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2.対面授業90分

到達目標

  1. 腎機能低下時に確認する薬剤情報を説明できる
  1. 蓄尿障害薬と排出障害薬を区別できる
  1. 貧血の原因と治療薬を対応させられる
  1. 血小板減少患者の出血徴候を評価できる
  1. 骨髄抑制時の血球減少と患者症状を結び付けられる

時間配分

時間内容
0~5分事前学習確認
5~18分AKI・CKDと薬物蓄積
18~25分排尿障害治療薬
25~32分貧血・造血因子製剤
32~40分出血・凝固・血液疾患治療
40~55分検査値と薬の整理演習
55~85分段階提示型症例
85~90分確認小テスト

3.腎機能低下と薬物療法

基本的な流れ

腎機能低下時に確認すること

  • 血清クレアチニン
  • eGFR
  • 尿量
  • 体重・体格
  • 脱水
  • 電解質
  • 投与薬の腎排泄率
  • 活性代謝物
  • 投与量・投与間隔
  • 透析の有無
  • 腎毒性を持つ併用薬
日本腎臓学会は「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023」と、実務的な「CKD診療ガイド2024」を公開している。(日本腎臓学会CKD診療ガイド2024)

腎機能低下時に問題になりやすい薬の例

  • 抗菌薬
  • 抗ウイルス薬
  • 糖尿病薬
  • 抗凝固薬
  • ジゴキシン
  • リチウム
  • ガバペンチノイド
  • 一部のH₂受容体拮抗薬
  • NSAIDs
NSAIDsは「蓄積する薬」としてだけでなく、腎血流を低下させて腎機能を悪化させる可能性がある。

AKIを疑う変化

  • 尿量減少
  • 血清クレアチニン上昇
  • 浮腫
  • 体重増加
  • 高K血症
  • 呼吸困難
  • 意識変化
  • 新たな腎毒性薬の使用
  • 発熱、下痢、嘔吐などによる脱水

4.排尿障害治療薬

排尿障害は、まず次の二つに分ける。
障害主な症状
蓄尿障害頻尿、尿意切迫、切迫性尿失禁
排出障害尿勢低下、排尿困難、残尿、尿閉

蓄尿障害に用いる薬

薬効群作用注意点
抗ムスカリン薬膀胱排尿筋の過剰な収縮を抑える口渇、便秘、尿閉、認知機能への影響
β₃受容体作動薬蓄尿期の膀胱を弛緩させる血圧、脈拍、尿閉
ボツリヌス毒素膀胱壁内注入神経伝達を抑える残尿、尿閉、尿路感染

排出障害に用いる薬

薬効群作用注意点
α₁遮断薬前立腺・尿道平滑筋を弛緩させる起立性低血圧、めまい、転倒
5α還元酵素阻害薬前立腺容積を縮小させる効果発現までの時間、性機能関連
PDE5阻害薬下部尿路の平滑筋などに作用硝酸薬との併用、血圧低下
「頻尿だから抗ムスカリン薬」と単純に判断すると、残尿や尿閉を悪化させる場合がある。投与前後の残尿、排尿量、下腹部膨満を確認する。
過活動膀胱については、日本排尿機能学会・日本泌尿器科学会の「過活動膀胱診療ガイドライン第3版」がある。(日本泌尿器科学会)

5.貧血と造血因子製剤

貧血は原因から考える

主な原因検査の方向治療例
鉄欠乏フェリチン、TSAT、MCVなど鉄補充
ビタミンB₁₂・葉酸欠乏MCV、各ビタミン値欠乏物質の補充
腎性貧血CKD、EPO産生低下ESA、HIF-PH阻害薬など
出血出血部位、便潜血など原因治療、必要な補充
骨髄抑制白血球・血小板も低下原因治療、支持療法

鉄剤

経口鉄剤

  • 悪心
  • 腹痛
  • 便秘
  • 黒色便
  • 他薬との相互作用
鉄剤による黒色便は起こり得るが、消化管出血による黒色便との区別が必要になる。

静注鉄剤

  • 過敏反応
  • 血圧低下
  • 鉄過剰
  • 製剤ごとの投与方法

腎性貧血治療薬

薬効群作用観察
ESA赤血球産生を刺激するHb、血圧、血栓リスク
HIF-PH阻害薬内因性EPO産生や鉄利用を促すHb、鉄指標、血栓など
鉄剤造血に必要な鉄を補うフェリチン、TSAT、副作用
ESAを投与すればすべてのCKD貧血が改善するわけではない。鉄欠乏、出血、感染・炎症、栄養状態なども評価する。

6.出血・凝固・血液疾患

血小板と凝固因子の違い

異常出血の特徴
血小板減少・機能異常点状出血、紫斑、鼻出血、歯肉出血など
凝固因子異常深部出血、筋肉内出血、関節内出血など
実際には重なるため、出血部位だけで確定はできない。

主な治療の方向

  • 血小板不足 → 血小板輸血など
  • 凝固因子不足 → 凝固因子製剤
  • ビタミンK依存性因子の低下 → ビタミンKなど
  • 線溶亢進 → 抗線溶薬
  • 免疫性血小板減少症 → ステロイド、免疫グロブリン、TPO受容体作動薬など
  • 好中球減少 → 原因に応じてG-CSFなど

骨髄抑制

低下する血球起こり得る問題
赤血球貧血、息切れ、動悸、倦怠感
好中球感染、発熱
血小板出血、紫斑、点状出血
日本血液学会は「造血器腫瘍診療ガイドライン第3.1版(2024年版)」を公開している。第4版は2026年10月刊行予定であり、現時点では未確定である。(日本血液学会)

7.整理演習

学生に検査値カードと薬剤カードを配り、関連付けてもらう。

検査値カード

  • eGFR低下
  • 血清クレアチニン上昇
  • 尿量減少
  • Hb低下
  • 好中球減少
  • 血小板減少
  • PT-INR延長
  • APTT延長

考える項目

  1. 何が起きている可能性があるか
  1. どの薬の効果・副作用に関係するか
  1. 患者の何を観察するか
  1. どの情報を報告するか

検査値考えること観察
eGFR低下腎排泄型薬剤の蓄積意識、呼吸、血圧、薬剤別副作用
Hb低下貧血、出血倦怠感、息切れ、便・尿の出血
好中球減少感染リスク発熱、咽頭痛、悪寒
血小板減少出血リスク紫斑、鼻出血、歯肉出血
PT-INR延長凝固能低下など出血、併用薬、肝機能

8.段階提示型症例

第1段階|CKDと薬物蓄積

82歳女性。CKDでeGFR 22mL/min/1.73㎡。
食欲低下と下痢が続いている。
腎排泄型の薬が通常量で追加され、3日後から強い眠気、ふらつき、手足の不随意運動が出現した。

Q1|何が起きている可能性があるか

腎機能低下と脱水により薬物排泄が低下し、薬剤が蓄積している可能性を考える。

Q2|確認することは何か

  • 薬剤名
  • 1回量と投与間隔
  • 開始・増量時期
  • 最終服用時刻
  • eGFRの推移
  • 尿量
  • 水分摂取、下痢、嘔吐
  • 意識、呼吸、ふらつき
  • 併用薬
  • 透析の有無

Q3|看護師として何をするか

  • 意識・呼吸・循環を評価する
  • 転倒を予防する
  • 薬剤と症状の時間関係を整理する
  • 腎機能、尿量、投与量を含めて報告する
  • 自己判断で増減するのではなく、用量・間隔の再評価につなげる

第2段階|CKD患者の貧血

同患者に、倦怠感と労作時息切れがある。
Hb 8.4g/dL、MCV 90fL。
フェリチンとTSATが低く、便潜血検査も予定された。

Q4|腎性貧血だけと判断してよいか

判断できない。
  • EPO産生低下
  • 鉄欠乏
  • 消化管などからの出血
  • 炎症
  • 栄養障害
  • B₁₂・葉酸欠乏
  • 骨髄疾患
などを考える。

Q5|治療中に観察することは何か

  • Hbの推移
  • 息切れ、倦怠感
  • 血圧
  • 鉄指標
  • 出血徴候
  • 血栓を疑う症状
  • 鉄剤の消化器症状
  • ESAやHIF-PH阻害薬の使用状況

第3段階|血小板減少

化学療法後の患者。血小板数1.8万/μL。
下肢に点状出血があり、歯磨き時に歯肉出血がみられる。

Q6|追加で確認することは何か

  • 鼻出血
  • 血尿
  • 血便・黒色便
  • 吐血
  • 頭痛、意識変化、神経症状
  • 転倒・打撲
  • 月経出血
  • 抗血小板薬・抗凝固薬
  • 血小板数の推移

Q7|看護上の注意点は何か

  • 転倒・打撲を予防する
  • 不要な侵襲的処置を避ける
  • 採血・穿刺後は十分に圧迫する
  • 硬い歯ブラシを避ける
  • 筋肉内注射や直腸操作の必要性を再確認する
  • 頭痛・意識変化は頭蓋内出血を考えて速やかに報告する

9.Take Home Message

  1. 腎機能低下では薬の排泄が遅れ、作用・副作用が長引く
  1. 血清クレアチニンだけで腎機能を判断しない
  1. eGFRだけでなく尿量、体格、脱水、薬剤特性をみる
  1. 貧血はHb低下だけでなく原因を調べる
  1. 血小板減少では皮膚・粘膜・神経症状を観察する
  1. 検査値を見たら、薬の効果・副作用と患者症状を結び付ける