点耳剤
点耳剤
点耳剤とは、外耳道(耳の穴)に薬液を滴下して投与する製剤のこと。主に外耳炎・中耳炎(鼓膜穿孔時を含む)などの局所治療に用いられる。全身吸収は通常少ないが、鼓膜穿孔や長期・広範囲使用では全身性副作用のリスクが上がる。
投与経路の特徴
| 耳(外耳道)への局所投与 | 参考:経口投与 | 参考:点鼻(経鼻)投与 | |
|---|---|---|---|
| 投与部位 | 外耳道(鼓膜外側) ※鼓膜穿孔時は中耳腔へ到達し得る | 口腔→消化管 | 鼻腔(鼻粘膜) |
| 作用の種類 | 局所作用(感染・炎症・疼痛・耳垢など) | 全身作用 | 局所作用または全身作用 |
| 効果発現 | 局所:比較的速い(症状により差) | 30分〜数時間 | 局所:数分 / 全身:10〜30分 |
| 全身への影響 | 通常は少ない (鼓膜穿孔・長期使用では注意) | 大きい | 局所作用型は少ない / 全身作用型はあり |
| 初回通過効果 | 該当しない | 受ける | 受けない(鼻粘膜から吸収) |
| 投与の簡便さ | 自己投与可能(姿勢・手技が重要) | 最も簡便 | 自己投与可能 |
点耳の利点
- 患部へ直接投与でき、局所濃度を高くできる
- 全身曝露が少なく、全身性副作用を抑えやすい(一般に)
- 内服が難しい場合でも使用しやすい(小児など)
点耳の欠点
- 投与手技により効果が左右される(滴下位置・保持時間)
- 耳垢・腫脹・狭窄で薬液が届きにくいことがある
- 外耳道の刺激感・かゆみ、接触皮膚炎のリスク
- 鼓膜穿孔がある場合、薬剤によっては内耳障害(耳毒性)の懸念
点耳剤の種類
目的・成分による分類(代表例)
| 分類 | 代表例(一般名) | 特徴・注意点 |
|---|---|---|
| 抗菌薬(細菌性外耳炎・中耳炎) | オフロキサシン など | 局所の抗菌。使用期間・用法を守る。改善しても自己判断で中断しない |
| ステロイド配合(炎症・腫脹・疼痛) | 抗菌薬+ステロイド配合製剤 など | 炎症を抑える。真菌感染が疑われる場合は悪化に注意 |
| 抗真菌薬(外耳道真菌症) | (製剤としては外用剤が中心。点耳として処方される場合は指示に従う) | 耳内の湿潤環境が背景にあることが多い。清潔・乾燥も重要 |
| 鎮痛・局所麻酔(疼痛の緩和) | (製品・処方により異なる) | 原因治療ではないことを説明。症状が強い/長引く場合は受診を促す |
| 耳垢溶解(耳垢栓塞) | 耳垢水(過酸化水素等)など | 外耳道を刺激し得る。痛み・めまい・難聴があれば中止し受診 |
使用上の注意
鼓膜穿孔の有無を確認(耳毒性に注意)
耳毒性(ototoxicity)に注意
- 鼓膜穿孔や鼓膜チューブ留置があると、中耳腔へ薬液が到達し、薬剤によっては内耳障害(難聴・耳鳴り・めまい)のリスクがある
- 既往が不明な場合や、点耳後にめまい/耳鳴り/聴こえの悪化が出た場合は、使用を中止して受診を促す
正しい点耳方法
- 可能なら点耳前に外耳道の汚れを医師の指示で処置(自己の耳かきで悪化させない)
- 容器を手のひらで温める(冷たいままだとめまいを誘発することがある)
- 横向きになり、患側の耳を上にする
- 耳介を引く(成人:後上方、小児:後下方)→ 外耳道をまっすぐにする
- 指示された滴数を滴下し、3〜5分(製品指示に従う)そのまま保持する
- 必要に応じて耳珠(耳の前の突起)を数回押して薬液を行き渡らせる
- 反対側も使用する場合は、同様に行う
その他の注意
- 使用期間を守る(特に抗菌薬:不十分だと再燃の原因)
- 外耳道を濡らさない工夫(入浴・水泳の可否は指示に従う)
- かゆみ・発疹・悪化があれば中止し受診(接触皮膚炎や真菌の可能性)
- 家族間で共有しない(感染予防)
患者説明のコツ
- 「滴下後すぐ起き上がると薬が流れてしまう」ため、保持時間が大切
- 冷たい点耳でふらつくことがあるので、手で温めてから使う