エレヌマブ(遺伝子組換え)
#エレヌマブ(遺伝子組換え)(アイモビーグ皮下注)
最適使用ガイドラインの要点:
① 薬剤の位置づけ(What)
- 一般名:エレヌマブ(遺伝子組換え)
- 販売名:アイモビーグ皮下注70 mgペン
- 製造販売:アムジェン株式会社
- 作用機序:CGRP受容体(CGRP-R)に対する遺伝子組換えヒトIgG2モノクローナル抗体。CGRP-Rに強力かつ特異的に結合し、CGRPのシグナル伝達を阻害することで片頭痛発作の発症を抑制する。
- 分類:抗CGRP受容体抗体(他の抗CGRP抗体製剤〔ガルカネズマブ、フレマネズマブ〕とは異なり、リガンドではなく受容体側をブロックする)
② 適応・効能の範囲(Where)
- 効能又は効果:片頭痛発作の発症抑制
- 対象は前兆のある又は前兆のない片頭痛(反復性片頭痛+慢性片頭痛)
- 片麻痺性片頭痛および脳幹性前兆を伴う片頭痛(脳底動脈型片頭痛)は臨床試験から除外されており、対象外
③ 対象患者の要件(Who)【最重要】
以下の すべて を満たす患者であること:
- ICHD第3版を参考に十分な診療を実施し、前兆のある又は前兆のない片頭痛の発作が 月に複数回 発現している、又は 慢性片頭痛 であることが確認されている
- 投与開始前 3カ月以上 において、1カ月あたりの片頭痛日数が 平均4日以上
- 非薬物療法(睡眠・食生活指導、適正体重維持、ストレスマネジメント等)および急性期治療等を 既に実施 しており、それでも日常生活に支障をきたしている
- 既承認の片頭痛予防薬(プロプラノロール、バルプロ酸Na、ロメリジン等)のいずれかが、以下①〜③のうち1つ以上の理由で使用・継続できない:
- ① 効果が十分に得られない
- ② 忍容性が低い
- ③ 禁忌、又は副作用等の観点から安全性への強い懸念がある
投与の継続・中止について:
- 投与開始後 3カ月(3回投与後) を目安に有益性を評価 → 改善なければ 中止を考慮
- その後も定期的に継続の要否を検討し、日常生活に支障がなくなれば中止を考慮
- 日本人での100週間を超える使用経験はない
④ 投与・使用方法の要点(How)
- 用法・用量:エレヌマブ70 mgを 4週間に1回 皮下投与(成人)
- 自己投与:臨床試験で安全性が確認されており可能。実施の妥当性を慎重に検討し、患者への適切な教育・訓練・指導を行うこと
- 片頭痛発作の発症抑制薬であるため、治療中に頭痛発作が生じた場合は 急性期治療薬を併用 するよう患者に指導
⑤ 医療機関の要件(Where / By whom)
以下の①〜③の すべて を満たす施設で使用すること:
① 施設・医師要件:
- 片頭痛の病態・診断・治療を熟知し、本剤に十分な知識を有する医師が治療責任者として配置
- 医師免許取得後の初期研修修了後、頭痛を呈する疾患の診療に5年以上の臨床経験
- 定期的な効果判定・投与継続の是非を適切に判断できること
- 以下の学会のいずれかの 専門医認定 を有すること:日本神経学会/日本頭痛学会/日本内科学会(総合内科専門医)/日本脳神経外科学会
- 二次性頭痛鑑別のためのMRI等検査が必要な場合、当該施設又は近隣で対応できる体制
② 院内の医薬品情報管理体制:
- 有効性・安全性等の薬学的情報管理、有害事象発生時の報告業務体制が整備されていること
③ 副作用への対応:
- RMPの安全性検討事項に記載された副作用に対し、当該施設又は近隣の専門医と連携し、直ちに適切な処置ができる体制
⑥ 併用療法・支援の要件(Support)
- 本剤は予防薬であり、発作時には 急性期治療薬の併用 が必要
- 投与前に非薬物療法(睡眠・食生活指導、ストレスマネジメント等)および急性期治療が実施されていることが前提
- 添付文書に加え、製造販売業者提供の資材および RMP を熟読し、安全性検討事項を確認したうえで使用すること
⑦ 有効性・安全性の要点(Why careful)
有効性(国内試験):
- 国内第II相試験(EM患者473例):70 mg群で月間片頭痛日数がプラセボ比 −2.31日(p<0.001)有意に減少。非盲検100週時点でも効果持続(−2.77日)
- 国内第III相試験(EM+CM患者256例):70 mg群で月間片頭痛日数がプラセボ比 −1.62日(p<0.001)有意に減少
安全性:
- 大部分の有害事象はGrade 1〜2。死亡例なし
- 主な有害事象:上咽頭炎、便秘、背部痛、咽頭炎、齲歯、胃腸炎など
- 重要な副作用:
- アナフィラキシー、血管浮腫、蕁麻疹等の重篤な過敏症反応
- 重篤な合併症を伴う 便秘(腸閉塞、糞塊、イレウス等)→ 多くは初回投与後に発現
- 禁忌:本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
⑧ 実務でのチェックポイント(Summary)
- ICHD第3版に基づく片頭痛の確定診断がなされているか
- 投与前3カ月以上で月間片頭痛日数が平均4日以上か
- 非薬物療法+急性期治療を既に実施しているか
- 既承認予防薬(プロプラノロール/バルプロ酸Na/ロメリジン等)が使用できない理由が明確か
- 施設要件(専門医配置・MRI体制・DI管理・副作用対応)を満たしているか
- 投与開始後3カ月(3回投与後)で効果判定を行う計画があるか
- 過敏症の既往歴がないことを確認したか
- 便秘(特に初回投与後)のモニタリング計画があるか
- 自己投与の場合、患者教育・訓練が適切に行われたか
- RMPの安全性検討事項を確認したか