内分泌療法

がんの内分泌療法(ホルモン療法)

① 概要

ホルモン(エストロゲン、アンドロゲン など)のシグナルに依存して増殖するがんに対し、ホルモンの産生・作用を抑えることで腫瘍増殖を抑制する治療。代表は 乳がん(ER陽性) と 前立腺がん。
  • 「細胞障害性抗がん薬」と比べると、一般に長期で継続しやすい一方、骨・代謝・血栓・更年期様症状などの有害事象が問題になりやすい
  • 単独療法に加え、分子標的薬(CDK4/6阻害薬、mTOR阻害薬、PI3K阻害薬、AR阻害薬など)との併用が標準となる場面が増えている

② 作用機序(大枠)

  • ホルモンを減らす(産生抑制):
    • 例:閉経前乳がんでの卵巣機能抑制、前立腺がんでの去勢療法(ADT)
  • 受容体の作用を止める(受容体拮抗/シグナル遮断):
    • 例:エストロゲン受容体(ER)やアンドロゲン受容体(AR)を阻害
  • ホルモンの変換を止める(合成経路阻害):
    • 例:アロマターゼ阻害、CYP17阻害 など

③ 主な薬効群(例)

領域薬効群(例)代表薬(例)ポイント(例)
乳がん(ER陽性)SERM(ER調節薬)タモキシフェン閉経前で重要。血栓/子宮内膜、CYP相互作用など。
乳がん(ER陽性)アロマターゼ阻害薬(AI)レトロゾール アナストロゾール エキセメスタン閉経後で中心。骨量低下、関節痛。
乳がん(ER陽性)SERD(ER分解薬)フルベストラント(注)進行再発で使用。注射製剤。
乳がん(閉経前)卵巣機能抑制(LHRH/GnRH作動薬)ゴセレリン など更年期様症状、骨量低下に注意。
前立腺がんADT:LHRH/GnRH作動薬/拮抗薬リュープロレリン(作動) デガレリクス(拮抗)などテストステロン低下。骨・代謝・心血管リスク。
前立腺がんAR阻害薬(抗アンドロゲン)エンザルタミド、アパルタミド等倦怠感、転倒/骨折、薬剤ごとの注意点。
前立腺がんアンドロゲン合成阻害アビラテロン(+ステロイド)ミネラルコルチコイド過剰(高血圧/低K)など。

④ 観察・指導ポイント(共通で押さえる)

  • 更年期様症状:ほてり、発汗、気分変動、性機能関連
  • 骨の健康:骨量低下/骨粗鬆症(AI、ADT、卵巣機能抑制で特に)
    • 体重負荷運動、Ca/VitD、骨保護薬の適応など(治療方針に従う)
  • 代謝・心血管:体重増加、脂質異常、耐糖能、血圧(ADTで注意)
  • 血栓:下肢痛・腫脹、息切れ/胸痛(タモキシフェン等で注意)
  • 肝機能/電解質:内服薬・併用薬に応じて(例:アビラテロンでK低下など)
  • アドヒアランス:長期治療になりやすいので、服薬継続の支援が重要
⚠️
内分泌療法は「長く続ける治療」。強い吐き気や脱毛よりも、骨・代謝・血栓・心血管などの“生活の質に影響する副作用”がポイント。ほてり・関節痛・体重変化なども含め、我慢せず早めに相談して調整する。