中毒性表皮壊死症(TEN)
中毒性表皮壊死症(TEN)
TEN(Toxic Epidermal Necrolysis:中毒性表皮壊死症)は、薬剤などを契機に起こることが多い最重症クラスの皮膚粘膜障害(重症薬疹)。広範囲の表皮が壊死して剥離し、発熱・全身症状、口腔/眼/外陰部などの粘膜障害を伴う。疑った時点で原因薬の中止+緊急受診(原則入院・集中管理)が必要。
1) 位置づけ(SJS/TENとの関係)
- SJSとTENは連続する疾患概念(重症度のスペクトラム)
- 皮膚の剥離面積(体表面積:BSA)で分類することが多い
- SJS:10%未満
- SJS/TEN overlap:10–30%
- TEN:30%以上
- TENは死亡率も高く、早期診断と初期対応が予後を左右する
2) 主な原因(とくに薬剤)
- 最も重要なのは薬剤(開始後1〜3週前後〜数週で発症することが多い)
- 代表例(頻度が比較的高いとされるもの)
- 抗菌薬(例:サルファ剤など)
- 抗てんかん薬(例:カルバマゼピン、ラモトリギン など)
- 高尿酸血症治療薬(例:アロプリノール)
- NSAIDs(とくにオキシカム系など)
- 感染症などが誘因となることもあるが、実務上は「新規薬剤」確認が最優先
3) 症状・所見(典型像)
前駆症状
- 発熱、咽頭痛、倦怠感など「かぜ様症状」
皮膚
- 痛みを伴う紅斑、水疱、びらん
- 表皮壊死による広範な剥離(やけど様の外観)
- 触れると皮膚が剥けやすい(ニコルスキー現象がみられることがある)
粘膜(重要)
- 口腔:びらん、出血、摂食困難
- 眼:結膜炎、角膜障害(視力障害など後遺症リスク)
- 外陰部/尿路:びらん、排尿痛
- 呼吸器:気道病変を合併すると重篤化しやすい
4) 受診の目安(患者指導・トリアージ)
以下があれば、自己判断で中止/継続を決めず、原則「当日」救急受診レベルとして案内する。
- 発疹+高熱、強い倦怠感
- 皮膚の水疱、びらん、皮膚がむける
- 口/目/陰部など粘膜症状(強い口内炎、目の痛み・充血 等)
- 顔面の強い腫れ、嚥下困難、呼吸苦
5) 検査・重症度評価(概略)
- 皮膚科(+必要に応じて眼科/集中治療)で評価
- 皮膚生検、血液検査(炎症、肝腎機能、電解質など)
- SCORTENが重症度評価に用いられることがある(予後推定に使用)
6) 治療(概要)
- 原因薬中止(最優先)
- 入院管理:皮膚の処置(熱傷管理に準じることが多い)、疼痛管理、補液、栄養、感染対策
- 眼病変は早期介入が重要(眼科併診)
- 免疫調整治療(ステロイド、IVIG、シクロスポリン等)は症例・施設方針で判断
7) 看護で押さえる観察ポイント(例)
- バイタル、疼痛、意識、呼吸状態(気道病変の兆候)
- 皮膚:剥離面積(拡大の速度)、浸出液、感染兆候
- 粘膜:口腔摂取の可否、眼症状、排尿痛
- 水分出納、電解質異常、栄養状態
- せん妄・不眠・不安など心理面への支援、外観変化へのケア
8) 似た病態との鑑別(学習の整理)
- 単純な薬疹との違い:全身症状+粘膜障害+びらん/水疱+剥離
- DRESS(薬剤性過敏症症候群):臓器障害・好酸球増多など(経過が長いことが多い)
- 多形紅斑(EM):感染誘因が多く、重症度・粘膜障害の程度で鑑別
一言まとめ:TENは「発疹+発熱/倦怠感+粘膜障害」に加え、広範囲の表皮剥離が特徴。疑ったら原因薬中止と緊急受診(入院・集中管理)へ。