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ホスホジエステラーゼ5阻害薬(PDE5阻害薬)/肺高血圧症

ホスホジエステラーゼ5阻害薬(PDE5阻害薬)

① 概要

PDE5阻害薬は、肺血管平滑筋のcGMP分解を抑制し、NO-cGMP経路を増強することで肺血管を拡張させる薬剤である。肺動脈性肺高血圧症(PAH)の治療に用いられる。もともと勃起不全(ED)治療薬として開発された薬剤が、肺高血圧症にも応用されている。

② 作用機序

  1. 血管内皮細胞からNO(一酸化窒素)が放出される
  1. NOは平滑筋細胞内の可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)を活性化
  1. sGCがGTP → cGMPに変換
  1. cGMPが血管平滑筋を弛緩させ、血管を拡張
  1. cGMPは通常PDE5(ホスホジエステラーゼ5)により分解される
  1. PDE5阻害薬がcGMPの分解を抑制 → cGMP濃度が上昇 → 肺血管拡張が持続
💡
覚え方:PDE5阻害薬は「cGMPの分解を止める」→ NO-cGMP経路を増強する薬。NOそのものを増やすのではなく、NOの効果を長持ちさせるイメージ。

③ 肺高血圧症の分類と位置づけ

肺高血圧症は原因により5群に分類される(Nice分類)。PDE5阻害薬は主に第1群:肺動脈性肺高血圧症(PAH)に使用される。
分類病態PDE5阻害薬の適応
第1群:PAH肺動脈自体の血管病変◎ 主な適応
第2群:左心疾患左心不全による肺うっ血×(原則使用しない)
第3群:肺疾患COPD・間質性肺炎など△(限定的)
第4群:CTEPH慢性血栓塞栓性肺高血圧症△(手術不能例に検討)
第5群:その他多因子・不明×

④ 代表的な薬剤

一般名商品名用法特徴
シルデナフィルレバチオ®1日3回 経口(20mg/回)PAH治療薬として最初に承認。ED治療薬(バイアグラ®)と同成分だが用量が異なる
タダラフィルアドシルカ®1日1回 経口(40mg)半減期が長く1日1回投与が可能。アドヒアランス良好。ED治療薬(シアリス®)と同成分
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覚え方
  • レバチオ®(シルデナフィル)= 1日3回 → 頻回投与
  • アドシルカ®(タダラフィル)= 1日1回 → 長時間作用で簡便
  • ED治療薬と同成分・別用量・別商品名であることに注意!

⑤ PAH治療における他の薬剤との関係

PAHの治療は3つの経路をターゲットとした薬剤を組み合わせる併用療法が基本。
経路薬剤作用
NO-cGMP経路PDE5阻害薬(シルデナフィル、タダラフィル)cGMP分解抑制 → 肺血管拡張
NO-cGMP経路sGC刺激薬(リオシグアト:アデムパス®)sGCを直接刺激 → cGMP産生↑
エンドセリン経路ERA(アンブリセンタン、ボセンタン、マシテンタン)エンドセリン受容体拮抗 → 血管収縮・増殖抑制
プロスタサイクリン経路PGI₂製剤(エポプロステノール等) IP受容体作動薬(セレキシパグ)血管拡張・血小板凝集抑制・血管リモデリング抑制
⚠️
PDE5阻害薬とsGC刺激薬(リオシグアト)の併用は禁忌!
  • 両者ともNO-cGMP経路を増強するため、併用すると過度の血圧低下を引き起こす
  • 同じ経路の薬剤は「PDE5阻害薬 or sGC刺激薬」のいずれかを選択

⑥ 禁忌・注意事項

禁忌

  • 硝酸薬(ニトログリセリン等)との併用:NOを介してcGMPが増加する薬剤との併用で、重篤な低血圧を起こす
  • sGC刺激薬(リオシグアト)との併用:上記の通り
  • 重度の肝障害

注意事項

  • 低血圧:体血圧も低下させるため、もともと低血圧の患者やα遮断薬との併用に注意
  • 視覚異常:色覚変化(青みがかって見える)がまれに出現
  • 勃起持続症(まれ)
  • CYP3A4で代謝:CYP3A4阻害薬(ケトコナゾール、リトナビル等)との併用で血中濃度上昇
  • 食事の影響:シルデナフィルは高脂肪食で吸収が遅延する

⑦ ED治療薬との比較

PAH治療薬ED治療薬
シルデナフィルレバチオ® 20mg×3回/日バイアグラ® 25〜50mg 頓用
タダラフィルアドシルカ® 40mg×1回/日シアリス® 5〜20mg 頓用
投与方法定期服用(毎日)頓用(性行為前)
目的肺血管拡張(肺血管のPDE5)陰茎海綿体の血管拡張
💡
同じ成分でも商品名・用量・投与方法が全く異なる。処方せんの商品名を確認し、取り違えに注意!

⑧ 看護のポイント(観察事項)

  • 血圧モニタリング:PDE5阻害薬は体血圧も低下させるため、起立性低血圧・めまい・ふらつきに注意。特に投与開始時
  • 硝酸薬の併用確認:狭心症治療中の患者が硝酸薬を使用していないか必ず確認(併用禁忌)
  • 服薬アドヒアランス:レバチオ®は1日3回で飲み忘れが起きやすい → 服薬時間の工夫・確認
  • 副作用の観察
    • 頭痛、顔面紅潮、消化不良(血管拡張作用による)
    • 視覚異常(色覚変化)の有無
    • 鼻出血・鼻閉
  • 運動耐容能の評価:PAH患者では6分間歩行試験(6MWT)やWHO機能分類で治療効果を評価
  • 右心不全徴候の観察:頸静脈怒張、下肢浮腫、肝腫大、体重増加 → 悪化時は速やかに報告
  • 他剤との相互作用確認:CYP3A4阻害薬・α遮断薬・降圧薬との併用に注意
  • 患者教育:ED治療薬と同成分であることから心理的抵抗がある患者もいる → 作用機序と目的が異なることを丁寧に説明