GIP/GLP-1受容体作動薬
GIP/GLP-1受容体作動薬は、2つのインクレチン受容体(GIP受容体とGLP-1受容体)の両方に作用するデュアルアゴニスト。GLP-1受容体作動薬単独よりもさらに強力な血糖降下・体重減少効果が期待できる。糖尿病治療薬および肥満症治療薬として承認されている。
- GIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド)とGLP-1の両方の受容体を活性化
- GIPとGLP-1の相加的な作用により:
- 血糖依存的なインスリン分泌促進(GIP + GLP-1の両方の経路)
- グルカゴン分泌の抑制
- 胃排出の遅延
- 食欲抑制(中枢性)→ 大幅な体重減少
- GLP-1受容体作動薬単独よりも強力な効果が得られる理由:GIPを介したインスリン分泌促進が上乗せされる
| 一般名 | 商品名 | 投与頻度 | 用量 |
|---|---|---|---|
| チルゼパチド | マンジャロ®(糖尿病) ゼップバウンド®(肥満症) | 週1回皮下注射 | 糖尿病:2.5mgから開始、最大15mg 肥満症:2.5mgから開始、最大15mg |
糖尿病治療と肥満症治療の違い
| マンジャロ®(糖尿病) | ゼップバウンド®(肥満症) | |
|---|---|---|
| 適応 | 2型糖尿病 | 肥満症(BMI≥35、またはBMI≥27 + 合併症) |
| 目的 | 血糖コントロール | 体重減少 |
| 用量 | 2.5〜15mg/週 | 2.5〜15mg/週 |
| 保険適用 | あり | あり(条件あり) |
SURPASS試験(糖尿病)
- チルゼパチド vs セマグルチド・インスリン・プラセボなどを比較
- HbA1c低下:最大2.58%の低下(既存薬で最強)
- 体重減少:最大約12.4kgの減少
SURMOUNT試験(肥満症)
- 肥満症患者に対し、72週で約20〜25%の体重減少を達成
- 心血管リスクの低減も報告
- 消化器症状(最も多い副作用) → 悪心・嘔吐・下痢・便秘・食欲低下。特に投与初期や増量時に多い。少量(2.5mg)から開始、4週間ごとに漸増することで軽減
- 急性膵炎 → 激しい腹痛(上腹部から背部への放散痛)・嘔吐があれば直ちに服薬中止・受診
- 甲状腺髄様癌 → 動物実験で報告。甲状腺髄様癌の家族歴・MEN2の既往がある場合は禁忌
- 低血糖 → 単独では起こしにくいが、SU薬やインスリンとの併用時はリスクあり。併用薬の減量を検討
- 自己注射の指導 → ペン型注入器の操作方法。毎週同じ曜日に投与(時刻は問わない)。食事に関係なく投与可能。注射部位のローテーション
- 打ち忘れ時の対応 → 次の投与予定日まで3日以上あれば気づいた時点で投与。3日未満なら次の予定日に投与
- 保管方法 → 未使用:冷蔵庫(2〜8℃)。使用中:室温保管可(21日以内)。凍結禁止
- 体重変動の観察 → 大幅な体重減少が期待されるが、過度の体重減少や栄養不良に注意。筋肉量の低下(サルコペニア)にも留意
- 服薬アドヒアランス → 消化器症状による自己中断を防ぐ。治療の意義と副作用の見通しを丁寧に説明