【第3回】薬理学/消化器

第3回(第2章 消化器)小テスト(国試レベル)

【019-020 消化性潰瘍・胃薬】(6題)

Q1 上部消化管出血を最も強く疑う所見はどれ? A. 粘血便 B. 鮮血便 C. タール便 D. 灰白色便
正解:C 解説:上部消化管(胃〜十二指腸)で出血すると、血液が胃酸・消化酵素で分解されヘモグロビンが変性し、黒色で粘稠な便(タール便)として出やすい。 一方、下部消化管は消化される時間が短く、鮮血便になりやすい。 病態の要点は「出血部位×腸管通過時間」で便性状が変わること。 臨床では黒色便=上部出血をまず疑い、循環動態(ショック)と貧血を評価し、必要なら内視鏡へ。 鑑別として鉄剤でも黒くなるが、“症状+バイタル”で判断する。
Q2 NSAIDs潰瘍の発症機序として最も適切なのはどれ? A. H2受容体刺激による胃酸分泌亢進 B. COX阻害→プロスタグランジン低下→粘膜防御低下 C. 胃粘液分泌の過剰 D. 迷走神経遮断による胃運動低下
正解:B 解説:胃・十二指腸の粘膜は、酸という“攻撃因子”に対し、粘液・重炭酸・血流・上皮修復などの“防御因子”で守られている。 NSAIDsはCOX阻害→PGE₂低下により、防御因子(粘液/重炭酸分泌・粘膜血流・修復)が落ち、酸に負けて潰瘍ができる。 つまり病態は「酸が増える」より「守りが弱くなる」。 この機序があるため、予防はPPI(酸を下げて攻撃因子を弱める)や、状況によりPG製剤などで行う。 ひっかけ:痛みが強くなくても出血で見つかることがある。
Q3 PPIの作用点として正しいのはどれ? A. H2受容体 B. M3受容体 C. H⁺/K⁺-ATPase D. ガストリン受容体
正解:C 解説:胃酸分泌は「ヒスタミン(H2)・アセチルコリン(M3)・ガストリン」など複数の刺激が、最終的に壁細胞のH⁺/K⁺-ATPase(プロトンポンプ)を動かして起こる。 PPIはこの“最終共通経路”を止めるため、上流刺激が強くても酸分泌を強力に抑えられる。 病態として、酸は潰瘍形成・出血の重要な攻撃因子なので、酸を落とすほど治癒に有利。 H2ブロッカーはヒスタミン経路のみを抑えるため、刺激が多い状況では抑制が不十分になりうる。 理解のコツ:「上流(受容体)より下流(ポンプ)が強い」。
Q4 胃粘膜防護薬の説明として最も適切なのはどれ? A. 胃酸分泌を最も強力に抑える B. 潰瘍面の保護や粘膜防御因子を高める方向に働く C. ピロリ菌を単剤で除菌できる D. 胆汁分泌を促進する
正解:B 解説:潰瘍は「攻撃因子(酸・ペプシン・NSAIDsなど)」と「防御因子(粘液/重炭酸・血流・上皮修復)」のバランス破綻で起こる。 胃粘膜防護薬は、防御因子を補ったり潰瘍面を物理的に保護して、“治る環境”を整える薬。 一方、PPIは攻撃因子(酸)を下げる薬で、役割が違う。 NSAIDs潰瘍では防御因子低下が主なので、防護の考え方と結びつけると理解しやすい(ただし臨床ではPPI併用が基本)。 整理すると「酸を下げる=攻撃↓」「防護薬=守り↑」。
Q5 ピロリ菌除菌療法の基本的な組み合わせとして正しいのはどれ? A. PPI+抗菌薬2剤 B. H2ブロッカー+粘膜防護薬 C. 制吐薬+整腸薬 D. 下剤+抗菌薬1剤
正解:A 解説:H. pyloriは胃粘膜の慢性炎症を起こし、潰瘍の“再発要因”になる(原因そのもの)。 除菌は「菌を殺す(抗菌薬)」が本体だが、胃内は強酸性で抗菌薬が働きにくくなるため、PPI(またはP-CAB)で酸を抑えて抗菌薬の効果を上げる。 抗菌薬を2剤使うのは、耐性菌対策と除菌成功率を上げるため。 病態→薬理の流れ:慢性炎症(原因)を断つ→潰瘍の再発を減らす、という位置づけ。 “潰瘍を治す薬(PPI等)”と“原因を消す治療(除菌)”を分けて考えると理解しやすい。
Q6 消化性潰瘍の患者指導として最も適切なのはどれ? A. 痛みが消えたら自己判断で胃薬は中止してよい B. NSAIDsを使用する場合は、潰瘍歴などを含めて医療者に必ず相談する C. 黒色便は鉄剤のせいなので放置してよい D. 喫煙は潰瘍に影響しない
正解:B 解説:潰瘍は“治っている途中”でも粘膜がまだ弱く、攻撃因子が加わると再出血・再発しやすい。 NSAIDsはPG低下で防御因子を落とすため、潰瘍の病態に直結して悪化させる(=薬理が病態を悪化させる代表例)。 そのため、必要なら薬剤変更やPPI併用で「攻撃因子(酸)↓」を同時に行い、粘膜が負けない環境を作る。 黒色便は“上部出血のサイン”になり得るので放置しない、喫煙は血流・修復に不利で治癒を遅らせる。 指導の核心は「再発させる要因(NSAIDs・喫煙・自己中断)を減らす」。

【022 ウイルス性肝炎】(1題)

Q7 肝障害で「出血傾向」の評価として最も重要なのはどれ? A. CRP B. PT/INR C. Na D. HbA1c
正解:B 解説:出血傾向は「血が止まる仕組み(凝固)」の破綻で起こり、肝臓はその凝固因子を“作る臓器”。 肝障害が進むと、凝固因子産生が落ちてPTが延長し、出血しやすくなる(=肝の合成能低下を反映)。 このためPT/INRは病態評価(重症度)にも直結する検査。 AST/ALTは“壊れている”の指標で、出血傾向の強さ(止血能)は直接はわからない。 理解の型:「肝=アルブミンと凝固因子を作る→Alb/PTを見る」。

【025-026 IBD+便秘と下痢】(2題)

Q8 IBSとしては非典型で、器質的疾患を強く疑う所見はどれ? A. 排便で軽快する腹痛 B. ストレスで増悪する腹痛 C. 体重減少+血便 D. 便秘と下痢を繰り返す
正解:C 解説:IBSは“機能”の異常(腸管運動・内臓知覚・脳腸相関)で、粘膜が壊れて出血する病態ではない。 血便や体重減少は、炎症で粘膜が傷む(IBD・感染)/腫瘍で出血する(大腸癌)など、器質的疾患の病態を示唆する。 だからまず「レッドフラッグ→器質疾患の除外」が優先になる。 病態で押さえるポイント:IBSは“生活の質”は落ちても、原則として炎症所見や出血所見は伴いにくい。 治療(薬理)は原因が違うため、IBDのような抗炎症薬とは別のアプローチになる。
Q9 ロペラミド(止痢薬)の使用を避けるべき状況はどれ? A. 発熱なしの水様便 B. 食事で一時的に増悪した下痢 C. 発熱+血便があり感染性腸炎が疑われる D. ストレスで悪化する下痢
正解:C 解説:感染性腸炎の下痢は、病原体や毒素を体外に排出する“防御反応”の側面がある。 ロペラミドは腸管運動を抑えて内容物の通過を遅らせるため、侵襲性の感染(発熱・血便=粘膜炎症/傷害)では、病原体・毒素の滞留→重症化のリスクが上がる。 したがって病態的に「炎症性/侵襲性の下痢」では止めず、補液・原因治療(必要なら抗菌薬)を優先する。 水様便で全身症状が軽い場合は、脱水を防ぎつつ短期的対症療法として検討される。 理解のコツ:「炎症サイン(熱・血)=止痢薬NG」。

【024 膵臓疾患】(1題)

Q10 急性膵炎を疑う症状として最も典型的なのはどれ? A. 心窩部痛が背部へ放散する B. 排尿時痛 C. 右下腹部痛(反跳痛が強い) D. 皮疹と関節痛が主
正解:A 解説:膵炎は、膵酵素が膵内で活性化して自己消化が起こる病態で、強い炎症が心窩部に出る。膵は後腹膜臓器なので、痛みが背部へ放散しやすい。 胆石なら膵管閉塞、アルコールなら膵液性状変化などが引き金になり、炎症が急激に進む。 治療(薬理)は原因除去が前提で、まずは絶食・補液・疼痛管理など“炎症を悪化させない支持療法”が中心。 鑑別として、腹膜刺激(右下腹部)や尿路症状は別の病態を示す。 理解のコツ:「後腹膜=背中に響く」。