15

90分の対面授業

既存計画どおり、座学30分・整理演習10分・症例45分・確認5分とする。
時間内容方法
0~5分事前学習確認3問程度
5~12分妊娠・分娩・授乳と薬母児を同時に見る
12~19分小児の薬物療法体重換算と投与誤差
19~26分高齢者・ポリファーマシー有害事象から処方を見直す
26~30分酵素補充・遺伝子治療・再生医療概念整理
30~40分ライフステージ整理演習共通ワークシート
40~52分症例1:妊娠・分娩母児アセスメント
52~65分症例2:小児用量・投与方法
65~85分症例3:高齢者総合症例
85~90分振り返り小テスト10点

1.妊娠・分娩に用いる薬

ここでは薬剤の全種類を覚えるのではなく、母体への作用が胎児にも影響し得ることを軸にする。
薬効群目的主な観察
子宮収縮薬分娩誘発・促進、出血管理子宮収縮、胎児心拍、出血、母体バイタル
子宮収縮抑制薬早産時の子宮収縮抑制脈拍、血圧、呼吸、血糖、肺水腫徴候
硫酸マグネシウム子癇予防など呼吸数、意識、腱反射、尿量、血中Mg
妊娠高血圧症候群の治療薬母体血圧の管理血圧、頭痛、視覚症状、胎児状態
インスリンなど妊娠中の血糖管理母体血糖、低血糖、胎児発育

オキシトシンで考える

子宮筋収縮を促進
陣痛が強くなる
分娩が進行する
しかし作用が過剰になると、
子宮収縮が過剰・頻回になる
胎盤への血流が十分に回復しない
胎児低酸素
胎児心拍異常
となる。
したがって、単に「陣痛が強くなった」と見るのではなく、
  • 収縮回数・持続時間
  • 子宮の弛緩
  • 胎児心拍
  • 母体の疼痛・バイタル
  • 投与速度
を同時に確認する。

2.妊娠・授乳と薬物

妊娠中の基本原則

薬物療法は次の四つを組み合わせて判断する。
  1. 妊娠週数
  1. 薬剤の種類・用量・使用期間
  1. 母体疾患を治療しない危険
  1. 代替治療の有無
「妊娠中だから薬はすべて中止する」は間違っている。
てんかん、喘息、糖尿病、高血圧、精神疾患などでは、治療中断による母体の悪化が胎児にも影響する。薬剤変更が必要な場合でも、自己中断ではなく、妊娠前または判明後速やかに専門的評価へつなぐ。
妊娠・授乳中の薬物療法については、国立成育医療研究センターの「妊娠と薬情報センター」が全国の拠点病院と相談事業を行っている。妊娠と薬情報センター

授乳中の確認事項

  • 乳児の月齢・在胎週数
  • 乳児の肝・腎機能
  • 薬剤の半減期
  • 母体投与量
  • 乳汁移行性
  • 乳児の哺乳量
  • 眠気、哺乳力低下、体重増加不良など
「授乳中だから禁止」「授乳直後に飲めば必ず安全」という一律の説明は避ける。

3.小児の薬物療法

小児では、次の四つが安全性を左右する。
  • 現在の体重
  • 年齢・発達段階
  • 臓器機能
  • 製剤と投与方法

用量計算の基本

例:
体重12 kg
指示:アセトアミノフェン10 mg/kg/回
製剤濃度:20 mg/mL
必要量は、
12 kg×10 mg/kg=120 mg12\ \mathrm{kg}\times10\ \mathrm{mg/kg}=120\ \mathrm{mg}
120 mg÷20 mg/mL=6 mL120\ \mathrm{mg}\div20\ \mathrm{mg/mL}=6\ \mathrm{mL}
となる。

必ず確認する項目

  1. mg/kg/回か、mg/kg/日か
  1. 1日最大量
  1. 成人最大量を超えないか
  1. 製剤濃度はmg/mLか、mg/gか
  1. 最新の体重か
  1. 家族が正しく計量できるか
  1. 同成分の市販薬を使用していないか
小児では承認用量が明確でない薬も存在するため、添付文書、診療ガイドライン、院内基準を確認する必要がある。PMDA「小児用医薬品の情報収集」

4.高齢者の薬物療法・ポリファーマシー

高齢者で有害事象が増える理由

変化起こり得る問題
腎機能低下腎排泄薬の蓄積
筋肉量低下血清Crだけでは腎機能低下を見逃す
体水分量低下水溶性薬物の濃度上昇
体脂肪増加脂溶性薬物の作用遷延
恒常性維持機能低下起立性低血圧、低血糖、電解質異常
認知・視覚・手指機能低下飲み間違い、吸入・点眼手技の失敗

ポリファーマシーの考え方

ポリファーマシーは「6剤以上なら自動的に問題」という意味ではない。
問題になるのは、
  • 適応が不明な薬
  • 効果が確認できない薬
  • 重複処方
  • 相互作用
  • 処方カスケード
  • 服薬困難
  • 転倒・せん妄・低血糖などの有害事象
  • 患者の治療目標と合わない薬
が存在する場合である。
薬剤数だけを理由に一律に中止するのではなく、適応、効果、有害事象、中止リスク、患者の希望を多職種で評価する。厚生労働省も、高齢者の医薬品適正使用とポリファーマシー対策の指針・手順書を公開している。高齢者医薬品適正使用検討会

高齢者で薬から考えたい症状

患者の変化関連を考える薬
転倒・ふらつき降圧薬、利尿薬、睡眠薬、向精神薬
せん妄抗コリン薬、睡眠薬、オピオイド、ステロイド
食欲低下消化器症状を起こす薬、過鎮静
低血糖インスリン、SU薬など
出血抗凝固薬、抗血小板薬、NSAIDs
尿閉・便秘抗コリン作用のある薬
腎機能悪化NSAIDs、脱水時の利尿薬など

5.酵素補充・遺伝子治療・再生医療

ここはC基礎型なので、詳細な疾患別治療までは扱わない。
治療基本概念看護上の視点
酵素補充療法欠損・不足する酵素を外から補う投与時反応、アナフィラキシー、継続投与
遺伝子治療遺伝子を導入・修復し、機能を変える遅発性有害事象、長期追跡、遺伝情報
再生医療加工した細胞・組織等で機能を修復する感染、免疫反応、腫瘍化、長期観察
「一度投与すれば必ず完治する」「副作用がない新しい治療」という説明は間違っている。治療ごとに効果の持続性や不確実性が異なり、長期的な安全性評価が必要になる。
PMDAは、再生医療等製品を、加工した細胞・組織を用いる製品や、遺伝子治療を目的として細胞に導入する製品として定義している。PMDA「再生医療等製品」

30~40分|統合整理演習

各患者について、同じ6問を使う。
問い確認内容
① なぜ使っているか適応・治療目標
② 効いているか症状、検査値、生活機能
③ 薬による変化ではないか有害事象、相互作用
④ 患者背景はどうか妊娠、年齢、体重、腎肝機能
⑤ 正しく投与できるか剤形、手技、計算、服薬管理
⑥ 続けられるか理解、家族支援、費用、生活状況

40~52分|症例1:分娩時のオキシトシン

30歳、妊娠40週。分娩誘発のためオキシトシンを持続投与中。子宮収縮が10分間に6回となり、胎児心拍に遷延する低下が認められた。

問い

  1. 何が起きている可能性があるか。
  1. 薬理作用からどのように説明できるか。
  1. 何を優先して観察・対応するか。

方向性

オキシトシン
子宮収縮増強
過剰な子宮収縮
収縮間の胎盤血流回復が不十分
胎児低酸素・胎児心拍異常

優先事項

  • 子宮収縮回数・持続・弛緩
  • 胎児心拍
  • オキシトシン投与速度
  • 母体バイタル
  • 出血・疼痛・子宮の状態
投与を継続したまま経過を見ず、施設の緊急対応手順に従って、投与停止を含む対応と速やかな報告につなげる。

52~65分|症例2:小児の投与量

2歳、体重12 kg。
アセトアミノフェン10 mg/kg/回の指示。
製剤濃度は20 mg/mL。
家族は計量カップではなく、大さじで約15 mLを飲ませていた。

問い

  1. 正しい1回量は何mLか。
  1. 実際には何mg投与されていたか。
  1. 何を追加確認するか。
  1. 再発防止には何が必要か。

解答

正しい量:
12×10=120 mg12\times10=120\ \mathrm{mg}
120÷20=6 mL120\div20=6\ \mathrm{mL}
実際の投与量:
15×20=300 mg15\times20=300\ \mathrm{mg}

追加確認

  • 投与回数・投与間隔
  • 何日間続けたか
  • 他のアセトアミノフェン含有薬
  • 嘔吐、食欲、意識状態
  • 肝機能障害のリスク
  • 家族が使用している計量器具

再発防止

  • mL単位で説明する
  • 経口シリンジなど適切な器具を使う
  • 家族に実際に計量してもらう
  • 説明後に、家族の言葉で説明し直してもらう

65~85分|症例3:高齢者ポリファーマシー

84歳女性。最近、ふらつき、転倒、日中の眠気、食欲低下がみられる。今朝から会話がかみ合わない。
服用薬:
アムロジピン、フロセミド、ゾルピデム、オキシブチニン、グリメピリド、アピキサバン
腰痛に対して市販のNSAIDsも使用。食事・水分摂取が減少している。eGFR 32 mL/min/1.73m²。

問い1

今すぐ確認すべきことは何か。

方向性

  • 血糖値
  • 血圧、脈拍、起立時変化
  • 意識状態
  • 頭部打撲の有無
  • 出血徴候
  • 脱水
  • 腎機能・電解質
  • 最終服薬時刻
  • 発熱、尿路感染症など他のせん妄原因

問い2

薬との関連をどのように考えるか。
症状・問題関連を考える薬・背景
ふらつき・転倒降圧薬、利尿薬、睡眠薬、脱水
眠気ゾルピデム
せん妄・尿閉・口渇オキシブチニンの抗コリン作用
食事摂取低下時の低血糖グリメピリド
転倒後の出血アピキサバン
腎機能悪化・出血NSAIDs、脱水、抗凝固薬

問い3

薬をすべて減らせばよいか。
→ 一律の中止はしない。
次の順に評価する。
  1. 緊急性のある有害事象を確認する
  1. 各薬の適応を確認する
  1. 開始・増量時期と症状の時間関係を見る
  1. 効果と有害事象を比較する
  1. 急な中止で問題になる薬を確認する
  1. 医師・薬剤師・看護師・家族で調整する
  1. 調整後の症状を追跡する