04 循環器②

04 対面授業

虚血・不整脈・血栓・ショックと循環治療

到達目標

  1. 虚血性心疾患治療薬を、症状改善と再発予防に分けられる
  1. 不整脈治療を、心拍数調節・リズム調節・血栓予防に分けられる
  1. 抗血小板薬と抗凝固薬の違いを説明できる
  1. 循環作動薬の目的を、血管抵抗と心収縮力から説明できる
  1. 薬物治療後に観察する症状、バイタルサイン、検査値を挙げられる

90分の構成

時間内容学習方法
0~7分事前学習確認クイズ
7~25分虚血性心疾患治療薬症例A
25~43分不整脈治療薬症例B
43~61分抗血栓療法症例Bの経過
61~80分ショック・循環作動薬症例C
80~88分統合ワーク3症例の比較
88~90分Exit Ticket個人記述

0~7分|事前学習確認

確認問題

  1. 心筋の酸素需要を増加させる要素は何か
  1. 心拍数調節とリズム調節は同じ治療か
  1. 抗血小板薬と抗凝固薬では、主な作用点がどう異なるか
  1. ノルアドレナリンとドブタミンでは、主な作用がどう異なるか

7~25分|虚血性心疾患治療薬

症例A

68歳男性。階段を上ると胸部圧迫感が出現する。
休むと数分で改善する。
ニトログリセリン、ビソプロロール、アスピリン、ロスバスタチンが処方されている。

問1|4剤の目的は同じか

薬剤主な目的
ニトログリセリン発作時の心負荷を軽減し、胸痛を改善する
ビソプロロール心拍数・収縮力を抑え、心筋酸素需要を減らす
アスピリン血小板凝集を抑え、血栓形成を防ぐ
ロスバスタチンLDLコレステロールを低下させ、再発リスクを下げる
次の二群に分けさせる。
  • 現在の胸痛・虚血を改善する薬
  • 心筋梗塞や再発を防ぐ薬

問2|ニトログリセリンはなぜ胸痛を改善するか

静脈拡張
静脈還流低下
前負荷低下
心筋の仕事量・酸素需要低下
一方で、
血管拡張
血圧低下
頭痛・めまい・ふらつき
が起こり得る。

確認する項目

  • 胸痛の部位・性状・強さ
  • 発症時刻と持続時間
  • 労作との関係
  • 血圧・脈拍
  • 冷汗、悪心、呼吸困難
  • ニトログリセリン使用後の変化
  • PDE5阻害薬などの併用薬

問3|胸痛が改善しなければどう考えるか

次の変化があれば、急性冠症候群の可能性を考える。
  • これまでより強い
  • 安静にしても続く
  • 発作頻度が増えている
  • 冷汗、悪心、呼吸困難を伴う
  • ニトログリセリンで改善しない
薬を投与して経過を見るだけでなく、緊急性を判断する必要がある。

25~43分|不整脈治療薬

症例B

79歳女性。心房細動で治療中。
ビソプロロールとアピキサバンを服用している。
最近、立ち上がるとふらつくという。
血圧108/64 mmHg、脈拍48回/分、不規則。

問1|二つの薬の目的は何か

薬剤目的
ビソプロロール心拍数を抑える
アピキサバン心房細動に伴う血栓塞栓症を防ぐ
不整脈そのものを調節する薬と、不整脈による合併症を防ぐ薬は異なる
と整理する。

問2|なぜふらつきが起きている可能性があるか

β₁受容体遮断
心拍数低下
心拍出量低下
脳血流低下
めまい・ふらつき

確認する項目

  • 脈拍数
  • 脈の整・不整
  • 血圧
  • 症状と服薬時刻の関係
  • めまい・失神
  • 呼吸困難
  • 心電図
  • 服薬状況
  • 他の徐脈を起こし得る薬

問3|不整脈治療薬にはどのような危険があるか

不整脈治療薬は、刺激生成や興奮伝導を抑えることで治療効果を示す。一方、作用が強くなると、
  • 徐脈
  • 房室ブロック
  • QT延長
  • 新たな不整脈
  • 心不全悪化
などを起こす可能性がある。
不整脈を治療する薬が、新たな不整脈を起こすことがある
という催不整脈作用を重要事項とする。

43~61分|抗血栓療法

症例Bの経過

心房細動に対してアピキサバンを服用している。
最近、食欲低下と倦怠感があり、便が黒いという。
Hbは12.1 g/dLから9.4 g/dLへ低下している。
腎機能も以前より低下している。

問1|アピキサバンを服用する目的は何か

心房細動では心房内の血流が停滞し、血栓が形成されることがある。
心房細動
心房内の血流停滞
血栓形成
脳などの動脈へ流入
血栓塞栓症
抗凝固薬は、この血栓形成を予防する目的で使用する。

問2|黒色便とHb低下から何を考えるか

  • 消化管出血
  • 抗凝固薬との関連
  • 出血による貧血
抗凝固薬が処方されているからといって、自己判断で中止するよう指導するのではなく、出血の緊急性を評価し、速やかに医療者間で共有する。

抗血小板薬と抗凝固薬の違い

抗血小板薬抗凝固薬
主な標的血小板凝固因子
主な使用例冠動脈疾患など心房細動、静脈血栓塞栓症など
共通する注意出血出血
「血液をサラサラにする薬」という一括りの表現では、作用点と使用目的の違いが分からないことを示す。

抗血栓薬使用患者の観察

  • 鼻出血
  • 歯肉出血
  • 皮下出血
  • 血尿
  • 黒色便
  • 吐血
  • 頭痛、意識状態、神経症状
  • Hb
  • 血小板数
  • 腎機能
  • 併用薬
  • 転倒・打撲
  • 飲み忘れ、重複服用

61~80分|ショック・循環作動薬

症例C

75歳男性。感染症治療中に血圧が低下した。
血圧78/46 mmHg、脈拍118回/分、呼吸数26回/分。
意識がぼんやりしており、尿量が減少している。
輸液後も低血圧が続くため、ノルアドレナリンが開始された。

問1|血圧が低いことだけが問題か

ショックでは、重要臓器への血流と酸素供給が不足する。
  • 意識状態の変化
  • 尿量低下
  • 皮膚の変化
  • 頻脈
  • 乳酸値上昇
なども臓器灌流低下の徴候になる。

問2|なぜノルアドレナリンを使用するのか

主にα₁受容体刺激
血管収縮
末梢血管抵抗上昇
血圧維持
ただし、血圧が上昇しただけで臓器灌流が回復したとは限らない。

循環作動薬の作用を比較する

薬剤主な作用治療の方向
ノルアドレナリン主に血管収縮血管抵抗を高める
ドブタミン主に心収縮力増強心拍出量を増やす
アドレナリン心臓・血管の両方に作用心拍出量と血管抵抗に作用する
血圧が低いから、どの昇圧薬でも同じ
ではなく、循環血液量、心収縮力、血管抵抗のどこが問題なのかを考える。

循環作動薬投与中の観察

  • 血圧・平均動脈圧
  • 心拍数・心電図
  • 意識状態
  • 尿量
  • 皮膚色・皮膚温
  • 末梢冷感
  • 乳酸値
  • 呼吸状態
  • 投与経路・投与部位
  • 血管外漏出
  • 不整脈
  • 末梢虚血

80~88分|統合ワーク

三つの症例を比較する

症例治療で変えたいもの代表薬重要な観察
胸痛・心筋虚血心筋酸素需給、血栓硝酸薬、β遮断薬、抗血小板薬胸痛、血圧、脈拍
心房細動心拍数、リズム、血栓β遮断薬、抗不整脈薬、抗凝固薬脈拍、心電図、出血
ショック血管抵抗、心拍出量、臓器灌流ノルアドレナリン、ドブタミンなど血圧、意識、尿量、末梢循環

共通ワークシート

学生は各症例について、次の4項目を記入する。
  1. 患者に何が起きているか
  1. 薬は何を変えるために使われているか
  1. 作用が強く出ると何が起こるか
  1. だから何を観察するか

88~90分|Exit Ticket

ノルアドレナリン投与後、血圧は上昇したが、尿量低下と意識障害が続いている。
「血圧が上がったため治療効果が得られた」と判断してよいか。理由を説明せよ。

解答例

血圧が上昇しても、尿量低下と意識障害が続いているため、腎臓や脳への血流が十分に回復していない可能性がある。血圧だけでなく、尿量、意識状態、皮膚・末梢循環、乳酸値などを合わせて評価する必要がある。

対面授業のスライド案

Slide内容
1タイトル・到達目標
2事前学習確認
3共通思考の型
4症例A:胸痛
5心筋の酸素需給
6虚血性心疾患治療薬の目的
7ニトログリセリンの作用と観察
8症例B:心房細動
9心拍数調節・リズム調節・血栓予防
10徐脈と催不整脈作用
11症例Bの経過:黒色便
12血小板と凝固系
13抗血小板薬と抗凝固薬
14出血アセスメント
15症例C:ショック
16ショックの病態
17循環作動薬の比較
18血圧と臓器灌流
19三症例の統合
20Exit Ticket
この回の中心メッセージは次の一文になる。
胸痛、脈拍、出血、血圧の数値だけを見るのではなく、薬が循環の何を変え、その結果として患者に何が起きているかを評価する。