page icon

褐色細胞腫

副腎髄質のカテコールアミン産生腫瘍

褐色細胞腫(フェオクロモサイトーマ)

副腎髄質のクロム親和性細胞(褐色細胞)から発生する腫瘍で、カテコールアミン(アドレナリン・ノルアドレナリン)を過剰に産生・分泌 する。
切断面が褐色を呈するため「褐色細胞腫」と呼ばれる。
多くは良性だが、約10%は悪性とされる。
📋

疫学・特徴

  • 高血圧患者の 1%未満 に認められるまれな疾患
  • 好発年齢:20〜50歳代(あらゆる年齢で発症しうる)
  • 約90%が副腎髄質に発生(副腎外発生=パラガングリオーマ
  • 約10〜40%に遺伝性素因あり
    • 多発性内分泌腫瘍症2型(MEN2
    • フォン・ヒッペル・リンドウ病(VHL
    • 神経線維腫症1型(NF1
🔴

主な症状

カテコールアミンの過剰分泌により、以下の症状が 発作的 に出現する
症状機序
発作性高血圧(最も重要)α₁受容体刺激 → 末梢血管収縮
頭痛急激な血圧上昇に伴う
発汗交感神経亢進
動悸・頻脈β₁受容体刺激 → 心拍数↑
高血糖グリコーゲン分解促進・インスリン分泌抑制
顔面蒼白皮膚血管収縮
体重減少代謝亢進
⚠️ 典型的3徴:頭痛・発汗・動悸
🔬

検査・診断

検査内容
尿中・血中カテコールアミン測定アドレナリン・ノルアドレナリン・ドパミンの上昇を確認
尿中メタネフリン・ノルメタネフリンカテコールアミン代謝産物の測定(スクリーニングに有用)
尿中VMA(バニリルマンデル酸)カテコールアミンの最終代謝産物
CT / MRI腫瘍の局在診断
¹³¹I-MIBG シンチグラフィ副腎髄質・交感神経組織への集積 → 腫瘍の局在・転移評価
💊

治療

根治治療は外科的切除(腫瘍摘出術)

術前管理(薬物療法)

術中の高血圧クリーゼを予防するため、必ず術前に十分な薬物コントロール を行う
薬剤分類役割・ポイント
フェノキシベンザミン非選択的・非可逆的α遮断薬第一選択薬 術前2〜3週間前から開始し、十分にα遮断を行う
ドキサゾシン選択的α₁遮断薬フェノキシベンザミンの代替として使用
プロプラノロール 等β遮断薬β遮断薬α遮断が十分に行われた後に 頻脈コントロール目的で追加
⚠️

⚠️ 最重要ポイント:β遮断薬の単独投与は禁忌

褐色細胞腫に対して β遮断薬のみを投与すると、著しい血圧上昇 を引き起こす

なぜ危険なのか?
  1. カテコールアミンは α受容体(血管収縮=血圧UP)と β受容体(心拍数UP + 血管拡張)の両方に作用している
  1. β遮断薬だけを投与すると、血管を拡張するβ₂作用が消失
  1. 血管を収縮するα作用がブレーキなしで暴走 → 血圧が著しく上昇(高血圧クリーゼ

鉄則:必ずα遮断薬を先に投与し、その後にβ遮断薬を追加する
🩺

禁忌となる薬剤

褐色細胞腫(またはパラガングリオーマ)の患者では、以下の薬剤が禁忌・注意となる
薬剤理由
β遮断薬(単独投与)α作用の暴走による高血圧クリーゼ
メトクロプラミド(プリンペラン)カテコールアミン放出促進 → 高血圧クリーゼ
スルピリド(ドグマチール)急激な昇圧発作のおそれ
グルカゴン急激な昇圧発作を起こすことがある
📊

まとめ

項目内容
疾患名褐色細胞腫(pheochromocytoma)
発生部位副腎髄質(クロム親和性細胞)
病態カテコールアミンの過剰産生・分泌
3徴頭痛・発汗・動悸
診断尿中・血中カテコールアミン、メタネフリン、MIBG シンチ
治療外科的切除(術前にα遮断 → β遮断の順で管理)
第一選択薬α遮断薬(フェノキシベンザミン)
絶対注意β遮断薬の単独投与は禁忌(高血圧クリーゼの危険)