高Ca血症

高Ca血症(高カルシウム血症)

① 概要(なぜ危険?)

高Ca血症は、脱水・腎機能悪化・意識障害・不整脈などを起こし得る。治療は「まず補液」で腎血流とCa排泄を回復させ、原因(悪性腫瘍/副甲状腺/薬剤など)に応じて追加治療を行う。
  • 典型症状("stones, bones, groans, psychiatric overtones"):
    • 腎:口渇、多尿、脱水、腎機能悪化、尿路結石
    • 消化器:便秘、悪心、腹痛
    • 神経:傾眠、せん妄、筋力低下
    • 心:QT短縮、徐脈、(重症で)不整脈
  • まず確認:意識、バイタル、脱水、尿量、心電図
  • まず検査:補正CaまたはiCa、P、Mg、腎機能、PTH、25(OH)D/1,25(OH)2D(必要時)

② 主な原因(頻度が高いもの)

  • 悪性腫瘍関連:PTHrP、骨転移、血液腫瘍など
  • 原発性副甲状腺機能亢進症(PTH高値)
  • ビタミンD関連:VitD過剰、肉芽腫性疾患(サルコイドーシス等で活性化)
  • 薬剤:サイアザイド、リチウム、Ca/VitD製剤過量 など
  • 不動、甲状腺機能亢進など(状況により)

③ 薬物治療(作用機序つき)

実務では「①補液」「②骨吸収抑制」「③速効性の橋渡し」「④原因治療」の順で考える。

A. 補液(第一選択)

  • 生理食塩水(0.9% NaCl)
    • 作用機序:脱水を補正してGFRを改善し、尿中Ca排泄を増やす(Na負荷でCa利尿が起こりやすい)
    • 注意:心不全など容量負荷に注意(病態で調整)

B. 利尿(補液後に検討)

  • ループ利尿薬(例:フロセミド)
    • 作用機序:ヘンレ上行脚でNa-K-2Cl共輸送を阻害 → ルーメン正電位低下 → Ca再吸収が減り、Ca排泄↑
    • 位置づけ:脱水を改善した後、体液過剰が問題になる場合などに検討(「最初から利尿」ではない)

C. 骨吸収抑制(効果発現は数日)

  • ビスホスホネート(例:ゾレドロン酸、パミドロン酸)
    • 作用機序:破骨細胞機能を抑制し、骨からのCa放出(骨吸収)を抑える
    • 使う場面:悪性腫瘍関連高Ca血症など
    • 注意:腎機能、顎骨壊死リスク、効果発現までタイムラグ
  • デノスマブ(採用/適応がある場合)
    • 作用機序:RANKL阻害 → 破骨細胞の分化・活性化を抑制
    • 位置づけ:ビスホスホネート不応/腎機能制限などで検討されることがある

D. 速効性(橋渡し)

  • カルシトニン
    • 作用機序:破骨細胞を抑制+腎でのCa排泄を促進し、比較的速やかにCaを下げる
    • 注意:効果減弱(タキフィラキシー)が起こりやすく短期向き

E. 原因に応じた治療

  • グルココルチコイド(VitD過剰や肉芽腫性疾患が疑われる場合など)
    • 作用機序:活性型VitD産生・作用を抑え、腸管Ca吸収を低下させる方向に働く
  • PTH高値(副甲状腺機能亢進):根本治療は手術や原因治療(薬物は状況により)
  • 透析:重症・腎不全・内科的治療抵抗性などで検討

注意(実務)

  • まず「補正Ca」か「iCa」で評価し、脱水/腎機能をセットでみる。
  • Ca/VitD製剤、サイアザイドなどの内服があれば過量・相互作用を確認し中止/調整を検討。
  • 低K/低Mgなどを合併していると不整脈リスクが上がるため、電解質全体を同時に補正する。