脳卒中急性期・再発予防薬

事前学習の全体構成

15~20分、14枚程度を想定する。
セクション枚数中心内容
脳卒中の分類3枚脳梗塞・脳出血・くも膜下出血
脳梗塞急性期4枚再灌流、血栓溶解薬、抗血栓薬
出血性脳卒中急性期2枚降圧、抗凝固薬の中和
再発予防4枚抗血小板薬と抗凝固薬の使い分け
まとめ1枚原因→治療標的→薬の対応

到達目標

事前学習後に、学生が次の4点を説明できることを目標とする。
  1. 脳卒中を脳梗塞・脳出血・くも膜下出血に分けられる
  1. 血栓溶解薬・抗血小板薬・抗凝固薬の違いを説明できる
  1. 非心原性脳梗塞と心原性脳塞栓症で再発予防薬が異なる理由を説明できる
  1. 抗血栓薬では治療効果と出血リスクを同時に評価する必要があると理解する

スライド構成案

Slide 1|タイトル

脳卒中急性期・再発予防薬
サブタイトル:
詰まったのか、破れたのか、なぜ血栓ができたのか

Slide 2|脳卒中は一つの病気ではない

中央に脳血管の図を置き、3種類に分ける。
分類何が起きているか
脳梗塞血管が詰まり、脳への血流が途絶える
脳出血脳内の血管が破れ、脳内に出血する
くも膜下出血主に脳動脈瘤が破裂し、くも膜下腔に出血する
ここで強調することは、
詰まりと出血では、治療の方向が正反対になる
という点である。

Slide 3|最初に画像検査が必要な理由

症状だけでは脳梗塞と脳出血を完全には区別できない。
突然の片麻痺・言語障害・意識障害
CT・MRIで出血の有無を確認
脳梗塞か出血性脳卒中かを判断
治療薬を選択
血栓溶解薬や抗血栓薬を、出血性脳卒中に使用すれば出血を悪化させる可能性がある。

脳梗塞急性期

Slide 4|脳梗塞では時間が重要

血栓による血管閉塞
脳への血流低下
酸素・ブドウ糖の供給低下
ATP産生低下
神経細胞障害
ここでは、
閉塞した血管をできるだけ早く再開通させ、救える脳組織を守る
ことが急性期治療の中心となる。

Slide 5|急性期薬を3つの役割で整理する

役割薬物療法
今ある血栓を溶かす血栓溶解薬
血栓の増大・新生を抑える抗血小板薬・抗凝固薬
虚血後の障害や合併症を抑える脳保護薬、抗脳浮腫薬など
この3群は目的が異なり、互いに同じ薬ではない。

Slide 6|血栓溶解薬:アルテプラーゼ

作用機序を図で示す。
アルテプラーゼ(rt-PA)
プラスミノゲンをプラスミンへ変換
フィブリンを分解
血栓を溶解して血流を再開させる
国内では、虚血性脳血管障害に対して原則として発症後4.5時間以内に投与を開始する。効果は時間とともに低下するため、適応判断と投与を迅速に行う必要がある。PMDA:アルテプラーゼ添付文書
重要な副作用は頭蓋内出血を含む重篤な出血である。

Slide 7|血栓溶解薬と抗血栓薬は違う

血栓溶解薬抗血小板薬・抗凝固薬
主な役割すでにある血栓を溶かす血栓の増大・新生を抑える
代表薬アルテプラーゼアスピリン、クロピドグレル、DOACなど
主な場面適応を満たす超急性期急性期の一部・再発予防
共通リスク出血出血
抗血小板薬や抗凝固薬は、アルテプラーゼの代わりに血栓を速やかに溶かす薬ではない。

Slide 8|国内で用いられるその他の急性期薬

細かな適応を暗記させず、作用の違いを整理する。
  • オザグレル トロンボキサンA₂合成を阻害し、血小板凝集と血管収縮を抑える
  • アルガトロバン トロンビンを直接阻害し、フィブリン血栓の形成を抑える
  • エダラボン フリーラジカルを消去し、虚血後の酸化障害を抑える
これらは脳梗塞の病型、発症時期、出血リスクなどを考慮して使用する薬であり、すべての脳梗塞患者に一律に使用する薬ではない。

出血性脳卒中急性期

Slide 9|脳出血では治療の方向が変わる

脳出血では、
出血の拡大を抑える
脳圧上昇を抑える
原因となった抗血栓作用を中和する
ことが中心となる。
薬物療法の例:
  • 静注降圧薬による血圧管理
  • 抗脳浮腫薬
  • 抗凝固薬を服用している場合の中和療法

Slide 10|抗凝固薬の中和

服用薬主な中和・対処薬
ワルファリンビタミンK+プロトロンビン複合体製剤
ダビガトランイダルシズマブ
第Xa因子阻害薬アンデキサネット アルファなど
ここでは薬剤名の完全暗記より、
脳出血では、現在服用している抗凝固薬の種類を早急に確認する
ことを理解させる。

再発予防

Slide 11|再発予防は原因によって薬が変わる

中心となる分岐は次の二つである。
動脈硬化・小血管病変など
血小板が中心となる血栓
抗血小板薬
心房細動などによる心内血栓
凝固系が中心となるフィブリン血栓
抗凝固薬
「脳梗塞だから血液をサラサラにする薬」と一括りにしないことが重要である。

Slide 12|非心原性脳梗塞:抗血小板薬

代表薬と作用点を簡潔に整理する。
主な作用
アスピリンCOX-1阻害→TXA₂産生低下
クロピドグレルP2Y₁₂受容体遮断→ADPによる血小板凝集を抑制
シロスタゾールPDE3阻害→血小板内cAMP増加
プラスグレルP2Y₁₂受容体遮断
非心原性脳梗塞の再発予防では、抗血小板薬が基本となる。アスピリン、クロピドグレル、シロスタゾールなどが国内指針で位置づけられている。J-STAGE:脳卒中ガイドライン2021〔改訂2025〕解説
なお、2剤併用はすべての患者に長期間行う治療ではない。軽症脳梗塞や一過性脳虚血発作など、選択された患者の早期に期間を限定して使用される。

Slide 13|心原性脳塞栓症:抗凝固薬

心房細動では心房内で血液がうっ滞し、フィブリンを主体とする血栓が形成される。
薬効群作用
ダビガトラントロンビンを直接阻害
アピキサバン、エドキサバン、リバーロキサバン第Xa因子を阻害
ワルファリンビタミンK依存性凝固因子の合成を抑制
心原性脳塞栓症の再発予防では、抗血小板薬ではなく抗凝固薬が基本となる。J-STAGE:抗血栓薬の適正使用と中和療法
機械弁やリウマチ性僧帽弁狭窄症などでは、DOACではなくワルファリンが必要となる。

Slide 14|抗血栓薬だけでは再発予防にならない

再発予防では、脳梗塞の原因となる危険因子も治療する。
  • 降圧薬:血圧管理
  • 脂質低下薬:LDLコレステロール管理
  • 糖尿病治療薬:血糖管理
  • 禁煙
  • 服薬継続
  • 心房細動の発見と治療

最終まとめスライド

脳卒中治療薬を見たら考えること

① 詰まったのか、出血したのか
② 今ある血栓を溶かすのか、次の血栓を防ぐのか
③ 血小板を抑えるのか、凝固系を抑えるのか
④ 効果と同時に、どこからの出血を観察するのか
この事前学習の後、対面授業では症例を使って、発症時刻、画像所見、心房細動の有無、服用中の抗血栓薬、腎機能、出血徴候などから薬物療法を考えさせる構成がよい。現行の国内指針は『脳卒中治療ガイドライン2021〔改訂2025〕』である。日本脳卒中学会