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1.妊娠・分娩に用いる薬
ここでは薬剤の全種類を覚えるのではなく、母体への作用が胎児にも影響し得ることを軸にする。
| 薬効群 | 目的 | 主な観察 |
|---|---|---|
| 子宮収縮薬 | 分娩誘発・促進、出血管理 | 子宮収縮、胎児心拍、出血、母体バイタル |
| 子宮収縮抑制薬 | 早産時の子宮収縮抑制 | 脈拍、血圧、呼吸、血糖、肺水腫徴候 |
| 硫酸マグネシウム | 子癇予防など | 呼吸数、意識、腱反射、尿量、血中Mg |
| 妊娠高血圧症候群の治療薬 | 母体血圧の管理 | 血圧、頭痛、視覚症状、胎児状態 |
| インスリンなど | 妊娠中の血糖管理 | 母体血糖、低血糖、胎児発育 |
オキシトシンで考える
子宮筋収縮を促進
↓
陣痛が強くなる
↓
分娩が進行する
しかし作用が過剰になると、
子宮収縮が過剰・頻回になる
↓
胎盤への血流が十分に回復しない
↓
胎児低酸素
↓
胎児心拍異常
となる。
したがって、単に「陣痛が強くなった」と見るのではなく、
- 収縮回数・持続時間
- 子宮の弛緩
- 胎児心拍
- 母体の疼痛・バイタル
- 投与速度
を同時に確認する。
2.妊娠・授乳と薬物
妊娠中の基本原則
薬物療法は次の四つを組み合わせて判断する。
- 妊娠週数
- 薬剤の種類・用量・使用期間
- 母体疾患を治療しない危険
- 代替治療の有無
「妊娠中だから薬はすべて中止する」は間違っている。
てんかん、喘息、糖尿病、高血圧、精神疾患などでは、治療中断による母体の悪化が胎児にも影響する。薬剤変更が必要な場合でも、自己中断ではなく、妊娠前または判明後速やかに専門的評価へつなぐ。
妊娠・授乳中の薬物療法については、国立成育医療研究センターの「妊娠と薬情報センター」が全国の拠点病院と相談事業を行っている。妊娠と薬情報センター
授乳中の確認事項
- 乳児の月齢・在胎週数
- 乳児の肝・腎機能
- 薬剤の半減期
- 母体投与量
- 乳汁移行性
- 乳児の哺乳量
- 眠気、哺乳力低下、体重増加不良など
「授乳中だから禁止」「授乳直後に飲めば必ず安全」という一律の説明は避ける。
3.小児の薬物療法
小児では、次の四つが安全性を左右する。
- 現在の体重
- 年齢・発達段階
- 臓器機能
- 製剤と投与方法
用量計算の基本
例:
体重12 kg指示:アセトアミノフェン10 mg/kg/回製剤濃度:20 mg/mL
必要量は、
12 kg×10 mg/kg=120 mg12\ \mathrm{kg}\times10\ \mathrm{mg/kg}=120\ \mathrm{mg}
120 mg÷20 mg/mL=6 mL120\ \mathrm{mg}\div20\ \mathrm{mg/mL}=6\ \mathrm{mL}
となる。
必ず確認する項目
- mg/kg/回か、mg/kg/日か
- 1日最大量
- 成人最大量を超えないか
- 製剤濃度はmg/mLか、mg/gか
- 最新の体重か
- 家族が正しく計量できるか
- 同成分の市販薬を使用していないか
小児では承認用量が明確でない薬も存在するため、添付文書、診療ガイドライン、院内基準を確認する必要がある。PMDA「小児用医薬品の情報収集」
4.高齢者の薬物療法・ポリファーマシー
高齢者で有害事象が増える理由
| 変化 | 起こり得る問題 |
|---|---|
| 腎機能低下 | 腎排泄薬の蓄積 |
| 筋肉量低下 | 血清Crだけでは腎機能低下を見逃す |
| 体水分量低下 | 水溶性薬物の濃度上昇 |
| 体脂肪増加 | 脂溶性薬物の作用遷延 |
| 恒常性維持機能低下 | 起立性低血圧、低血糖、電解質異常 |
| 認知・視覚・手指機能低下 | 飲み間違い、吸入・点眼手技の失敗 |
ポリファーマシーの考え方
ポリファーマシーは「6剤以上なら自動的に問題」という意味ではない。
問題になるのは、
- 適応が不明な薬
- 効果が確認できない薬
- 重複処方
- 相互作用
- 処方カスケード
- 服薬困難
- 転倒・せん妄・低血糖などの有害事象
- 患者の治療目標と合わない薬
が存在する場合である。
薬剤数だけを理由に一律に中止するのではなく、適応、効果、有害事象、中止リスク、患者の希望を多職種で評価する。厚生労働省も、高齢者の医薬品適正使用とポリファーマシー対策の指針・手順書を公開している。高齢者医薬品適正使用検討会
高齢者で薬から考えたい症状
| 患者の変化 | 関連を考える薬 |
|---|---|
| 転倒・ふらつき | 降圧薬、利尿薬、睡眠薬、向精神薬 |
| せん妄 | 抗コリン薬、睡眠薬、オピオイド、ステロイド |
| 食欲低下 | 消化器症状を起こす薬、過鎮静 |
| 低血糖 | インスリン、SU薬など |
| 出血 | 抗凝固薬、抗血小板薬、NSAIDs |
| 尿閉・便秘 | 抗コリン作用のある薬 |
| 腎機能悪化 | NSAIDs、脱水時の利尿薬など |
5.酵素補充・遺伝子治療・再生医療
ここはC基礎型なので、詳細な疾患別治療までは扱わない。
| 治療 | 基本概念 | 看護上の視点 |
|---|---|---|
| 酵素補充療法 | 欠損・不足する酵素を外から補う | 投与時反応、アナフィラキシー、継続投与 |
| 遺伝子治療 | 遺伝子を導入・修復し、機能を変える | 遅発性有害事象、長期追跡、遺伝情報 |
| 再生医療 | 加工した細胞・組織等で機能を修復する | 感染、免疫反応、腫瘍化、長期観察 |
「一度投与すれば必ず完治する」「副作用がない新しい治療」という説明は間違っている。治療ごとに効果の持続性や不確実性が異なり、長期的な安全性評価が必要になる。
PMDAは、再生医療等製品を、加工した細胞・組織を用いる製品や、遺伝子治療を目的として細胞に導入する製品として定義している。PMDA「再生医療等製品」
52~65分|症例2:小児の投与量
2歳、体重12 kg。アセトアミノフェン10 mg/kg/回の指示。製剤濃度は20 mg/mL。家族は計量カップではなく、大さじで約15 mLを飲ませていた。
問い
- 正しい1回量は何mLか。
- 実際には何mg投与されていたか。
- 何を追加確認するか。
- 再発防止には何が必要か。
解答
正しい量:
12×10=120 mg12\times10=120\ \mathrm{mg}
120÷20=6 mL120\div20=6\ \mathrm{mL}
実際の投与量:
15×20=300 mg15\times20=300\ \mathrm{mg}
追加確認
- 投与回数・投与間隔
- 何日間続けたか
- 他のアセトアミノフェン含有薬
- 嘔吐、食欲、意識状態
- 肝機能障害のリスク
- 家族が使用している計量器具
再発防止
- mL単位で説明する
- 経口シリンジなど適切な器具を使う
- 家族に実際に計量してもらう
- 説明後に、家族の言葉で説明し直してもらう
65~85分|症例3:高齢者ポリファーマシー
84歳女性。最近、ふらつき、転倒、日中の眠気、食欲低下がみられる。今朝から会話がかみ合わない。服用薬:アムロジピン、フロセミド、ゾルピデム、オキシブチニン、グリメピリド、アピキサバン腰痛に対して市販のNSAIDsも使用。食事・水分摂取が減少している。eGFR 32 mL/min/1.73m²。
問い1
今すぐ確認すべきことは何か。
方向性
- 血糖値
- 血圧、脈拍、起立時変化
- 意識状態
- 頭部打撲の有無
- 出血徴候
- 脱水
- 腎機能・電解質
- 最終服薬時刻
- 発熱、尿路感染症など他のせん妄原因
問い2
薬との関連をどのように考えるか。
| 症状・問題 | 関連を考える薬・背景 |
|---|---|
| ふらつき・転倒 | 降圧薬、利尿薬、睡眠薬、脱水 |
| 眠気 | ゾルピデム |
| せん妄・尿閉・口渇 | オキシブチニンの抗コリン作用 |
| 食事摂取低下時の低血糖 | グリメピリド |
| 転倒後の出血 | アピキサバン |
| 腎機能悪化・出血 | NSAIDs、脱水、抗凝固薬 |
問い3
薬をすべて減らせばよいか。
→ 一律の中止はしない。
次の順に評価する。
- 緊急性のある有害事象を確認する
- 各薬の適応を確認する
- 開始・増量時期と症状の時間関係を見る
- 効果と有害事象を比較する
- 急な中止で問題になる薬を確認する
- 医師・薬剤師・看護師・家族で調整する
- 調整後の症状を追跡する