page icon

坐剤

下剤として用いる坐剤

Laxative Suppositories

① 薬効群の概要

  • 直腸内に挿入して局所的に作用させ、排便を促進する固形の外用製剤
  • 浣腸と同じ直腸投与だが、液体ではなく固形であり、体温で溶解して作用する
  • 経口薬よりも即効性が高く(15〜60分)、浣腸よりも簡便で侵襲が少ない
  • 代表薬はビサコジル坐薬(テレミンソフト®)炭酸水素ナトリウム・無水リン酸二水素ナトリウム坐薬(新レシカルボン®)
  • 経口の刺激性下剤(センノシド等)や浸透圧性下剤で効果不十分な場合のレスキュー手段として位置づけられる
  • 看護師が挿入を行う機会も多く、正しい手技と観察の理解が重要
 

② 作用機序

ビサコジル坐薬(テレミンソフト®)── 刺激性下剤

ステップ内容
直腸内で溶解坐薬が体温で溶解し、ビサコジルが直腸粘膜に直接接触
粘膜刺激ビサコジルが直腸・下部大腸の粘膜を直接刺激アウエルバッハ神経叢を介して蠕動運動↑
水分分泌促進同時に粘膜からの水分・電解質の分泌を促進 → 便の軟化にも寄与
排便促進蠕動亢進+便軟化 → 15〜60分で排便が得られる

炭酸水素ナトリウム坐薬(新レシカルボン®)── ガス産生型

ステップ内容
直腸内で溶解坐薬が体温で溶解し、炭酸水素ナトリウムと無水リン酸二水素ナトリウムが反応
CO₂ガス産生化学反応により二酸化炭素(CO₂)ガスが発生 → 直腸内でガスが膨張
直腸伸展刺激CO₂ガスによる直腸の伸展刺激排便反射を誘発
排便促進排便反射の誘発 → 10〜30分で排便。薬物としての粘膜刺激は少なくマイルドな作用
💡
ビサコジル坐薬 vs 新レシカルボン® の作用の違い
  • ビサコジル:粘膜を薬理学的に直接刺激 → 蠕動↑+水分分泌↑ → 作用が強い
  • 新レシカルボン®:CO₂ガスで物理的に直腸を膨張 → 排便反射を誘発 → マイルドな作用
  • → 便秘の程度や患者の状態に応じて使い分ける

③ 代表薬

一般名先発品名用法・用量特徴
ビサコジルテレミンソフト®坐薬 10mg成人:1回10mg 直腸内挿入 小児:1回1/2〜1個刺激性下剤の坐薬。直腸粘膜を直接刺激し蠕動↑。効果発現:15〜60分。作用が確実で強い
炭酸水素ナトリウム・無水リン酸二水素ナトリウム新レシカルボン®坐剤成人:1回1〜2個 直腸内挿入CO₂ガス産生型。直腸をガスで膨張させ排便反射を誘発。効果発現:10〜30分。作用がマイルド。習慣性が少ない
新レシカルボン®は刺激が穏やかなため、高齢者や長期使用にも比較的適している

④ 便秘治療における坐剤の位置づけ

ステップ役割薬剤
Step 1(定時薬・経口)便を軟化・増大 → 基本薬酸化Mg、モビコール®等
Step 2(レスキュー・経口)蠕動を直接促進 → 排便なき時の頓用ピコスルファート液、センノシド
Step 3a(レスキュー・坐薬)直腸から局所的に排便を促進 → 経口薬で不十分な場合テレミンソフト®坐薬、新レシカルボン®
Step 3b(レスキュー・浣腸)直腸に薬液を注入し排便を促進 → 坐薬でも不十分な場合グリセリン浣腸
💡
坐薬 vs 浣腸の使い分け
  • 坐薬:固形で挿入が簡便。侵襲が少ない。自己挿入が容易。まずはこちらから試みることが多い
  • 浣腸:液体を注入。即効性がやや高い。宿便への対応に優れる。看護師の手技が必要なことが多い
  • → 一般的に坐薬 → 浣腸の順で段階的に使用

⑤ 副作用・注意事項

ビサコジル坐薬(テレミンソフト®)の副作用

  • 腹痛・腹部不快感(蠕動亢進による → 最も多い)
  • 直腸刺激感・灼熱感
  • 下痢(用量依存性)
  • 長期連用で耐性形成の可能性(経口の刺激性下剤と同様)

新レシカルボン®の副作用

  • 腹部膨満感(CO₂ガスによる)
  • 腹痛(軽度 → ビサコジルより少ない)
  • 直腸刺激感(軽度)

共通の注意事項

  • 急性腹症(腸閉塞・虫垂炎等)が疑われる場合は禁忌
  • 直腸に炎症・出血・裂傷がある場合は慎重投与
  • 挿入後は便意が来るまで我慢してもらうと効果が高まる(溶解に時間が必要)
  • 坐薬は冷所保存(室温で溶解してしまうため)
  • ビサコジル坐薬は連用を避け、頓用が原則(耐性形成のリスク)
  • 新レシカルボン®は比較的習慣性が少なく、長期使用にも適する
  • 妊婦:ビサコジルは子宮収縮を誘発する可能性 → 慎重投与

🚫 禁忌

  • 急性腹症が疑われる患者(腸閉塞・虫垂炎・腸管穿孔等)
  • 直腸出血のある患者(未診断の場合)
  • 本剤の成分に過敏症の既往
🩺

⑥ 看護師の観察ポイント

📋 挿入前の確認
  • 腹痛の有無・腸閉塞の除外を確認
  • 現在の排便状況・最終排便日を確認
  • 肛門・直腸の異常(痔核・裂肛・出血等)がないか確認
  • 妊娠の有無を確認(ビサコジル → 慎重投与)
  • プライバシーの配慮(カーテン・声かけ・露出を最小限に)

💉 挿入の手技ポイント
  • 体位:左側臥位が基本
  • 坐薬の先端を水や潤滑剤で湿らせると挿入しやすい
  • 肛門からゆっくり挿入し、指の第二関節程度の深さまで押し入れる
  • 便に触れないように奥へ挿入(直腸粘膜に接触させることで効果を発揮)
  • ビサコジル坐薬は直腸粘膜に直接作用するため、便の塊の手前ではなく粘膜側に接するように
  • 挿入後、口呼吸を促しリラックスさせる
  • 挿入後しばらく(5〜15分)は排便を我慢してもらうと効果が高まる

🩸 挿入後の観察
  • 排便の有無・時間・量・性状を確認
  • 効果発現の目安:
    • テレミンソフト®15〜60分
    • 新レシカルボン®10〜30分
  • 腹痛の程度を確認(ビサコジルでは蠕動亢進に伴う腹痛が出やすい)
  • 血便・出血がないか確認 → あれば直腸粘膜損傷の可能性 → 医師に報告
  • 坐薬が排出されていないか確認(挿入が浅いと押し出されることがある)
  • 排便後の清潔ケア

⚡ 使い分けの判断ポイント
  • マイルドな作用が望ましい場合(高齢者・長期使用)→ 新レシカルボン®
  • 確実な排便が必要な場合(宿便・術前等)→ テレミンソフト®
  • 坐薬で不十分なら → グリセリン浣腸へステップアップ

💊 保管・取り扱いの注意
  • 坐薬は冷所保存(冷蔵庫)が原則
  • 溶けてしまった坐薬は使用しない
  • 包装から出したら速やかに挿入する
  • 半量使用の場合は縦に切断して使用(斜めに切ると用量が不正確に)

💬 患者教育
  • 「お尻から入れて、直腸を刺激して便を出しやすくする薬」と説明
  • テレミンソフト®:「腸を刺激して動かす薬」→ 少しお腹が痛くなることがある
  • 新レシカルボン®:「ガスを出して腸を膨らませて便意を起こす薬」→ お腹が張る感じがある
  • 挿入後しばらく我慢すると効果が高まることを伝える
  • 自己挿入の方法を指導(水で湿らせる・深く入れる・口呼吸)
  • 冷蔵庫で保管するよう指導
  • 坐薬は毎日使うものではなく、必要時のレスキュー的な薬であることを伝える(特にビサコジル)
  • 繰り返し使う場合は経口薬の見直しを医師に相談するよう指導