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甲状腺機能低下症

甲状腺機能低下症

甲状腺ホルモン(T₃・T₄)の産生・分泌が低下し、代謝低下・全身の機能低下をきたす疾患群
最も多い原因は橋本病(慢性甲状腺炎)。その他、甲状腺術後・放射性ヨウ素治療後・薬剤性・先天性など
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主な原因疾患

原因頻度特徴
橋本病(慢性甲状腺炎)最多自己免疫性。抗TPO抗体・抗Tg抗体陽性。甲状腺が徐々に破壊される。女性に多い
甲状腺術後多い全摘術後は必発。亜全摘後も高率で発症
放射性ヨウ素(¹³¹I)治療後多いバセドウ病の放射性ヨウ素治療後に高率で発症
薬剤性比較的多いヨウ素過剰摂取・アミオダロン・リチウム・抗甲状腺薬の過量など
先天性(クレチン症)約3000〜5000人に1人新生児マススクリーニングで発見。早期治療が知的発達に極めて重要
中枢性(二次性)まれ下垂体・TSH分泌低下による。汎下垂体機能低下症の一部
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主な症状

甲状腺ホルモン不足により、全身の代謝が低下する

全身症状
  • 倦怠感・易疲労感
  • 寒がり(耐寒能低下)
  • 体重増加(食欲低下にもかかわらず)
  • 低体温

心血管症状
  • 徐脈
  • 心嚢液貯留(重症例)
  • 高コレステロール血症(動脈硬化促進)

皮膚・外見
  • 粘液水腫(non-pitting edema):特に顏面・四肢。押しても凹まない浮腫
  • 皮膚乾燥・脱毛(眉毛外僣1/3の脱落)
  • 声の嵱れ(喋場声)

消化器症状
  • 便秘(腸管踠動低下)
  • 食欲低下

精神神経症状
  • 記憶力低下・集中力低下
  • 拑うつ傾向
  • 傾眠傾向

筋骨格系
  • 筋力低下・筋痙政(つり)
  • CK上昇(筋障害による)
  • 深部腱反射の弛緩相遅延(Woltman徴候)

その他
  • 月経異常(過多月経)・不妊
  • 貫血(大球性貫血)
  • 低ナトリウム血症(ADH作用増強による水貯留)

粘液水腫性昏睡(緊急)

重症の甲状腺機能低下症が急激に悪化した生命に関わる緊急状態
  • 誘因:感染症・寒冷曝露・鎮静薬・麻酔薬・レボチロキシンの自己中断
  • 症状:低体温(34℃以下になることも)・意識障害・徐脈・低血圧・低換気・低ナトリウム血症
  • 致死率が高い(約20〜60%)
  • 治療:T₄(レボチロキシン)またはT₃(リオチロニン)の緊急投与 + ヒドロコルチゾン + 保温 + 全身管理
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診断のポイント

血液検査
  • FT₃↓・FT₄↓・TSH↑(原発性の典型パターン)
  • 中枢性:FT₃↓・FT₄↓・TSH↓または正常(下垂体障害)
  • 橋本病:抗TPO抗体・抗Tg抗体陽性
  • 高コレステロール血症・CK上昇・大球性貫血なども手がかり

潜在性(無症候性)甲状腺機能低下症
  • FT₄正常・TSHのみ軽度上昇
  • 症状がないことも多いが、高コレステロール血症・動脈硬化促進のリスク
  • TSH≥10μIU/mLではレボチロキシン補充を検討
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治療

基本治療:甲状腺ホルモン補充療法
薬剤名主な作用使用場面注意点
レボチロキシンナトリウム水和物(T₄)末梢でT₃に変換 → 生理的補充第一選択薬。すべての甲状腺機能低下症空腹時服用。高齢者は少量から。吸収低下薬に注意
リオチロニン(T₃)即効性のある活性型ホルモン粘液水腫性昏睡の緊急時半減期が短く日常的な補充には不向き

用量調整の原則
  • 若年者:レボチロキシン 50〜100μg/日から開始
  • 高齢者・心疾患患者:12.5〜25μg/日から開始 → 4〜6週間ごとに漸増
  • 治療目標:TSHの正常化
  • 維持量:通常 50〜200μg/日(個人差が大きい)
  • 多くの場合、生涯にわたる補充療法が必要
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看護師向け:観察・指導ポイント

🫀 バイタルサイン・全身状態の観察
  • 徐脈・低体温・低血圧の有無
  • 体重の推移(增加傾向)
  • 粘液水腫(顏面・四肢の非圧痕性浮腫)の観察
  • 意識レベルの低下(傾眠・意識障害)があれば粘液水腫性昏睡を疑う

📊 検査値のモニタリング
  • TSH・FT₃・FT₄の推移を把握
  • 投与開始後または用量変更後、4〜6週間後にTSH測定
  • 安定後は 6〜12ヶ月ごと のフォローアップ
  • コレステロール値・CK値の改善も治療効果の指標

💊 服薬タイミングの指導(極めて重要)
  • 起床時・空腹時に服用(食事の30分以上前)
  • 食事・コーヒーと同時だと吸収低下
  • 鉄剤・カルシウム剤・制酸薬等は2〜4時間以上間隔をあける

🫀 心血管系の観察(特に高齢者)
  • レボチロキシン開始時・増量時に胸痛・動悸・不整脈の有無を確認
  • 心負荷を避けるため、高齢者は必ず少量から開始

💊 服薬アドヒアランスの指導
  • 自覚症状がなくても自己判断で中断しないよう指導
  • 生涯にわたる補充療法が必要なことが多いことを説明
  • 中断すると機能低下症が再発することを繰り返し伝える

🤰 妊娠中の管理
  • 妊娠中は甲状腺ホルモン必要量が30〜50%増加
  • 妊娠判明時は速やかに医師に連絡し用量調整
  • 母体の機能低下は胎児の知的発達に影響 → 絶対に自己中断しない

⚡ 粘液水腫性昏睡の兆候観察
  • 低体温・意識レベル低下・徐脈・低血圧があれば直ちに医師に報告
  • 特に冬季・感染症羆患時・鎮静薬使用時にリスク↑

🌿 生活指導
  • 保温の確保(寒がりが強いため)
  • 適度な運動(代謝低下による体重増加防止)
  • 便秘対策(食物繊維・水分摂取・腸管運動促進)
  • 皮膚ケア(乾燥対策:保湿剤の使用)