動悸を訴える患者(心房細動)

症例)
  • 患者:76歳 男性
  • 身長・体重:168 cm、70 kg
  • 既往歴
    • 高血圧
    • 2型糖尿病
    • 心不全(HFpEF)
  • 内服薬
    • アムロジピン
    • エンパグリフロジン
 
原因として最も考えられる薬剤はどれか
(観察事項)、どのようなものがありますか?
 

主訴

「朝から胸がドキドキして、息切れがします。」

現病歴

朝から突然、動悸を自覚した。
少し歩くだけでも息切れがあり、近くの病院を受診した。
胸痛や失神はない。

バイタル

  • 意識:清明
  • 血圧:132/78 mmHg
  • 心拍数:142回/分(不規則)
  • 呼吸数:22回/分
  • SpO₂:97%(室内気)
  • 体温:36.6℃

検査

心電図

  • RR間隔:不規則
  • P波:認めない
  • 細かなf波を認める
  • 心拍数:142回/分
➡ 心房細動(Atrial Fibrillation)

医師の診断

発作性心房細動

処方

レートコントロール

  • ビソプロロール
目的
✅ 心拍数を下げる

血栓予防

  • アピキサバン
目的
✅ 脳梗塞予防

なぜこの薬?

β遮断薬

心房細動では
心房の異常興奮は止められなくても
房室結節を通る刺激を減らせる。
↓
心拍数を下げる。

DOAC

心房細動では
左心耳に血栓ができやすい。
↓
脳梗塞を予防する。

観察ポイント

β遮断薬

  • 心拍数
  • 血圧
  • めまい
  • 徐脈
  • 房室ブロック

DOAC

  • 出血
  • 血尿
  • 下血
  • 歯肉出血
  • 腎機能

患者指導

  • 自己判断で中止しない
  • 出血時は受診する
  • 転倒に注意する
  • 動悸・息切れ・失神があれば受診する

この症例で学生に考えてほしいこと

① なぜ心拍数が140回/分になったのか?
  • 心房細動では心房が300~600回/分で興奮し、その一部が房室結節を通過して心室へ伝わるため。
② なぜビソプロロールを選んだのか?
  • β₁受容体を遮断して房室結節での伝導を抑え、心拍数をコントロールするため。
③ なぜ抗不整脈薬(Naチャネル遮断薬など)ではないのか?
  • すべての心房細動患者にリズムコントロールが必要なわけではない。症状や背景、催不整脈作用のリスクを考慮し、まずレートコントロールを選択することも多い。
④ なぜアピキサバンを併用するのか?
  • 心房細動では左心耳に血栓が形成されやすく、脳梗塞予防が重要だから。

授業のまとめにつながるメッセージ

この症例は、これまで学んだ内容を総合的に振り返るのに適しています。
  • 病態:心房細動による異常興奮
  • 作用部位:房室結節(β受容体)、凝固系(第Xa因子)
  • 作用機序:β遮断による心拍数低下、Xa阻害による血栓予防
  • 副作用:徐脈・低血圧・出血
  • 看護:バイタル・心電図・出血徴候・アドヒアランス