低Ca血症

低Ca血症(低カルシウム血症)

① 概要(なぜ重要?)

低Ca血症は、神経・筋の興奮性が亢進し、テタニーやけいれん、不整脈(QT延長)を起こし得る。原因として低Alb(見かけの低Ca)や低Mg、ビタミンD不足/腎機能低下などの背景評価が重要。
  • 典型症状:口周囲のしびれ、手足のしびれ、筋けいれん、テタニー、けいれん
  • まず確認:バイタル、呼吸、意識、痙攣の有無、心電図
  • まず検査:
    • 補正Ca(Albで補正)またはイオン化Ca(iCa)(可能なら)
    • Mg、P、Alb、腎機能(BUN/Cr)、PTH、25(OH)D(必要時)
    • 酸塩基(pH上昇=アルカローシスでiCa低下)

② 主な原因(整理)

  • 見かけの低Ca:低アルブミン血症(iCaは保たれることがある)
  • 真の低Ca:
    • 低PTH:術後(甲状腺/副甲状腺)、自己免疫など
    • PTH抵抗性:偽性副甲状腺機能低下症など
    • ビタミンD不足/活性化低下:日光不足、吸収不良、CKD など
    • 低Mg:PTH分泌/作用低下 → Caが上がりにくい
    • 高P:CKD、腫瘍崩壊などでCaが下がり得る
    • 急性膵炎、大量輸血(クエン酸)など

③ 心電図(典型)

  • QT延長(TdPリスク)
  • 徐脈、心室性不整脈(状況により)

④ 薬物治療(作用機序つき)

方針は「症状/重症度で静注の要否を決める」+「原因(VitD、Mg、PTH、P)を是正する」。

A. 症状あり/重症(テタニー、けいれん、重度QT延長など)

  • カルシウム製剤(静注:グルコン酸Ca など)
    • 作用機序:血中Ca(特にイオン化Ca)を上げ、神経・筋の興奮性亢進と心筋電気生理学的異常を改善
    • 注意:投与速度・濃度・ルートは院内規定に従う(血管外漏出、徐脈/不整脈、ジギタリス併用などに注意)

B. 軽症〜中等症/維持

  • 経口Ca製剤(例:炭酸Ca、乳酸Caなど:採用品目による)
    • 作用機序:腸管からCaを補充し、慢性的な不足を補う
    • 注意:便秘、腎機能、尿路結石リスク(背景により)
  • ビタミンD製剤(原因がVitD不足/活性化低下のとき)
    • 作用機序:腸管でのCa吸収を増やし、PTH過剰を抑えつつCaを維持しやすくする(製剤により活性化段階が異なる)
    • CKDでは活性型が選ばれることがある(適応・用量は病態で調整)

C. 低Mgがある場合(最重要)

  • 硫酸Mg(経口/静注)
    • 作用機序(概念):低Mgにより低下しているPTH分泌/作用が回復し、Caが上がりやすくなる(Ca補正の反応性が改善)

D. 高リン血症が背景の場合

  • CKD等ではリン吸着薬や食事管理を検討(病態により)
    • 作用機序:腸管でリンを結合し、Pを下げてCa低下の背景を改善し得る

注意(実務)

  • まず「補正Ca」か「iCa」を確認し、低Albによる見かけの低Caを区別する。
  • 低Caが治りにくいときは、低Mgと高Pを見直す(セットで動く)。
  • QT延長がある場合は、薬剤性(QT延長薬)やK/Mgも含めて総合的に評価する。