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前立腺癌

前立腺癌

前立腺に発生する悪性腫瘍。男性に最も多い癌の一つ(罹患率:男性癌1位)。
多くはアンドロゲン依存性が高く、ホルモン療法(アンドロゲン除去療法:ADT)が薬物治療の中心。
進行が緩徐なことが多いが、進行癌や去勢抵抗性癌(CRPC)では予後不良。
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基本情報

  • 好発年齢:50歳以上(加齢とともに増加)
  • リスク因子:加齢・前立腺癌の家族歴・高脂肪食・肥満
  • 病理分類:ほとんどが腺癌(adenocarcinoma)
  • Gleasonスコア:組織学的悪性度の指標。6+10のスケール(高いほど悪性度が高い)
  • 転移:骨転移が多い(特に骨盤・腰椎・肸椎)。リンパ節転移も
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主な症状

初期
  • 無症状のことが多い(PSA検査で発見されることが増加)

局所進行時
  • 排尿困難・頻尿・残尿感(前立腺肥大症と類似)
  • 血尿・射精時の血液混入

進行・転移時
  • 骨転移痛(腰痛・骨盤痛が多い)
  • 病的骨折
  • 脇椎転移による脊髄圧迫症状(下肢麻痺・膨胱直腸障害)
  • 全身倦怠感・体重減少
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診断のポイント

PSA(前立腺特異抗原)
  • 前立腺癌のスクリーニング・経過観察の最も重要な指標
  • 基準値:4.0 ng/mL以上で精査を検討(年齢別基準もあり)
  • ❗ 5α還元酵素阻害薬服用中は約50%低下するため、測定値×2で評価

その他の検査
  • 直腸診(DRE):前立腺の硬結・不整
  • 経直腸超音波(TRUS)+生検
  • MRI(局所進展の評価)
  • 骨シンチグラフィ(骨転移の検索)
  • CT(リンパ節転移・遠隔転移の評価)
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治療の全体像

病期主な治療法
限局性(早期)監視療法(低リスク)・手術(根治的前立腺全摘術)・放射線療法
局所進行性放射線療法 + ホルモン療法
転移性(ホルモン感受性)ホルモン療法(ADT)が中心。化学療法の併用も
去勢抵抗性(CRPC)第二世代抗アンドロゲン薬・CYP17阻害薬・化学療法
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薬物治療の詳細

① ホルモン療法(アンドロゲン除去療法:ADT)

前立腺癌はアンドロゲン依存性が高く、アンドロゲンを除去することで腫瘍が縮小・進行が抑制される。
薬剤分類代表薬作用機序注意点
GnRHアナログリュープロレリン(リュープリン®) ゴセレリン(ゾラデックス®)GnRH受容体のダウンレギュレーション → LH/FSH↓ → テストステロン↓投与初期にフレアアップ現象(一過性の症状悪化)
GnRHアンタゴニストデガレリクス(ゴナックス®)GnRH受容体を直接阻害 → LH/FSH↓ → テストステロン↓フレアアップなし。即座にテストステロン低下
抗アンドロゲン薬(第一世代)ビカルタミド(カソデックス®) フルタミド(オダイン®)アンドロゲン受容体を競合的に阻害肝障害。GnRHアナログと併用(CAB療法

② 去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)の治療薬

ADTでテストステロンを去勢レベルまで低下させても病勢が進行する状態。副腎・腫瘍内でのアンドロゲン合成や、アンドロゲン受容体の変異が原因。
薬剤分類代表薬作用機序注意点
第二世代抗アンドロゲン薬エンザルタミド(イクスタンジ®) アパルタミド(アーリーダ®) ダロルタミド(ニュベクア®)アンドロゲン受容体を強力に阻害。受容体の核内移行も抑制疲労・けいれん(エンザルタミド)。皮膚症状(アパルタミド)
CYP17阻害薬アビラテロン(ザイティガ®)CYP17阻害 → 精巣・副腎・腫瘍内のアンドロゲン合成↓プレドニゾロン併用必須。低カリウム血症・浮腫・高血圧
化学療法ドセタキセル(タキソテール®) カバジタキセル(ジェブタナ®)微小管阻害 → 細胞分裂抑制骨髄抑制・末梢神経障害・悪心・脱毛

③ 骨転移への治療

薬剤作用注意点
ゾレドロン酸(ゾメタ®)・デノスマブ(ランマーク®)骨吸収抑制 → 骨関連イベント(骨折等)の予防顎骨壊死(歯科処置前に確認必須)・低カルシウム血症
ラジウム223(ゾーフィゴ®)α線放出核種 → 骨転移部に集積し腫瘍細胞を破壊骨転移のみCRPCに適応。内臓転移がないことが条件

CAB療法(複合アンドロゲン除去療法)

  • GnRHアナログ(またはアンタゴニスト)+ 抗アンドロゲン薬の併用
  • 精巣由来のテストステロン(GnRH製剤で抑制)+ 副腎由来のアンドロゲン(抗アンドロゲン薬で阻害)の両方をブロック
  • 日本では標準的に用いられることが多い
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看護師向け:観察・指導ポイント

🩸 フレアアップ現象の観察(GnRHアナログ投与初期)
  • 投与開始後1〜2週間は骨疼痛の増強・尿路閉塞・脊髄圧迫症状に注意
  • 抵抗アンドロゲン薬の併用の有無を確認

🌡️ ADTの副作用の観察
  • ホットフラッシュ(急なほてり・発汗)→ QOLへの影響が大きい。枕元のたらい等の工夫
  • 骨密度低下 → 定期的な骨密度測定・ Ca・VitD補充・転倒予防
  • 代謝異常 → 体重・血糖・脂質の定期モニタリング
  • 心血管リスク → 心電図・血圧の確認
  • 性機能障害・性欲低下 → 心理的サポート

📊 PSAのモニタリング
  • 治療効果の指標としてPSA値の推移を把握
  • ADT開始後にPSAが低下しない・再上昇する場合はCRPCへの移行を疑う

💊 アビラテロン使用時の観察
  • プレドニゾロン併用の確認(必ず併用)
  • 低カリウム血症(筋力低下・不整脈)・浮腫・高血圧の観察

🦴 骨転移患者のケア
  • 疼痛管理:骨転移痛の評価・鎮痛薬の効果確認
  • 病的骨折の予防:転倒防止・体動の注意
  • 脊髄圧迫症状の早期発見:下肢のしびれ・筋力低下・排尿障害があれば緊急対応
  • 顎骨壊死の予防(ゾレドロン酸・デノスマブ使用時):歯科受診の確認・口腔ケアの指導

💊 服薬アドヒアランス
  • 副作用(QOL低下)による自己中断を防ぐため、治療の意義を繰り返し説明
  • 患者・家族への心理的サポート(性機能障害・ボディイメージの変化)