14

90分の対面授業

時間内容方法
0~5分事前学習確認小問・挙手
5~20分免疫抑制薬・生物学的製剤治療標的と感染リスク
20~32分皮膚外用薬・重症薬疹剤形、塗布法、危険徴候
32~42分眼科・耳鼻科用薬点眼手技と全身作用
42~55分性ホルモン・不妊治療薬治療目的と重要リスク
55~70分薬理整理演習作用→リスク→観察
70~85分ミニ症例3例発熱・薬疹・点眼
85~90分振り返り小テスト10点

1.免疫抑制薬・生物学的製剤

薬剤名を網羅するのではなく、作用点で整理する。
薬効群主な作用重要な観察
カルシニューリン阻害薬T細胞活性化・サイトカイン産生を抑制感染、腎機能、血圧、血中濃度
代謝拮抗薬免疫細胞の増殖を抑制骨髄抑制、肝・腎機能、感染
生物学的製剤TNF、IL、B細胞など特定標的を阻害感染、結核、B型肝炎再活性化、投与時反応
JAK阻害薬細胞内サイトカインシグナルを阻害重症感染、帯状疱疹、血球、血栓症など
考え方は共通している。
免疫反応を抑える
炎症・組織障害が軽減する
一方で感染防御も低下する
発熱、咳、呼吸困難、皮膚病変などを早期に確認する
生物学的製剤では感染症に加え、潜在性結核やB型肝炎の確認が重要になる。薬剤ごとに注意点が異なるため、「生物学的製剤は全部同じ」とは扱わない。日本リウマチ学会

看護で見ること

  • 体温だけでなく、咳・痰・倦怠感・息苦しさ
  • 皮膚の発赤、水疱、疼痛
  • 口腔内や排尿時の症状
  • 白血球数・好中球数
  • 腎機能・肝機能
  • 最終投与日と次回投与予定日
  • 併用するステロイド・免疫抑制薬
  • 結核、肝炎、帯状疱疹などの既往
  • ワクチン歴

2.皮膚外用薬

剤形の使い分け

剤形特徴向いている状態
軟膏刺激が少なく、保護作用が高い乾燥、亀裂、慢性病変
クリーム伸びがよく使用感が軽い比較的広い範囲
ローション毛のある部位にも塗りやすい頭皮、広範囲
ステロイド外用薬は「強い薬だから危険」と一括りにせず、以下を組み合わせて考える。
  • 強さ
  • 塗布部位
  • 塗布量
  • 使用期間
  • 年齢
  • 皮膚の状態
  • 密封の有無
顔面・眼周囲・陰部などは吸収が大きくなりやすい。広範囲への長期使用や密封では全身作用にも注意する。日本皮膚科学会はアトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024年版などを公開している。日本皮膚科学会

観察項目

  • 発赤・腫脹・滲出液
  • 病変範囲
  • 皮膚萎縮、毛細血管拡張
  • 感染徴候
  • 塗布量・回数・部位
  • 患者が実際にどのように塗っているか

3.重症薬疹・薬剤性障害

ここは領域70で、この回の中では唯一A臨床型になる。

危険徴候

  • 発熱を伴う広範な皮疹
  • 皮膚の痛み
  • 水疱、びらん、表皮剝離
  • 口唇・口腔・眼・外陰部などの粘膜病変
  • 眼痛、充血、羞明
  • 顔面浮腫
  • 呼吸困難
  • 肝機能・腎機能などの臓器障害
特に、
皮疹+発熱+粘膜病変
は、単なるアレルギー性発疹として経過を見てはいけない。
SJS/TEN、薬剤性過敏症症候群、急性汎発性発疹性膿疱症などを疑い、追加投与を漫然と継続せず、直ちに医師へ報告して緊急評価につなぐ。開始直後の薬だけでなく、数週間前に開始した薬、頓用薬、一般用医薬品・サプリメントまで確認する。厚生労働省・重篤副作用疾患別対応マニュアル

4.眼科・耳鼻科用薬

点眼の基本手技

  1. 手を洗う
  1. 下眼瞼を軽く引く
  1. 容器先端を眼・睫毛・皮膚に触れさせず1滴点眼する
  1. 強くまばたきせず、静かに閉眼する
  1. 目頭付近を軽く圧迫する
  1. 複数の点眼薬は原則として5分程度あける
  1. 眼軟膏を併用する場合は、通常は眼軟膏を最後にする
点眼薬は局所薬だが、鼻涙管を経て全身に移行する。β遮断薬点眼では徐脈や気管支収縮などに注意する。点眼後の閉眼・涙点付近の圧迫は、全身移行を減らす意味もある。点眼方法の解説
耳鼻科用薬は、点鼻血管収縮薬の連用による反跳性鼻閉を短く扱う。

5.性ホルモン・避妊薬

薬効群主な目的重要なリスク・観察
エストロゲン・プロゲスチン配合薬避妊、月経困難症など血栓症、血圧、頭痛、喫煙歴
プロゲスチン製剤月経異常、子宮内膜症など不正出血、服薬継続
GnRHアゴニスト・アンタゴニスト性腺刺激ホルモン分泌を調節ほてり、骨量低下など
アンドロゲン関連薬男性性腺機能などへの治療肝機能、前立腺、血球など
OC・LEPでは、治療目的とともに血栓症リスクを理解させる。片側下肢の腫脹・疼痛、突然の胸痛・呼吸困難、激しい頭痛、視覚異常などは緊急評価につなぐ。Minds「OC・LEPガイドライン」

6.不妊治療薬

大きな流れで整理する。
FSH・hMG製剤
→ 卵胞発育を促進する
hCG製剤
→ LH様作用により排卵を誘発する
GnRHアゴニスト・アンタゴニスト
→ LHサージや排卵時期を調節する
プロゲステロン製剤
→ 黄体期・子宮内膜を支える
重要な有害事象は、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)である。

OHSSを疑う症状

  • 腹部膨満
  • 下腹部痛
  • 急激な体重増加
  • 悪心・嘔吐
  • 尿量減少
  • 呼吸困難
  • 浮腫
PMDAのマニュアルでも、腹部膨満、腹痛、急な体重増加、尿量減少などが初期症状として挙げられている。PMDA・OHSS対応マニュアル

55~70分|薬理整理演習

次の表をグループで完成させる。
薬・治療治療効果作用から予測される危険観察
生物学的製剤炎症性サイトカイン作用を抑える感染防御低下発熱、呼吸器症状、皮膚症状
ステロイド外用薬局所炎症を抑える皮膚萎縮、感染塗布部位、量、皮膚状態
β遮断薬点眼眼圧を下げる徐脈、気管支収縮脈拍、呼吸器症状
OC・LEP排卵抑制・内膜調節血栓症下肢痛、胸痛、呼吸困難
FSH・hCG製剤卵胞発育・排卵誘発OHSS体重、腹囲、尿量、呼吸

70~85分|ミニ症例

症例1|免疫抑制中の発熱

58歳女性。関節リウマチでメトトレキサートと生物学的製剤を使用中。体温37.8℃。「微熱なので次の注射も予定どおりでよいですよね」と話している。咳と倦怠感がある。

問い

  1. 何を優先して確認するか。
  1. なぜ37.8℃でも軽視できないか。
  1. 次回投与についてどう対応するか。

方向性

  • 呼吸状態、咳・痰、SpO₂、感染部位
  • 白血球・好中球数
  • 最終投与日、併用薬
  • 免疫抑制下では典型的な高熱にならない可能性
  • 看護師の判断だけで予定投与せず、速やかに報告して感染評価と投与可否の指示を確認する

症例2|粘膜病変を伴う薬疹

45歳男性。3週間前から新しい薬を開始。39℃の発熱、全身の痛みを伴う紅斑、口腔内びらん、眼痛と充血がある。

問い

  1. 危険徴候は何か。
  1. 何の可能性を考えるか。
  1. 何を直ちに確認・報告するか。

方向性

  • 発熱、皮膚痛、広範な皮疹、口腔・眼粘膜病変
  • SJS/TENなどの重症薬疹
  • 全身状態、気道・呼吸、皮膚剝離範囲、粘膜病変
  • 新規薬、頓用薬、市販薬を含む服薬歴
  • 追加投与を漫然と行わず、直ちに医師へ報告
  • 眼症状があるため早期の眼科評価も必要

症例3|点眼薬の全身作用

78歳男性。緑内障でβ遮断薬点眼を使用。1回に3滴点眼し、直後に何度もまばたきをしている。脈拍48回/分で、最近息苦しさがある。

問い

  1. 点眼方法の問題は何か。
  1. 徐脈・息苦しさと点眼薬にはどのような関係があるか。
  1. どのように指導するか。

方向性

  • 原則1滴でよい
  • 鼻涙管から全身吸収され、β遮断作用が現れ得る
  • 点眼後は静かに閉眼し、目頭を軽く圧迫する
  • 脈拍・呼吸状態を確認し、医師へ報告する
  • 自己判断で中止・増減せず、処方の再評価につなぐ