸入困難な患者に有用だが、気管支拡張効果は吸入薬より弱い

④ 看護のポイント(観察事項)

  • ⚠️ 喘息での単独使用は禁忌:LABA単独では喘息死のリスクが増加 → 必ず ICSと併用(ICS/LABA配合剤が推奨)
  • 吸入手技の確認
    • DPI(ドライパウダー):強く深く速く吸入(十分な吸気流量が必要)
    • 吸入後は息止め(5〜10秒)
    • デバイスごとに操作方法が異なるため、切り替え時は再指導
  • 貼付剤(ホクナリン®テープ)の指導
    • 貼付部位:胸部・背部・上腕部のいずれか(毎回貼り替え位置を変える)
    • 入浴後に貼付する場合は皮膚が乾いてから
    • 発汗・かぶれの観察
    • 「咳止めテープ」ではない → 気管支拡張薬であることを説明
  • 副作用の観察
    • β₂刺激薬共通の副作用
      • 動悸・頻脈(β₁への作用もわずかにあるため)
      • 手指振戦(骨格筋β₂受容体への作用)
      • 低カリウム血症(Na⁺/K⁺-ATPase活性化による細胞内K⁺取り込み↑)
      • 高血糖(肝糖新生亢進)
    • 頭痛・めまい
    • 不整脈(頻度は低いが心疾患のある患者で注意)
  • 効果判定
    • 呼吸困難・喘鳴の改善、PEF(ピークフロー)値の改善
    • 夜間覚醒・SABA使用頻度の減少
  • SMART療法(シムビコート®)の説明
    • ホルモテロールの速効性を活かし、定期吸入+発作時の追加吸入 を1つのデバイスで行う
    • 発作時の追加は1吸入ずつ、1日最大8吸入まで(定期吸入分を含む)

⑤ 適応・使い分けの要点(簡潔)

  • 気管支喘息
    • ステップ2以上でICS単独不十分な場合 → ICS/LABA配合剤(最も推奨されるステップアップ)
    • LABA単独使用は禁忌(喘息増悪・死亡リスク↑)
    • ホルモテロール含有製剤ではSMART療法が可能
  • COPD
    • LAMA(長時間作用性抗コリン薬)と並ぶ 第一選択の気管支拡張薬
    • LAMA/LABA配合剤で相加効果
    • 増悪頻回・好酸球高値ではICS追加(トリプル療法:ICS/LAMA/LABA)
  • 吸入困難な患者
    • ツロブテロール貼付剤(ホクナリン®テープ):小児・高齢者・認知症患者などに有用

⑥ 相互作用・注意すべき併用

  • β遮断薬:β₂受容体を遮断 → LABAの効果減弱 → 喘息・COPD患者では 非選択性β遮断薬は禁忌(β₁選択性でも注意)
  • キサンチン系薬(テオフィリン等):cAMP↑の相乗効果で気管支拡張が増強するが、低カリウム血症・頻脈のリスクも増強
  • 利尿薬(チアジド系・ループ利尿薬):低カリウム血症の増悪に注意
  • ステロイド(全身投与):低カリウム血症を増悪させる可能性
  • MAO阻害薬・三環系抗うつ薬:カテコラミン作用増強 → 心血管系副作用のリスク↑
  • QT延長を起こす薬剤:LABAもわずかにQT延長のリスク → 併用時は心電図モニタリング