低Na血症

低Na血症(低ナトリウム血症)

① 概要(なぜ危険?)

低Na血症は「血清Naが低い」だけでなく、低浸透圧による脳浮腫が問題になる。緊急性は 症状 と 発症の速さ(急性/慢性) で決まる。
  • 典型症状:頭痛、悪心・嘔吐、倦怠感、意識障害、けいれん(重症)
  • まず確認:意識・けいれん、バイタル、神経症状、尿量
  • まず検査:血清Na、血糖、BUN/Cr、浸透圧、尿浸透圧、尿Na(可能なら)、甲状腺/副腎(疑う場合)
  • 重要な鑑別:
    • 偽性低Na(高脂血症/高蛋白血症など)
    • 高浸透圧性低Na(高血糖など:水が細胞外へ移動して見かけ上Naが低下)

② 分類(治療方針を決める3点セット)

  • ① 症状の有無(けいれん/意識障害など)
  • ② 急性か慢性か(48時間を目安に考える)
  • ③ 体液量評価(低容量性 / 正常容量性 / 高容量性)
    • 低容量性:脱水、利尿薬、下痢・嘔吐など
    • 正常容量性:SIADH、薬剤、甲状腺機能低下、副腎不全など
    • 高容量性:心不全、肝硬変、ネフローゼなど(実効循環血漿量低下)

③ 薬物治療(作用機序つき)

低Na治療のキモは「症状のある重症例は迅速に改善」しつつ、「過補正を避ける」こと。

A. 症状あり(重症:けいれん・意識障害など)

  • 高張食塩水(3% NaCl)
    • 作用機序:血清浸透圧を上げ、脳内から水を引き戻して脳浮腫を改善する
    • 注意:補正速度の管理が重要(過補正 → 浸透圧性脱髄症候群)
    • 施設プロトコルに沿って、ボーラス/持続、再検頻度を決める

B. 低容量性低Na(体液量低下)

  • 等張食塩水(0.9% NaCl)
    • 作用機序:循環血漿量を回復させ、ADH分泌が抑制され、自由水排泄が改善してNaが上がりやすくなる
    • 原因(下痢、嘔吐、利尿薬)を同時に是正

C. 正常容量性低Na(代表:SIADH)

  • 水制限(薬物ではないが最重要)
  • 薬剤(状況により):
    • バソプレシン受容体拮抗薬(V2拮抗薬:トルバプタン等)
      • 作用機序:集合管V2受容体を阻害し、アクアポリン発現を抑えて自由水排泄(アクアレシス)を促進 → Naを上げる
      • 注意:急上昇(過補正)に注意、肝機能や適応の確認
    • 原因薬剤の中止(SSRI、カルバマゼピン、シクロホスファミド等:状況により)
    • 副腎不全が疑われる場合:ステロイド補充
      • 作用機序(概念):コルチゾール不足によるADH亢進を改善し、水貯留を改善

D. 高容量性低Na(心不全・肝硬変など)

  • 利尿薬(ループ利尿薬)+水/塩分管理(病態により)
    • 作用機序:体液過剰を改善し、うっ血・浮腫を減らす(ただしNa補正は病態依存)
  • V2拮抗薬(状況により)

注意(実務)

  • 最大の合併症は、慢性低Naの急速補正による浸透圧性脱髄症候群(ODS)。
  • 逆に急性で症状が強い場合は、脳浮腫対策として高張食塩水が優先される。
  • 低Naは「Naを入れる」だけでなく、水の問題(ADH・自由水)として考えると整理しやすい。