高Na血症

高Na血症(高ナトリウム血症)

① 概要(なぜ危険?)

高Na血症は多くが「Naが増えた」ではなく、水が不足して相対的にNaが高い(高浸透圧)状態。急激な補正は脳浮腫のリスクがあるため、原因と慢性/急性を見極めて段階的に補正する。
  • 典型症状:口渇、倦怠感、興奮/せん妄、意識障害、けいれん(重症)
  • まず確認:意識、バイタル、脱水所見、尿量、腎機能
  • まず検査:血清Na、血糖、BUN/Cr、浸透圧、尿浸透圧、尿Na(可能なら)

② 原因分類(まずは水の出入り)

  • 水摂取不足:意識障害、嚥下困難、介護・環境要因
  • 水喪失が多い:
    • 腎外:発熱・発汗、呼吸(過換気)、下痢
    • 腎性:浸透圧利尿(高血糖、尿素)、利尿薬、腎障害回復期
  • 尿崩症(中枢性/腎性):低張尿(尿浸透圧低い)+多尿が手がかり
  • Na負荷(相対的に少ないが重要):高張食塩水、NaHCO3大量投与、誤投与など

③ 薬物治療(作用機序つき)

原則は「自由水を補う」+「原因を止める」。循環不全があればまず循環を立て直してから自由水補正へ移る。

A. まず循環維持が必要(ショック/重度脱水など)

  • 等張輸液(0.9% NaCl など)
    • 作用機序:循環血漿量を回復して臓器灌流を確保する(Naを下げる目的ではない)
    • 循環が安定したら、自由水補正へ

B. 自由水の補正(Naを下げる本体)

  • ブドウ糖液(例:5%ブドウ糖)
    • 作用機序:代謝されると実質的に「自由水」として働き、血清Naを低下させる
  • 経口/経管の水(可能なら)
    • 作用機序:自由水投与により血清浸透圧を下げる
  • 注意:
    • 慢性高Naでは、急速補正で脳浮腫のリスク → 補正速度に注意(施設基準に従い頻回採血)
    • 低Kや高血糖など合併があるとNa補正の見え方が変わるため、併存異常も同時に管理

C. 尿崩症が疑われる場合

  • デスモプレシン(中枢性尿崩症)
    • 作用機序:V2受容体刺激 → 集合管でアクアポリン2発現↑ → 水再吸収↑ → 尿量減少・高Na改善
    • 注意:投与後は低Naへの反転に注意(自由水投与量とセットで管理)
  • 腎性尿崩症(薬剤性を含む):
    • 原因薬剤の中止・調整(例:リチウム等)
    • 状況によりサイアザイド系利尿薬等が用いられることがある(専門管理下で)

D. Na負荷が原因の場合

  • 原因投与の中止/調整(高張食塩水、NaHCO3など)
  • 体液過剰を伴う場合は利尿薬も検討(病態により)

注意(実務)

  • 高Naは「水が足りない」ことが多い:自由水の不足/喪失の評価が最重要。
  • 補正は必ず計画的に(特に慢性):補正速度を管理し、頻回にNaを再検する。
  • 多尿+低張尿があれば尿崩症を疑い、デスモプレシン反応や背景(術後・頭部病変など)も含めて評価する。