Watanabe S, Front Pharmacol. 2025

Watanabe S, Nagura K, Okada N, Watanabe T, Sagara H. Disproportionality analysis of biliary adverse events associated with fibrates using the JADER and FAERS databases. Front Pharmacol. 2025 Nov 24;16:1700589. doi: 10.3389/fphar.2025.1700589. PMID: 41368577; PMCID: PMC12684286.

Title(英語・日本語)

English: Disproportionality analysis of biliary adverse events associated with fibrates using the JADER and FAERS databases
日本語: JADERおよびFAERSデータベースを用いたフィブラート系薬剤関連胆道系有害事象の不均衡解析

Journal Name & Publication Year

Frontiers in Pharmacology, 2025年
Volume 16、Article 1700589。公開日は2025年11月24日です。

First and Last Authors

First author: Satoko Watanabe
Last author: Hidenori Sagara

First Affiliations

Division of Medical Safety Science, Faculty of Pharmaceutical Sciences, Sanyo-Onoda City University, Sanyo-Onoda, Japan

Abstract

本研究は、トリグリセリド低下薬であるフィブラート系薬剤が胆汁酸代謝に影響し、胆石症や胆嚢炎などの胆道系有害薬物事象(biliary ADEs)と関連する可能性を検討した薬剤疫学研究です。日本のJADERと米国のFAERSという自発報告データベースを用い、ROR、PRR、BCPNN、Gamma–Poisson Shrinkerなど複数のシグナル検出指標で不均衡解析を実施しました。JADERでは58件、FAERSでは260件のユニークな個別症例安全性報告(ICSRs)が抽出され、JADERにおける全フィブラートのRORは3.74[2.88–4.85]でした。特にペマフィブラートでは層別解析の全層で有意なシグナルが認められ、Weibull解析ではβが**1.59[1.17–2.56]**で、使用継続に伴い報告リスクが増加する傾向が示されました。

Background

フィブラート系薬剤は、PPARαを活性化することでトリグリセリドを低下させる薬剤です。一方で、PPARαは胆汁酸合成に関与するCYP7A1CYP27A1を抑制し、胆汁酸産生を低下させる可能性があり、胆石症などの胆道系有害事象への懸念があります。ペマフィブラートは日本で2017年に承認された選択的PPARαモジュレーターで、52週の第III相試験では胆石症発生率が**5.3%**と報告されています。
しかし、フィブラート系薬剤と胆道系有害事象を結びつける実臨床データは限られており、特に高齢者や多剤併用患者における市販後データは不足しています。本研究は、JADERとFAERSという2つの大規模自発報告データベースを用いて、フィブラート系薬剤と胆嚢炎・胆石症関連イベントの安全性シグナルを探索することを目的としています。

Methods

本研究では、JADERFAERSからICSRsを取得しました。JADERデータは2025年6月6日にダウンロードされ、対象期間は2004年4月から2025年5月でした。FAERSは2014年第1四半期から2024年第4四半期までのデータを用い、統合データセットの最終更新日は2025年6月16日でした。
対象薬剤は、JADERではペマフィブラート、フェノフィブラート、ベザフィブラートの日本語一般名で検索されました。FAERSでは、“PEMAFIBRATE,” “FENOFIBRATE,” “FENOFIBRIC ACID,” “CHOLINE FENOFIBRATE,” “BEZAFIBRATE”が検索語として用いられました。胆道系有害事象は、MedDRA version 28.0の高位語「Cholecystitis and cholelithiasis」に含まれる14個のPreferred Termsで定義されました。
解析では、2 × 2分割表を作成し、ROR、PRR、IC、EBGMを算出しました。また、性別、年齢、BMIによる層別解析も実施され、年齢は**≥60歳20–50歳**、BMIは**≥25<25に分類されました。ペマフィブラートについては、治療開始日と有害事象発生日が完全に記録されたJADER症例17件**を対象にtime-to-onset解析とWeibull解析が行われました。

Results

JADERでは、胆道系有害事象に関連するユニークICSRsが58件同定されました。薬剤別では、ペマフィブラートが28 drug–event pairs、フェノフィブラートが20 pairs、ベザフィブラートが13 pairsでした。全フィブラートのJADER解析では、ROR 3.74(95% CI 2.88–4.85, P < 0.01)、PRR 3.71(95% CI 2.86–4.81, χ² > 4)、IC 1.80(95% CI 1.42–2.19)、EBGM 3.35(90% CI 2.92–3.83)で、すべての指標が有意な関連を示しました。ペマフィブラートとフェノフィブラートでは全指標で有意シグナルが認められましたが、ベザフィブラートでは有意シグナルは認められませんでした。
FAERSでは、ユニークICSRsが260件同定されました。薬剤別では、ペマフィブラートが3 pairs、フェノフィブラートが233 pairs、ベザフィブラートが25 pairsでした。全フィブラートのFAERS解析では、ROR 3.81(95% CI 3.37–4.31, P < 0.01)、PRR 3.79(95% CI 3.36–4.28, χ² > 4)、IC 1.91(95% CI 1.79–2.04)で、いずれも有意でした。
主疑い薬に限定した感度解析では、JADERで全フィブラート合計N = 36、ROR 10.44(95% CI 7.48–14.58)、PRR 10.19(95% CI 7.37–14.10)、IC 3.01(95% CI 2.53–3.50)でした。FAERSでは全フィブラート合計N = 67、ROR 6.28(95% CI 4.94–8.00)、PRR 6.22(95% CI 4.90–7.89)、IC 2.53(95% CI 2.18–2.88)でした。
層別解析では、ペマフィブラートで男性、女性、≥60歳、20–50歳、BMI ≥25、BMI <25の全層において、ROR、PRR、ICの有意シグナルが検出されました。フェノフィブラートでは、男性、女性、≥60歳でRORおよびICの有意シグナルがあり、PRRは男性と≥60歳のみで有意でした。ベザフィブラートでは、BMI ≥25層でのみRORシグナルが認められました。
time-to-onset解析では、JADERのペマフィブラートICSRsのうち完全な日付情報を持つ17件が対象となりました。その内訳は、胆石症9件、胆嚢炎4件、急性胆嚢炎4件でした。全体のWeibull解析では、α 469.66(95% CI 327.34–613.50)、β 1.59(95% CI 1.17–2.56)、中央値TTO 450.0日(95% CI 185.0–587.0)でした。βが1を超えていたため、使用期間が長くなるにつれて発現リスクが増えるwear-out failure型の傾向が示されました。

Discussion

本研究では、JADERおよびFAERSの双方で、フィブラート系薬剤と胆道系有害事象、特に胆石症・胆嚢炎に関する不均衡シグナルが検出されました。JADERではペマフィブラートが特に一貫したシグナルを示し、性別、年齢、BMIで層別化しても有意性が維持されました。これは、単なる特定患者層の偏りだけでは説明しにくい可能性を示唆します。
機序として、ペマフィブラートの高いPPARα選択性が胆汁酸恒常性を変化させる可能性が議論されています。PPARα作動はCYP7A1やCYP27A1を抑制し、さらにCYP8B1を介して胆汁酸組成を変化させ、コレステロール飽和度を高め、胆石リスクにつながる可能性があります。ただし、著者らは、これがフィブラート系薬剤全体のクラス効果なのか、ペマフィブラート特異的な現象なのか、あるいは患者背景との相互作用なのかは今後の研究が必要だと述べています。
臨床的には、ペマフィブラートの中央値TTOが約450日であったことから、著者らは治療開始後約6か月から肝胆道モニタリングを開始し、少なくとも年1回継続することが合理的と述べています。モニタリングには、胆道症状の確認、肝機能検査、必要に応じた腹部超音波検査が含まれます。ただし、この推奨は少数例のWeibull解析に基づくため、慎重に解釈する必要があります。

Novelty compared to previous studies

本研究の新規性は、フィブラート系薬剤と胆道系有害事象の関連を、JADERとFAERSという2つの大規模自発報告データベースを用いて評価した点です。特に、ペマフィブラートは日本、シンガポール、タイなど限られた国で使用されており、有害事象情報が不足しているため、市販後データを用いたシグナル検出には意義があります。
また、単純なRORだけでなく、PRR、BCPNNによるIC、Gamma–Poisson ShrinkerによるEBGMを用い、さらに層別解析とtime-to-onset解析を組み合わせた点も特徴です。ペマフィブラートでβ **1.59[1.17–2.56]**というwear-out型の時間依存性を示したことは、長期使用時の胆道モニタリングの必要性を示唆する新しい知見です。

Limitations

本研究の最大の限界は、自発報告データベースを用いた研究であるため、因果関係を証明できない点です。SRSでは過少報告が大きく、過少報告率の中央値は約**94%**とされています。また、薬剤承認直後に報告が増えるWeber effect、添付文書改訂や論文発表後に報告が増えるnotoriety bias、重篤または新規性の高い事象が選択的に報告されやすいバイアスが存在します。
さらに、患者背景データが欠損しやすく、肥満、女性、糖尿病など胆石リスク因子の調整が十分にできません。自発報告データでは母集団の曝露患者数が不明であるため、発生率も算出できません。time-to-onset解析も完全な日付情報を持つ17件に限定されており、治療中止や用量変更の影響も考慮されていません。したがって、著者らは本研究結果を「因果関係の証明」ではなく、「仮説生成的な不均衡報告シグナル」として解釈すべきだとしています。

Potential Applications

本研究の臨床応用として、フィブラート系薬剤、とくにペマフィブラート使用中の患者に対して、胆石症や胆嚢炎を念頭に置いた肝胆道モニタリングを行うことが挙げられます。具体的には、胆道症状の問診、肝機能検査、必要に応じた腹部超音波検査を、患者背景に応じて個別化して実施することが重要です。
また、フィブラート系薬剤には脂質異常症患者における心血管ベネフィットもあるため、胆道系リスクのみで一律に回避するのではなく、心血管ベネフィットと胆道リスクを患者ごとに比較し、治療継続・変更・モニタリング頻度を判断する必要があります。今後は、大規模コホート研究や機序研究により、リスクの定量化、交絡因子調整、ペマフィブラート特異的作用かクラス効果かの検証が期待されます。

Fig. 2
JADER
ROR(95%CI)P valuePRR025
ペマフィブラート16.99(11.61-24.86)<0.00111.32
フェノフィブラート3.53(2.27-5.49)<0.0012.26
ベザフィブラート1.51(0.88-2.61)0.170.88
overall3.74(2.88-4.85)<0.0012.86