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2.対面授業90分

到達目標

  1. ホルモン軸と負のフィードバックを説明できる
  1. 原発性異常と中枢性異常の違いを説明できる
  1. ホルモンの過剰・不足から治療方向を考えられる
  1. ADH異常と尿量・血清Naの関係を説明できる
  1. ステロイド薬の急な中止が危険な理由を説明できる

時間配分

時間内容
0~10分内分泌系の共通構造
10~25分視床下部・下垂体ホルモン
25~35分ADHと水代謝
35~43分甲状腺ホルモンと治療薬
43~50分副腎ホルモンと治療薬
50~70分ホルモン軸完成演習
70~85分ステロイド薬症例
85~90分確認小テスト

3.授業スライド構成

事前授業がないため、対面スライドは28枚前後を想定する。
No.タイトル内容
1タイトル内分泌の基本
2学習目標ホルモン軸から薬を理解する
3内分泌系とは血流を介して標的細胞へ情報を伝える
4内分泌が難しく見える理由ホルモン名ではなく上下関係が重要
5基本のホルモン軸視床下部―下垂体―標的臓器
6負のフィードバック末梢ホルモンが上流を抑制する
7原発性と中枢性標的臓器障害か、視床下部・下垂体障害か
8下垂体前葉と後葉産生・貯蔵・分泌の違い
9下垂体前葉ホルモンTSH、ACTH、GH、PRL、LH、FSH
10成長ホルモンGH―IGF-1軸
11GH過剰・不足先端巨大症、GH分泌不全
12プロラクチンドパミンによる抑制
13LH・FSH性腺機能との関係
14ADHはどこで作られるか視床下部で産生、下垂体後葉から分泌
15ADHの作用V₂受容体、集合管、アクアポリン2
16ADH不足中枢性尿崩症、多尿、高Na血症方向
17ADH過剰SIADH、水貯留、低Na血症方向
18ADH関連薬デスモプレシン、V₂受容体拮抗薬
19甲状腺ホルモン軸TRH―TSH―T₃・T₄
20甲状腺機能低下症不足をレボチロキシンで補充
21甲状腺機能亢進症ホルモン合成・分泌を抑える
22抗甲状腺薬無顆粒球症、肝障害
23副腎皮質ホルモンコルチゾール、アルドステロン
24副腎髄質ホルモンアドレナリン、ノルアドレナリン
25副腎機能の不足・過剰副腎不全、Cushing症候群など
26ステロイド薬の作用抗炎症・免疫抑制・ホルモン補充
27ステロイド薬の全身副作用感染、高血糖、骨粗鬆症、精神症状など
28HPA軸抑制と急な中止ACTH低下、内因性コルチゾール低下
29まとめ過剰・不足・補充・抑制で整理する

4.内分泌を理解する共通ルール

ルール1|不足しているなら補う

例:甲状腺機能低下症
甲状腺ホルモン不足
↓
代謝低下
↓
寒がり、徐脈、便秘、倦怠感
↓
レボチロキシンによる補充

ルール2|過剰なら産生・分泌・作用を抑える

例:甲状腺機能亢進症
甲状腺ホルモン過剰
↓
代謝亢進
↓
頻脈、発汗、体重減少、振戦
↓
抗甲状腺薬などで合成を抑える

ルール3|上流と下流を同時に見る

原発性甲状腺機能低下症

甲状腺機能低下
↓
FT₄低下
↓
負のフィードバック低下
↓
TSH上昇

中枢性甲状腺機能低下症

視床下部・下垂体機能低下
↓
TSHが低値または不適切に正常
↓
FT₄低下
したがって、TSHだけで甲状腺機能を判断するのは不十分な場合がある。
日本甲状腺学会は「甲状腺疾患診断ガイドライン2024」を公開している。(日本甲状腺学会)

5.間違えやすい点

ADHは下垂体で作られる、は間違っている

ADHは、
視床下部で産生
↓
神経軸索を通って運ばれる
↓
下垂体後葉に貯蔵
↓
必要に応じて血中へ分泌
という流れになる。

アルドステロンはACTHだけで調節される、は間違っている

アルドステロン分泌の中心的な調節因子は、
  • RAA系
  • 血清K濃度
である。ACTHの影響は受けるが、主要な調節系ではない。

プロラクチンは視床下部から促進されるだけ、ではない

プロラクチンは、通常、視床下部からのドパミンによって持続的に抑制されている。
そのため、D₂受容体遮断薬によって、
  • 高プロラクチン血症
  • 乳汁分泌
  • 月経異常
などが起こり得る。

6.ADH不足・過剰の比較

項目ADH不足ADH過剰
代表病態中枢性尿崩症SIADH
腎集合管での水再吸収低下増加
尿量増加減少方向
尿浸透圧低下上昇
血清Na上昇方向低下方向
主な症状多尿、口渇、脱水悪心、頭痛、意識障害、けいれん
治療方向ADH作用を補う水分管理、ADH作用を抑えるなど

注意点

SIADHは、単純に「体内のNaが大量に失われた病態」と理解するのは正確ではない。
ADH過剰
↓
自由水の貯留
↓
血液が希釈される
↓
低Na血症
という理解が基本になる。

7.甲状腺薬の整理

病態治療方向代表薬・治療
甲状腺機能低下症不足を補うレボチロキシン
甲状腺機能亢進症合成を抑えるチアマゾール、プロピルチオウラシルなど
症状の強い甲状腺機能亢進症交感神経症状を抑えるβ遮断薬など
放射性ヨウ素治療後など必要に応じて補充レボチロキシン

抗甲状腺薬の重要副作用

抗甲状腺薬使用中に、
  • 発熱
  • 咽頭痛
  • 強い倦怠感
が出現した場合は、単なる風邪と決めつけず、無顆粒球症を疑う必要がある。
確認するものは、
  • 服薬開始時期
  • 体温
  • 咽頭症状
  • 白血球数・好中球数
  • 感染徴候
となる。

8.副腎ホルモンの整理

ホルモン主な作用
コルチゾール糖代謝、血圧維持、ストレス応答、抗炎症作用
アルドステロンNa再吸収、K排泄、循環血液量の維持
副腎アンドロゲン性徴などに関与
カテコールアミン心拍数、血圧、血糖を上昇させる

過剰・不足と治療方向

病態ホルモンの方向治療方向
副腎不全コルチゾール不足補充
Cushing症候群コルチゾール過剰原因治療、合成抑制など
原発性アルドステロン症アルドステロン過剰受容体遮断、原因治療
褐色細胞腫・パラガングリオーマカテコールアミン過剰α遮断を含む周術期管理、手術など

9.ホルモン軸完成演習

4人程度のグループに、以下の4軸を割り当てる。
  1. 甲状腺軸
  1. 副腎皮質軸
  1. 性腺軸
  1. ADHと水代謝

記入項目

  • 上流ホルモン
  • 下流ホルモン
  • 標的臓器
  • 主な作用
  • 不足時の症状
  • 過剰時の症状
  • 治療方向
  • 代表薬

共通の問い

このホルモンが不足した場合、薬は何を補うのか。
過剰な場合、どの段階を抑えられるか。
原発性と中枢性では、上流ホルモンの値はどう変わるか。

10.症例|ステロイド薬の急な中止

68歳女性。自己免疫疾患のため、プレドニゾロン20mg/日を約2か月服用していた。
症状が改善したため、「もう治った」と考えて自分で服用を中止した。
数日後から強い倦怠感、食欲不振、悪心が出現した。
血圧88/54 mmHg、血清Na 128 mEq/L、血糖62 mg/dL。

Q1|何が起きている可能性があるか

外因性ステロイドによるHPA軸抑制を背景とした、副腎皮質機能低下を考える。

Q2|なぜ急に中止すると危険なのか

外因性ステロイド
↓
CRH・ACTH分泌抑制
↓
副腎皮質からのコルチゾール産生低下
↓
薬を急に中止
↓
必要なコルチゾールを確保できない
↓
低血圧、低血糖、低Na血症など

Q3|確認することは何か

  • ステロイド薬の種類
  • 用量
  • 使用期間
  • 最終服用時刻
  • 自己中止・飲み忘れ
  • 血圧、脈拍、意識
  • 血糖
  • Na、K
  • 嘔吐・下痢
  • 発熱・感染
  • 手術、外傷などの身体的ストレス

Q4|看護師として重要な対応は何か

  • 急変として速やかに報告する
  • 循環・意識・血糖を継続評価する
  • ステロイドを自己判断で中止しないよう指導する
  • 発熱、嘔吐、手術などのストレス時の対応を確認する
  • ステロイド治療中であることを他の医療者に伝えられるよう支援する
副腎クリーゼは生命に関わる。日本内分泌学会も、副腎不全患者では感染症、手術、外傷などのストレス時に補充量の調整が必要になることを示している。(日本内分泌学会)

11.Take Home Message

  1. 内分泌薬は「ホルモン軸」で理解する
  1. 末梢ホルモンは上流に負のフィードバックをかける
  1. 不足なら補充、過剰なら合成・分泌・作用を抑える
  1. ADH不足では多尿・高Na方向、過剰では低Na方向になる
  1. 抗甲状腺薬使用中の発熱・咽頭痛は無顆粒球症を疑う
  1. 長期ステロイド薬は自己判断で急に中止しない