抗アミロイドβモノクローナル抗体
アルツハイマー病の病態の中心である アミロイドβ(Aβ)蛋白 を標的としたモノクローナル抗体製剤。脳内に蓄積したAβの除去を促進することで、症状の進行抑制だけでなく 病態そのものの進行を遅らせる(疾患修飾)ことを目的とする新規治療薬。
- 脳内に蓄積した Aβプロトフィブリル(可溶性凝集体)や Aβプラーク(老人斑)に結合
- 免疫系(ミクログリアなど)を介して Aβの貪食・除去を促進
- Aβ蓄積の減少 → 神経細胞障害の進行を抑制
- → 従来のChE阻害薬やNMDA受容体拮抗薬とは異なり、原因物質(Aβ)を直接標的とする疾患修飾薬(DMT)
| 一般名 | 先発品 | 投与方法 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| レカネマブ | レケンビ® | 点滴静注 2週間に1回 | Aβプロトフィブリルに高い親和性。可溶性Aβ凝集体とプラークの両方を標的。早期アルツハイマー病(MCI〜軽度認知症)が対象。臨床試験で認知機能低下の進行を約27%抑制 |
| ドナネマブ | ケサンラ® | 点滴静注 4週間に1回 | AβのN末端ピログルタミン酸修飾型(p-Glu Aβ)を標的。プラーク除去効果が高い。早期アルツハイマー病が対象。Aβプラークが十分に除去されれば投与終了も検討 |
- 対象:早期アルツハイマー病(MCIまたは軽度認知症)
- 投与前に必須:
- アミロイドPET または 髄液中Aβ検査 でAβ蓄積を確認
- 頭部MRI でベースライン評価(微小出血等の確認)
- ApoEε4遺伝子型 の確認(ホモ接合体はARIAリスクが高い)
ARIA(Amyloid-Related Imaging Abnormalities:アミロイド関連画像異常) が最も重要な副作用。
- ARIA-E(浮腫型):脳浮腫・滲出液貯留
- ARIA-H(出血型):脳微小出血・脳表面のヘモジデリン沈着
- 多くは 無症状 だが、頭痛・混乱・視覚変化・めまいが生じることがある
- ApoEε4ホモ接合体 でリスクが特に高い
- 投与開始後 定期MRIモニタリングが必須(特に投与初期)
- ARIAの徴候の観察:頭痛・混乱・視覚変化・めまい・悪心・意識変容の有無
- 定期MRIのスケジュール管理:投与開始後、定期的にMRIを実施(特に初期は毎月)
- 点滴静注中の観察:インフュージョンリアクション(発熱・悪寒・血圧変動・蛕麻疹等)の観察
- 投与時間:点滴は約1時間かけて投与。投与後も一定時間観察
- 抗血栓薬の併用に注意:抗凝固薬・抗血小板薬の併用はARIA-H(出血)リスクを高める可能性
- 患者・家族への説明:治療目標は「治癒」ではなく「進行抑制」であること、ARIAのリスク、定期通院の必要性を十分に説明
- 服薬アドヒアランス:定期的な通院・点滴投与が必要 → 介護者の協力体制の確保