認知症

認知症

認知症とは

後天的な脳の障害により、一度獲得した認知機能(記憶・判断力・言語・実行機能など)が持続的に低下し、日常生活や社会生活に支障をきたす状態。原因疾患により複数の病型に分類される。

認知症の主な分類

病型頻度病態・原因特徴的な症状治療薬
アルツハイマー型認知症(AD)約60〜70%Aβ蛋白の蓄積(老人斑)+タウ蛋白の過リン酸化(神経原線維変化)→ 神経細胞脱落・脳萎縮(海馬から)近時記憶障害から始まる。見当識障害(時間→場所→人物)、判断力低下、失語・失行・失認。緩徐に進行ChE阻害薬(ドネペジル等) NMDA受容体拮抗薬(メマンチン) 抗Aβ抗体(レカネマブ等)
血管性認知症(VaD)約20%脳梗塞・脳出血などの脳血管障害による神経細胞障害階段状に悪化(脳卒中の再発ごと)。感情失禁・意欲低下。障害部位により症状が多彩(まだら認知症)。神経局所症状を伴うことが多い確立した治療薬なし。脳卒中の再発予防(降圧薬・抗血小板薬等)が中心。ChE阻害薬が使用されることも
レビー小体型認知症(DLB)約4〜5%脳内に レビー小体(α-シヌクレインの凝集体)が蓄積認知機能の変動(良い日と悪い日)、幻視(リアルな人物・動物)、パーキンソニズム(筋固縮・小刻み歩行)、REM睡眠行動障害、自律神経障害ドネペジル(唯一の適応)。抗精神病薬に 過敏 → 少量でも重篤な副作用のリスク
前頭側頭型認知症(FTD)約2〜5%前頭葉・側頭葉の選択的萎縮(タウ蛋白やTDP-43の異常蓄積)人格変化(脱抑制・無関心・常同行動)、言語障害(失語)。記憶障害は初期には目立たないことが多い。比較的若年発症(65歳未満)確立した治療薬なし。BPSDに対する対症療法(SSRI等)

主な認知症の特徴比較

ADVaDDLBFTD
発症緩徐急性(脳卒中後)緩徐緩徐
経過進行性階段状進行性(変動あり)進行性
初期症状記憶障害障害部位による幻視・認知変動人格変化・言語障害
記憶障害早期から目立つあり(まだら)軽度(初期)初期には目立たない
特徴的所見海馬萎縮脳梗塞・出血痕後頭葉低灌流前頭葉・側頭葉萎縮
神経症状目立たない(初期)片麻痺・構音障害等パーキンソニズム目立たない(初期)

中核症状とBPSD

分類内容
中核症状(脳の障害から直接)記憶障害、見当識障害、判断力低下、実行機能障害、失語・失行・失認
BPSD(行動・心理症状)妄想(物盗られ妄想等)、幻覚(幻視)、徘徊、興奮・攻撃性、無気力・うつ症状、睡眠障害、食行動異常、不安・焦燥
💡
治療の考え方
  • 中核症状 → 薬物療法(ChE阻害薬・NMDA拮抗薬・抗Aβ抗体)で進行抑制
  • BPSD → 非薬物的介入が基本(環境調整・コミュニケーション・活動)、必要時に薬物療法
  • 抗精神病薬 はBPSDに使用されることがあるが、DLBでは 過敏性 に注意(少量でも重篤な副作用)
  • 認知症の原因疾患の鑑別が治療選択に直結する

看護のポイント

🩺
  • 病型による症状の違いを理解:同じ「認知症」でも病型により症状・経過・治療が異なる
  • 安全の確保:転倒予防(DLBのパーキンソニズム)、徘徊対策、誤嚥予防
  • BPSDへの対応:非薬物的介入を優先(環境調整・コミュニケーション・活動の提供)
  • DLBの抗精神病薬過敏:少量でも重篤なパーキンソニズム悪化・過鎮静のリスク → 注意深く観察
  • 介護者支援:介護負担の評価、レスパイトケアや社会資源の活用を提案
  • 服薬管理:認知機能低下による服薬困難 → 介護者への支援指導、貼付剤の活用