甲状腺ホルモン薬
甲状腺ホルモン薬は、不足した甲状腺ホルモンを外因性に補充することで甲状腺機能低下症(橋本病など)を治療する薬。レボチロキシン(T₄製剤)が第一選択であり、生涯にわたる補充療法が必要となることが多い。
- 経口投与されたT₄(レボチロキシン)は末梢組織で脱ヨウ素酵素により活性型T₃に変換される
- T₃が核内受容体に結合 → 遺伝子転写を調節 → 基礎代謝↑・成長促進・心機能維持
- 内因性甲状腺ホルモンと同一の作用を発揮(生理的補充療法)
- T₄の半減期は約6〜7日と長い → 1日1回投与で安定した血中濃度を維持
- TSHへのネガティブフィードバックにより、下垂体からのTSH分泌が調節される
| 代表薬(一般名) | 先発品例 | 特徴 |
|---|---|---|
| レボチロキシンナトリウム(T₄) | チラーヂンS® | 第一選択薬。半減期が長く1日1回投与。安定した血中T₃・T₄を維持。空腹時服用が基本 |
| リオチロニンナトリウム(T₃) | チロナミン® | 即効性があるが半減期が短い(約1日)。粘液水腫性昏睡の緊急時や、T₄→T₃変換障害時に使用 |
| 乾燥甲状腺 | チラーヂン末® | ブタ甲状腺由来。T₃・T₄を含有。現在はあまり使用されない(T₃/T₄比が不安定) |
- 過量投与による甲状腺中毒症状 → 動悸・頻脈・発汗・体重減少・手指振戦・不眠 → 用量調整が必要
- 心血管系への影響(特に高齢者・心疾患患者)→ 少量から開始し緩徐に増量が原則。狭心症・不整脈の誘発に注意
- 服薬タイミングの指導 → 起床時・空腹時に服用(食事の30分以上前)。食事と同時だと吸収↓
- 吸収を低下させる併用薬・食品 → 鉄剤・カルシウム剤・制酸薬・コレスチラミン等は2〜4時間以上間隔をあける
- 定期的な甲状腺機能検査 → TSH・FT₃・FT₄を定期測定。TSH正常化を治療目標とする
- 服薬アドヒアランス → 自覚症状がなくても自己判断で中断しないよう指導(機能低下症が再発)
- 妊娠中の管理 → 妊娠中は甲状腺ホルモン必要量が30〜50%増加。妊娠判明時は速やかに医師に連絡し用量調整
- 新生児・小児への投与 → クレチン症(先天性甲状腺機能低下症)では早期発見・早期治療が知的発達に重要
- 高齢者への投与 → 心負荷を避けるため12.5〜25μg/日から開始し、4〜6週間ごとに漸増