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3.胃酸関連疾患と治療薬
胃酸分泌抑制薬
| 薬効群 | 主な作用 | 学生に残す注意点 |
|---|---|---|
| PPI | プロトンポンプを阻害 | 効果発現、服薬継続、長期使用の必要性を見直す |
| P-CAB | K⁺競合的に酸分泌を抑制 | 強力な酸分泌抑制 |
| H₂受容体拮抗薬 | ヒスタミンによる酸分泌を抑制 | 腎機能低下時の蓄積に注意 |
| 制酸薬 | 胃酸を中和 | 他薬の吸収への影響、腎機能、電解質 |
| 粘膜保護薬 | 粘膜防御を補助 | 酸分泌抑制薬と目的が異なる |
原因治療との違い
症状・粘膜障害を抑える
胃酸分泌抑制薬
↓
胃内pH上昇
↓
疼痛・逆流症状の改善、潰瘍治癒の促進
原因を除去する
H. pylori感染
↓
酸分泌抑制薬+複数の抗菌薬
↓
除菌
↓
除菌判定
「胃潰瘍だからPPIだけ」とは限らない。H. pylori、NSAIDs、低用量アスピリンなどの原因を確認する必要がある。
5.下剤・止痢薬
下剤の整理
| 薬効群 | 作用 | 主な注意点 |
|---|---|---|
| 浸透圧性下剤 | 腸管内に水分を保持する | 脱水、電解質、腎機能 |
| 酸化マグネシウム | 腸管内に水分を引き込む | 腎機能低下、高Mg血症 |
| PEG製剤 | 腸管内の浸透圧を高める | 腹部膨満など |
| 上皮機能変容薬 | 腸管内への水分分泌を促す | 悪心、下痢など |
| 胆汁酸トランスポーター阻害薬 | 胆汁酸を大腸に送る | 腹痛、下痢 |
| 刺激性下剤 | 大腸運動・分泌を促進する | 腹痛、過量・漫然使用の見直し |
| 膨張性下剤 | 便量を増やす | 十分な水分、狭窄・閉塞への注意 |
便秘薬は「何日出ていないか」だけで選ばない。
- Bristol便形状
- いきみ
- 残便感
- 排便回数
- 腹痛・嘔吐
- 腹部膨満
- 食事・水分・活動量
- 腎機能
- 便秘を起こす薬
- 腸閉塞や器質的疾患の可能性
を確認する。
止痢薬
下痢を止めることが、常に適切とは限らない。
- 血便
- 高熱
- 強い腹痛
- 感染性腸炎の疑い
- 抗菌薬使用後
- 脱水
- 炎症性腸疾患の増悪
がある場合は、原因評価を優先する。
6.IBD・肝胆膵領域
炎症性腸疾患
| 治療段階 | 目的 |
|---|---|
| 寛解導入 | 活動性炎症を抑える |
| 寛解維持 | 再燃を防ぐ |
主な治療薬は、5-ASA製剤、副腎皮質ステロイド、免疫調節薬、生物学的製剤、低分子化合物などである。
重要なのは、副腎皮質ステロイドは基本的に寛解維持薬ではないという点である。
肝疾患
- ウイルス性肝炎:原因ウイルスに対する治療
- 肝性脳症:腸管でのアンモニア産生・吸収を抑える
- 腹水:Na・水分管理、利尿薬など
- 胆汁うっ滞:原因に応じた治療
- 肝機能低下:薬物代謝低下や出血傾向に注意
胆道・膵疾患
- 胆管炎・胆囊炎:抗菌薬だけでなく、必要に応じてドレナージや手術
- 急性膵炎:輸液、疼痛管理、栄養管理などが中心
- 慢性膵炎・膵外分泌不全:消化酵素補充
- 膵内分泌機能低下:血糖管理
「胆石を薬で溶かす」「膵炎を薬だけで治す」と単純化しない。
8.症例1|NSAIDs使用患者の潰瘍予防
72歳女性。変形性膝関節症でNSAIDsを連日服用している。5年前に胃潰瘍による入院歴がある。現在、胃痛はない。便は「最近少し黒っぽい気がする」と話す。
Q1|胃痛がなければ、潰瘍は否定できるか
否定できない。高齢者やNSAIDs使用者では、疼痛が目立たないまま潰瘍や出血が進行する場合がある。
Q2|確認する情報は何か
- NSAIDsの種類、用量、使用期間
- 低用量アスピリン、抗凝固薬、ステロイドの併用
- 潰瘍・消化管出血歴
- H. pylori感染・除菌歴
- 黒色便、吐血、ふらつき
- 血圧、脈拍
- Hb、BUNなど
- 飲酒、喫煙
- 酸分泌抑制薬の使用状況
Q3|治療上の検討事項は何か
- NSAIDsを継続する必要性
- 他の鎮痛方法への変更可能性
- 消化管リスクに応じた潰瘍予防
- H. pylori感染の評価
- 消化管出血の有無
「胃薬を何か併用すればよい」ではなく、潰瘍リスクと予防効果を考える。
9.症例2|便秘患者の下剤選択
78歳女性。5日間排便がない。少量の硬い便が出るが、強くいきまないと出ない。Bristol便形状スケール1。eGFR 28 mL/min/1.73㎡。酸化マグネシウムを毎日服用し、便が出ない日は刺激性下剤を追加している。「酸化マグネシウムを増やしてほしい」と話す。
Q1|追加で確認することは何か
- 腹痛、嘔吐、腹部膨満
- 排ガス
- 血便
- 食事・水分量
- 活動量
- 排便姿勢
- 残便感
- 併用薬
- 血清Mg、腎機能、電解質
- 意識、血圧、脈拍
Q2|酸化マグネシウムを増量してよいか
腎機能が低下しており、安易な増量は適切ではない。高Mg血症の危険を考え、血清Mg値、現在の投与量、症状を確認して報告する。
Q3|下剤選択を何から考えるか
- 便が硬いのか
- 腸管運動が低下しているのか
- 排出動作に問題があるのか
- 腸閉塞などの禁忌がないか
- 腎機能や電解質異常がないか