副交感神経遮断薬

副交感神経遮断薬(抗ムスカリン薬/抗コリン薬)

① 薬効群の概要

  • 副交感神経遮断薬は、主に ムスカリン受容体(M受容体) を遮断して、副交感神経の作用(rest and digest)を弱める薬
  • その結果、分泌↓(唾液・気道分泌など)、平滑筋弛緩(気管支拡張、消化管運動↓、膀胱排尿筋↓)、心拍↑(迷走神経トーン低下)などが起こる
  • 適応は多岐(呼吸器、泌尿器、消化器、眼科、麻酔科など)だが、抗コリン作用の副作用が問題になりやすい(特に高齢者)

② 作用機序

  • 標的は ムスカリン受容体(M1〜M5)(臨床的には M2(心臓)/M3(平滑筋・腺・眼)のイメージが重要)
    • 心臓(M2遮断):心拍↑、房室伝導↑方向
    • 気道(M3遮断):気管支拡張+気道分泌↓
    • 消化管(M3遮断):運動↓・分泌↓(便秘方向)
    • 膀胱(M3遮断):排尿筋収縮↓ → 蓄尿(尿意切迫の改善方向)
    • 眼(M3遮断):散瞳+調節麻痺(近見困難)、眼圧上昇リスク

③ 代表薬(分類と例)

※採用薬・適応は施設/国で異なるため代表例として整理。

呼吸器(気管支拡張:抗ムスカリン吸入薬)

分類薬剤例(一般名)主な用途・ポイント
SAMAイプラトロピウム など喘息/COPDの気管支拡張。口渇、尿閉に注意
LAMAチオトロピウム、グリコピロニウム、ウメクリジニウム などCOPD維持療法など。緑内障・前立腺肥大では注意

泌尿器(過活動膀胱:抗ムスカリン薬)

分類薬剤例(一般名)主な用途・ポイント
抗ムスカリン薬ソリフェナシン、オキシブチニン、トルテロジン など尿意切迫・頻尿の改善。口渇、便秘、尿閉、せん妄に注意

消化器(鎮痙)

分類薬剤例(一般名)主な用途・ポイント
鎮痙薬ブチルスコポラミン など疝痛などで平滑筋の攣縮を緩める。緑内障・前立腺肥大で注意

麻酔・救急(徐脈対応など)

分類薬剤例(一般名)主な用途・ポイント
抗ムスカリン薬アトロピン など徐脈対応など(状況により)。頻脈・尿閉・せん妄に注意

④ 看護のポイント(観察事項)

  • せん妄・認知機能:見当識障害、興奮、幻視(特に高齢者)
  • 口渇:口腔ケア、嚥下・誤嚥リスク
  • 便秘:排便状況、腹部症状
  • 尿閉:排尿困難、残尿感、下腹部膨満(前立腺肥大がある場合は特に)
  • 眼症状:かすみ目、眼痛(閉塞隅角緑内障のリスク)
  • 循環:頻脈、動悸
  • 体温:発汗低下による熱こもり(特に暑熱環境、小児/高齢者)
⚠️
高齢者では抗コリン負荷(Anticholinergic burden)が問題になりやすい:転倒、便秘、尿閉、せん妄などが出たら、薬剤全体(OTCのかぜ薬・抗ヒスタミン薬も含む)を見直す。

関連ワード

  • ムスカリン受容体
  • 副交感神経
  • 副交感神経アゴニスト(コリン作動薬)
  • 交感神経(自律神経のバランス)