甲状腺機能低下症
主な症状
甲状腺ホルモン不足により、全身の代謝が低下する
全身症状
- 倦怠感・易疲労感
- 寒がり(耐寒能低下)
- 体重増加(食欲低下にもかかわらず)
- 低体温
心血管症状
- 徐脈
- 心嚢液貯留(重症例)
- 高コレステロール血症(動脈硬化促進)
皮膚・外見
- 粘液水腫(non-pitting edema):特に顏面・四肢。押しても凹まない浮腫
- 皮膚乾燥・脱毛(眉毛外僣1/3の脱落)
- 声の嵱れ(喋場声)
消化器症状
- 便秘(腸管踠動低下)
- 食欲低下
精神神経症状
- 記憶力低下・集中力低下
- 拑うつ傾向
- 傾眠傾向
筋骨格系
- 筋力低下・筋痙政(つり)
- CK上昇(筋障害による)
- 深部腱反射の弛緩相遅延(Woltman徴候)
その他
- 月経異常(過多月経)・不妊
- 貫血(大球性貫血)
- 低ナトリウム血症(ADH作用増強による水貯留)
治療
基本治療:甲状腺ホルモン補充療法
| 薬剤名 | 主な作用 | 使用場面 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| レボチロキシンナトリウム水和物(T₄) | 末梢でT₃に変換 → 生理的補充 | 第一選択薬。すべての甲状腺機能低下症 | 空腹時服用。高齢者は少量から。吸収低下薬に注意 |
| リオチロニン(T₃) | 即効性のある活性型ホルモン | 粘液水腫性昏睡の緊急時 | 半減期が短く日常的な補充には不向き |
用量調整の原則
- 若年者:レボチロキシン 50〜100μg/日から開始
- 高齢者・心疾患患者:12.5〜25μg/日から開始 → 4〜6週間ごとに漸増
- 治療目標:TSHの正常化
- 維持量:通常 50〜200μg/日(個人差が大きい)
- 多くの場合、生涯にわたる補充療法が必要
看護師向け:観察・指導ポイント
🫀 バイタルサイン・全身状態の観察
- 徐脈・低体温・低血圧の有無
- 体重の推移(增加傾向)
- 粘液水腫(顏面・四肢の非圧痕性浮腫)の観察
- 意識レベルの低下(傾眠・意識障害)があれば粘液水腫性昏睡を疑う
📊 検査値のモニタリング
- TSH・FT₃・FT₄の推移を把握
- 投与開始後または用量変更後、4〜6週間後にTSH測定
- 安定後は 6〜12ヶ月ごと のフォローアップ
- コレステロール値・CK値の改善も治療効果の指標
💊 服薬タイミングの指導(極めて重要)
- 起床時・空腹時に服用(食事の30分以上前)
- 食事・コーヒーと同時だと吸収低下
- 鉄剤・カルシウム剤・制酸薬等は2〜4時間以上間隔をあける
🫀 心血管系の観察(特に高齢者)
- レボチロキシン開始時・増量時に胸痛・動悸・不整脈の有無を確認
- 心負荷を避けるため、高齢者は必ず少量から開始
💊 服薬アドヒアランスの指導
- 自覚症状がなくても自己判断で中断しないよう指導
- 生涯にわたる補充療法が必要なことが多いことを説明
- 中断すると機能低下症が再発することを繰り返し伝える
🤰 妊娠中の管理
- 妊娠中は甲状腺ホルモン必要量が30〜50%増加
- 妊娠判明時は速やかに医師に連絡し用量調整
- 母体の機能低下は胎児の知的発達に影響 → 絶対に自己中断しない
⚡ 粘液水腫性昏睡の兆候観察
- 低体温・意識レベル低下・徐脈・低血圧があれば直ちに医師に報告
- 特に冬季・感染症羆患時・鎮静薬使用時にリスク↑
🌿 生活指導
- 保温の確保(寒がりが強いため)
- 適度な運動(代謝低下による体重増加防止)
- 便秘対策(食物繊維・水分摂取・腸管運動促進)
- 皮膚ケア(乾燥対策:保湿剤の使用)