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2.対面授業90分

到達目標

  1. 急性脳卒中で発症時刻が重要な理由を説明できる
  1. けいれん発作中・発作後の観察項目を説明できる
  1. 抗発作薬を急に中止する危険性を説明できる
  1. Parkinson病薬とon–off、wearing-offを結び付けられる
  1. 認知症薬・頭痛薬の目的と重要副作用を説明できる

時間配分

時間内容
0~5分事前学習確認
5~15分脳卒中急性期・再発予防薬
15~24分てんかん・抗発作薬
24~31分Parkinson病治療薬
31~35分認知症治療薬
35~38分頭痛・片頭痛治療薬
38~40分神経筋疾患治療薬
40~55分神経機能と薬の整理演習
55~85分3症例による演習
85~90分確認小テスト

3.脳卒中急性期・再発予防薬

急性脳卒中で最初に必要な情報

  • 最終健常確認時刻
  • 症状を発見した時刻
  • 意識状態
  • 麻痺
  • 構音・言語障害
  • 視野・眼球偏倚
  • 血圧
  • 血糖
  • 抗凝固薬・抗血小板薬
  • 最近の手術・出血
  • 転倒・頭部外傷
低血糖でも麻痺や意識障害に似た症状が起こり得るため、血糖確認が必要になる。

治療方向

病態・時期主な治療の方向
急性脳梗塞血栓溶解療法、機械的血栓回収療法など
非心原性脳梗塞の再発予防抗血小板療法
心房細動による脳塞栓症の再発予防抗凝固療法
脳出血血圧管理、抗凝固作用の是正など
脳梗塞か脳出血かは症状だけでは確定できない。画像診断前に「脳梗塞だろう」と決めつけて抗血栓薬を投与するのは危険である。
「脳卒中治療ガイドライン2021」は2025年に改訂項目が公開されている。(日本脳卒中学会)

治療後に観察すること

  • 意識、麻痺、言語の変化
  • 頭痛、悪心・嘔吐
  • 血圧
  • 穿刺部位
  • 鼻出血、血尿、消化管出血
  • 神経症状の再悪化
治療後の急な頭痛、嘔吐、意識低下は、頭蓋内出血などを考えて速やかに報告する。

4.てんかん・抗発作薬

現在は「抗てんかん薬」に代えて、発作を抑制する目的を明確にした抗発作薬という呼び方も用いられる。

薬の主な作用方向

  • Naチャネルを抑制する
  • Caチャネルを調節する
  • GABA作用を増強する
  • グルタミン酸作用を抑制する
  • シナプス小胞放出を調節する

薬剤ごとに異なる重要副作用

  • 眠気、ふらつき
  • 皮疹、重症薬疹
  • 肝機能障害
  • 血球減少
  • 低Na血症
  • 精神・行動変化
  • 妊娠・胎児への影響
  • 薬物相互作用

発作中の対応

  • 発作開始時刻を確認する
  • 周囲の危険物を除く
  • 頭部を保護する
  • 無理に押さえつけない
  • 口に物や指を入れない
  • 呼吸、チアノーゼを観察する
  • 眼球・頭部の偏倚、四肢の動きを観察する
  • 可能な範囲で安全な体位を確保する
けいれんが5分以上続く、または意識が回復しないまま反復する場合は、てんかん重積状態を考えて緊急対応につなげる。

発作後の観察

  • 意識がどこまで回復したか
  • 呼吸、SpO₂
  • 麻痺・言語障害
  • 外傷
  • 舌咬傷
  • 尿失禁
  • 血糖
  • 発熱
  • 服薬状況
  • 睡眠不足、飲酒、感染などの誘因
日本神経学会では「てんかん診療ガイドライン2018」と追補版が公開されている。(日本神経学会)

5.Parkinson病治療薬

Parkinson病の基本

黒質ドパミン神経の変性
線条体ドパミン低下
運動調節の障害
動作緩慢、筋強剛、振戦、姿勢保持障害

治療薬の整理

薬効群主な作用注意点
レボドパ+末梢性脱炭酸酵素阻害薬中枢のドパミンを補うwearing-off、ジスキネジア、悪心、低血圧
ドパミン受容体作動薬ドパミン受容体を刺激眠気、突発的睡眠、幻覚、衝動制御障害
MAO-B阻害薬ドパミン分解を抑える相互作用、ジスキネジア
COMT阻害薬レボドパ作用を延長するジスキネジア、下痢など
アマンタジンドパミン系などに作用幻覚、網状皮斑、腎機能
抗コリン薬コリン系とのバランスを調整口渇、便秘、尿閉、認知機能

on–offとwearing-off

wearing-off

薬効持続時間が短くなり、次の服薬前に症状が悪化する。

on–off

服薬時刻だけでは説明できない、急激な運動状態の変動がみられる。
重要なのは、「歩けない」という結果だけでなく、
  • 服薬時刻
  • 食事時刻
  • 動けた時刻
  • 動けなくなった時刻
  • ジスキネジア
  • 起立性低血圧
  • 幻覚

6.認知症治療薬

薬効群主な目的注意点
コリンエステラーゼ阻害薬コリン作動性神経伝達を補助悪心、下痢、食欲低下、徐脈、失神
NMDA受容体拮抗薬過剰なグルタミン酸作用を調整めまい、傾眠、便秘など
抗Aβ抗体薬Aβを標的とする疾患修飾治療ARIA、頭痛、意識・神経症状、MRI管理
認知症治療薬は、認知症を必ず元の状態に戻す薬ではない。認知機能や生活機能の低下を緩やかにすることなどが目的になる。
抗Aβ抗体薬はすべての認知症患者が対象ではなく、アルツハイマー病による軽度認知障害または軽度認知症など、適正使用指針に基づく患者選択と画像管理が必要になる。(厚生労働省・抗アミロイドβ抗体薬)

7.頭痛・片頭痛治療薬

頭痛では、薬を選ぶ前に二次性頭痛を除外する。

警告徴候

  • 突然発症した激しい頭痛
  • 今までにない頭痛
  • 意識障害
  • 麻痺・言語障害
  • 発熱・項部硬直
  • 頭部外傷後
  • がん・免疫抑制状態
  • 妊娠・産褥期の新しい頭痛
  • 次第に増悪する頭痛

片頭痛治療

治療
発作時治療NSAIDs、アセトアミノフェン、トリプタンなど
予防療法β遮断薬、一部の抗発作薬、Ca拮抗薬、CGRP関連薬など
急性期治療薬を頻回に使用すると、薬剤の使用過多による頭痛につながる場合がある。使用日数を確認する。(日本頭痛学会・頭痛の診療ガイドライン2021)

8.神経筋疾患治療薬

疾患治療の大枠観察
重症筋無力症コリンエステラーゼ阻害薬、免疫療法など嚥下、呼吸、筋力
ALS疾患進行を抑える薬、呼吸・栄養・症状への支援呼吸、嚥下、体重
多発性硬化症再発治療と疾患修飾薬感染、神経症状
CIDPなど免疫グロブリン、ステロイド、血漿交換など筋力、呼吸、感染
神経筋疾患では、四肢筋力だけでなく、呼吸筋と嚥下機能の変化が重要になる。

9.整理演習

学生に「症状カード」と「薬効カード」を配る。

症状カード

  • 片麻痺
  • けいれん
  • 動作緩慢
  • ジスキネジア
  • 徐脈
  • 突然の激しい頭痛
  • 筋力低下
  • 意識障害

整理する項目

  1. どの病態・薬に関連するか
  1. 緊急性があるか
  1. 何を追加で確認するか
  1. 何を報告するか

10.症例1|けいれん発作後

72歳男性。突然、右上肢から始まるけいれんが全身に広がった。
発作は約2分で止まった。現在は眠っており、呼びかけに反応が乏しい。

問い

何を確認するか

  • 発作開始・終了時刻
  • けいれんの始まった部位
  • 意識の回復
  • 呼吸、SpO₂
  • 麻痺・言語障害
  • 血糖
  • 外傷
  • 抗発作薬の服薬状況

発作後に眠っているので、そのままでよいか

発作後の傾眠の場合もあるが、低血糖、脳卒中、頭蓋内出血、非けいれん性てんかん重積などを除外できない。意識・呼吸・神経症状を継続評価する。

11.症例2|Parkinson病のoff

76歳女性。Parkinson病でレボドパ製剤を服用中。
昼食後、立ち上がれず、「足が床にくっついたよう」と話す。
服薬予定時刻から1時間以上遅れている。

問い

  • 最終服用時刻はいつか
  • 食事時刻・内容はどうか
  • 普段のon・offパターンはどうか
  • 血圧低下や意識障害はないか
  • 急な麻痺ではないか
  • 嚥下状態はどうか
「Parkinson病だから動けない」と決めつけず、脳卒中、低血圧、感染、服薬遅延なども考える。

12.症例3|急性脳梗塞疑い

68歳男性。朝7時に家族と会話していた。
8時10分、右上下肢の麻痺と言葉の出にくさを家族が発見した。
血圧186/104mmHg。心房細動があり、抗凝固薬を服用している。

問い

最優先で集める情報

  • 最終健常確認時刻:7時
  • 発見時刻:8時10分
  • 抗凝固薬名と最終服用時刻
  • 神経症状
  • 血糖
  • 最近の出血・手術・外傷

なぜ発症時刻が重要か

急性期治療の適応判断が時間と関係するためである。起床時発症などでは、単に発見時刻だけでなく「最後に正常だった時刻」を確認する。

13.Take Home Message

  1. 脳神経症状では「いつから」を必ず確認する
  1. けいれん発作は開始時刻と経過を観察する
  1. 発作後の傾眠を決めつけず、呼吸・意識・麻痺を評価する
  1. Parkinson病では薬効と服薬・食事時刻を記録する
  1. 認知症薬では徐脈、転倒、食欲、ARIAなど薬剤別の観察を行う
  1. 突然の激しい頭痛や神経症状を伴う頭痛は緊急評価につなげる