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選択の余地がなくても一般名処方?

該当する医薬品が一つしかないのに、一般名処方できるのはなぜ?
A: 処方せんの「処方」欄に記載する「薬名」は、「一般名」でも「販売名(製品名)」のどちらでも可能です。
 
 
このような処方せんを受け取りました
【般】デカリニウム塩化物トローチ0.25mg   16錠
該当する医療用医薬品は、「SPトローチ0.25mg「明治」」だけなのに、なぜ、一般名処方ができるのでしょう?
 

処方せんの記載事項について

 
処方せんに、どのように書いたら良いのか、復習しておきましょう。
処方箋を発行する際、処方欄には、
「薬名」、「分量」、「用法」、「用量」
を記載するように、施行規則に定められています。
医師法施行規則第21条 医師は、患者に交付する処方せんに、患者の氏名、年齢、薬名分量用法用量、発行の年月日、使用期間及び病院若しくは診療所の名称及び所在地または医師の住所を記載し、記名押印又は署名しなければならない。
歯科医師法施行規則第20条 歯科医師は、患者に交付する処方せんに、患者の氏名、年齢、薬名分量用法用量、発行の年月日、使用期間及び病院若しくは診療所の名称及び所在地または歯科医師の住所を記載し、記名押印又は署名しなければならない。
 

「薬名」はどのように書くのか?

 
では、「薬名」はどのように記載したらよいのでしょうか?
 
処方せんの「処方」欄については、「診療報酬請求書等の記載要領等について」[1] の中で、
  • 一般的名称剤形含量 (【注意】会社名(屋号)を付加しない)
  • 薬価基準に記載されている名称 →販売名(製品名)等
で記載するよう定められています。
ただし、約束処方は認められていません
 
つまり、一般名販売名(製品名)のどちらの記載でも、処方可能です。
 
7. 「処方」欄について 投薬すべき医薬品名、分量、用法及び用量を記載し、余白がある場合には、斜線等により余白である旨を表示すること。 (1) 医薬品名は、一般的名称に剤型及び含量を付加した記載(以下「一般名処方という。)又は薬価基準に記載されている名称による記載とすること。なお、可能な限り一般名処方を考慮することとし、一般名処方の場合には、会社名(屋号)を付加しないこと。  なお、薬価基準に記載されている名称を用いる場合、当該医薬品が、薬価基準上、2以上の規格単位がある場合には、当該企画単位を合わせて記載すること。 また、保険医療機関と保険薬局との間で約束されたいわゆる約束処方による医薬品名の省略、記号等による記載は認められないものであること。
 
一般的名称の記載については、厚生労働省が、処方箋に記載する一般名処方の標準的な記載(一般名処方マスタ)を公開しており、これを参照して、記載されています。
 
厚労省一般名処方マスタの標準的な記載 【般】+「一般的名称」+「剤形」+「含量」
 
厚労省一般名処方マスタを参照すること、とされているため、「一般的名称」「剤形」「含量」が記載されてさえいれば、独自のマスタを使用することも認められています。
つまり、【般】が書いていなくても、問題ありません。厚労省一般名処方マスタに掲載されていない医薬品でも、一般名で処方することは可能です。
 
【般】と書いてあると、一般名処方だと判別しやすいので、ミス防止にもつながる、とはいえます)
 
また、間違いを予防するために、「一般的名称」に加えて、銘柄名を付記することも認められています。
ただし、この場合は、個別銘柄を指定していると誤解を生まないように、備考欄などに記載するように、という疑義解釈が出されています。
 
 
以上のことから、処方せんの「処方」欄に記載する「薬名」は、「一般名」でも「販売名(製品名)」のどちらでも可能です。
 
 
保険診療の加算について、見ておきましょう。
 

一般名処方加算

 
平成24年4月1日以降、医療機関では一般名処方による処方せんを発行したときに、一般名処方加算を算定できるようになりました。[2]
F400 処方箋料 7 薬剤の一般的名称を記載する処方箋を交付した場合は、当該処方箋の内容に応じ、次に掲げる点数を処方箋の交付1回につきそれぞれ所定点数に加算する。
  イ 一般名処方加算1   7点   ロ 一般名処方加算2   5点
 
「一般名処方加算」とは、医師が個別の銘柄にこだわらずに処方を行っていることを評価した点数です。
「一般名処方」された処方せんに基づいて調剤をするとき、該当するものから、選ぶことができます。(先発医薬品か後発医薬品かの選択はもちろん、後発医薬品のなかでどの屋号の製品か)
薬剤師は、個別の薬剤の製剤特性を鑑みて、入手可能かも考慮して、患者様に説明し、承諾のもと、銘柄を決定します。
 
 
厚労省一般名処方マスタを見ると、一般名処方加算対象のところに、「加算1」・「加算2」が記載されています。一般名処方加算の対象は、下記の通りです。
  • 「加算1」:診療報酬上の評価の対象となる後発医薬品のすべて
  • 「加算2」:後発医薬品のある先発医薬品
 

一般名処方加算2

処方せんに複数の医薬品が記載されている場合、
後発医薬品がある医薬品(加算2に該当する品目)が2品目以上処方されている場合、
加算2該当品目のすべてを一般名処方した場合に、算定可能
 
(※ただし、先発医薬品と同額、又は、先発医薬品よりも高額な後発医薬品は対象外)
 
補足)先発医薬品よりも高額な後発医薬品の例 【般】イソソルビド経口液70%40mL 「加算1」 分包品は、先発医薬品よりも高額であるため、「加算2」の対象ではありません
 

一般名処方加算1

処方せんに複数の医薬品が記載されている場合、
後発医薬品があるがある医薬品(加算1に該当する品目)について、
加算1該当品目の、どれかひとつでも一般名処方した場合に、算定可能
 
「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(通知)」、別添1、保医発0304第1号、令和4年3月4日
第5節 処方箋料
 
 

先発品がない後発医薬品

 
なお、先発品がない後発医薬品であっても、該当品目が一般名処方されていれば「一般名処方加算1」は算定可能です。
 
 
 

まとめ

最初の例を振り返ります。
【般】デカリニウム塩化物トローチ0.25mg 
該当銘柄が一つであっても、処方する薬名は、「一般名」や、個別の「販売名(製品名)」のどちらでも処方可能です。
 
加算については、厚労省一般名処方マスタを見ると「【般】デカリニウム塩化物トローチ0.25mg」は「加算1」に該当するので、一般名処方した場合、「一般名処方加算1」は算定可能です。
 
 
引用元:
[1] 厚生労働省保険局医療課長・厚生労働省保険局歯科医療管理官:「「診療報酬請求書等の記載要領等について」等の一部改正について」、保医発 0325第1号、令和4年3月25日.(PDF
[2]「診療報酬の算定方法の一部を改正する件」別表第一、厚生労働省告示第54号、令和4年.