抗菌薬
抗菌薬1|抗菌薬の比較2|生活から見る観察ポイント🍽 食事観察することβラクタム系・マクロライド系・クリンダマイシンニューキノロン系看護の視点🚽 排泄観察すること看護の視点🌙 睡眠観察することニューキノロン系アミノグリコシド系看護の視点🚶 運動・活動観察することニューキノロン系特に注意看護の視点アミノグリコシド系看護の視点🧠 認知機能観察することβラクタム系ニューキノロン系看護の視点3|+α:アレルギー・腎機能/C. difficile感染症① アレルギー・アナフィラキシー観察すること注意するタイミング看護の視点② 腎機能特に見る薬剤観察看護の視点③ 抗菌薬関連下痢・C. difficile感染症観察すること注意するタイミング看護の視点4|薬剤別の主な観察項目βラクタム系観察注意するタイミング特に見るポイントマクロライド系観察注意するタイミング特に見るポイントニューキノロン系観察注意するタイミング特に見るポイントアミノグリコシド系観察注意するタイミング特に見るポイントグリコペプチド系バンコマイシンで観察すること注意するタイミング特に見るポイントクリンダマイシン観察注意するタイミング特に見るポイント5|見逃したくないサイン⚠️ アナフィラキシー⚠️ C. difficile感染症⚠️ ニューキノロン系⚠️ アミノグリコシド系⚠️ βラクタム系使用中の意識変化6|抗菌薬を使用している患者の見方① 感染症は改善しているか② 生活はどう変化したか③ 抗菌薬による新たな問題はないか④ 患者の状態と投与量は合っているか⑤ 抗菌薬を続ける必要性は変化していないか7|Evidence Memo抗菌薬関連下痢・C. difficileニューキノロン系アミノグリコシド系マクロライド系8|この早見表を使うときの注意
抗菌薬
抗菌薬を使用している患者では、感染症が改善しているかだけでなく、
- 食欲や消化器症状
- 下痢・排便回数
- 睡眠を妨げる症状
- 歩行や活動性
- 意識・認知機能
- 発疹や呼吸状態
- 腎機能
- 抗菌薬投与後に新たに出現した症状
を確認する。
基本となる観察軸は、
食事|排泄|睡眠|運動・活動|認知機能
の5領域とする。
抗菌薬では、これに加えて、
+α|アレルギー・腎機能/抗菌薬関連下痢・C. difficile感染症
を重点的に確認する。
1|抗菌薬の比較
2|生活から見る観察ポイント
🍽 食事
観察すること
- 食欲
- 食事摂取量
- 悪心・嘔吐
- 腹痛
- 下痢
- 水分摂取量
- 服薬と食事のタイミング
- サプリメント・ミネラル製剤
βラクタム系・マクロライド系・クリンダマイシン
抗菌薬による消化器症状として、
- 悪心
- 腹痛
- 下痢
がみられることがある。
ニューキノロン系
薬剤によっては、
- Ca
- Mg
- Al
- Fe
などを含む製剤との同時服用によって吸収が低下する。
看護の視点
「感染症だから食べられない」と決めつけず、抗菌薬開始後に悪心・下痢が増えていないかを見る。
🚽 排泄
観察すること
- 排便回数
- 便性状
- 水様便
- 血便
- 腹痛
- 発熱
- 尿量
- Cr/eGFR
- 脱水徴候
抗菌薬では、下痢が非常に重要な観察項目となる。
単なる軟便だけでなく、
- 回数が急に増えた
- 水様便が続く
- 腹痛を伴う
- 発熱を伴う
- 抗菌薬終了後に出現した
場合には、C. difficile感染症を考える。
看護の視点
「抗菌薬を飲むと下痢することがある」で終わらせない。
抗菌薬関連下痢の一部には、治療を必要とするC. difficile感染症が含まれる。
🌙 睡眠
観察すること
- 夜間の下痢
- 腹痛
- 不眠
- めまい
- 精神症状
- 耳鳴
- 夜間の点滴中の状態
ニューキノロン系
中枢神経系への影響として、
- 不眠
- 不安
- 混乱
- 幻覚
などが報告されている。
アミノグリコシド系
耳鳴やめまい、平衡障害が生じれば、睡眠にも影響することがある。
看護の視点
抗菌薬開始後の新しい不眠・不安・混乱を、入院環境や感染症だけで説明しない。
🚶 運動・活動
観察すること
- 歩行
- 立位
- めまい
- ふらつき
- 筋力
- 腱の痛み
- 関節痛
- しびれ
- 感覚異常
- 転倒
ニューキノロン系
特に注意したいのは、
- 腱炎
- 腱断裂
- 末梢神経障害
- 筋・関節症状
である。
腱障害では、アキレス腱などの、
- 痛み
- 腫脹
- 歩きにくさ
が手がかりとなる。
FDAは、全身投与のフルオロキノロンについて、腱・筋・関節・末梢神経・中枢神経に、持続性または不可逆的となりうる重篤な有害作用が生じうるとして警告している。
特に注意
では腱障害リスクを意識する。
看護の視点
「感染症で足が痛い」「高齢だから歩きにくい」と決めつけず、抗菌薬開始後の腱痛・歩行変化を見る。
アミノグリコシド系
内耳障害により、
- めまい
- 平衡障害
- 歩行不安定
として現れることがある。
看護の視点
新しくふらつきが出た患者では、耳・前庭系の薬剤性障害も考える。
🧠 認知機能
観察すること
- 覚醒状態
- 見当識
- 注意力
- 会話
- 混乱
- 幻覚
- 不穏
- けいれん
- 普段との違い
- 腎機能
βラクタム系
βラクタム系の一部では、高用量投与や腎機能低下による薬剤蓄積などを背景に、
- 意識障害
- ミオクローヌス
- けいれん
などの神経毒性が問題となる。
特にセフェピムなどでは注意する。
ニューキノロン系
- 混乱
- 不安
- 幻覚
- 不眠
などの中枢神経症状が生じることがある。
看護の視点
感染症患者の急な意識変化では、せん妄・敗血症だけでなく、腎機能と抗菌薬も確認する。
3|+α:アレルギー・腎機能/C. difficile感染症
① アレルギー・アナフィラキシー
特にβラクタム系では重要な観察項目となる。
観察すること
- 発疹
- 蕁麻疹
- 掻痒
- 顔面・口唇腫脹
- 咽頭違和感
- 喘鳴
- 呼吸困難
- 血圧低下
- 意識状態
注意するタイミング
看護の視点
投与後の「発疹+呼吸・循環症状」はアナフィラキシーを考える。
また、「ペニシリンアレルギー」という記録だけでなく、
- 何を服用したか
- どのような症状だったか
- 何分・何時間後に起きたか
を確認することも重要である。
② 腎機能
抗菌薬では、腎機能が、
薬剤によって悪化する場合
と、
腎機能低下によって薬剤が蓄積する場合
の両方がある。
特に見る薬剤
- アミノグリコシド系
- バンコマイシン
- 腎排泄型βラクタム系
- ニューキノロン系の一部
観察
- Cr/eGFR
- 尿量
- 脱水
- 投与量
- 投与間隔
- 血中濃度が必要な薬
- 他の腎毒性薬
看護の視点
「腎機能が悪くなった」だけでなく、「今の腎機能に投与量が合っているか」を見る。
③ 抗菌薬関連下痢・C. difficile感染症
C. difficileは抗菌薬関連下痢の重要な原因である。
CDCによれば、C. difficileは抗菌薬関連下痢の約15~25%を占める。
特にリスクが高い抗菌薬として、
- フルオロキノロン
- 第3・第4世代セフェム
- クリンダマイシン
- カルバペネム
などが挙げられている。
観察すること
- 水様便
- 排便回数
- 腹痛
- 発熱
- 食欲低下
- 悪心
- 脱水
- WBC
- 腎機能
注意するタイミング
抗菌薬終了後であっても注意する。
看護の視点
「抗菌薬が終わったから薬剤とは関係ない」と考えない。
4|薬剤別の主な観察項目
βラクタム系
観察
- 感染症状
- 体温
- 発疹
- 蕁麻疹
- 呼吸
- 血圧
- 下痢
- 腹部症状
- Cr/eGFR
- 尿量
- 意識状態
- けいれん
注意するタイミング
特に見るポイント
アレルギー+腎機能+神経症状。
マクロライド系
観察
- 悪心
- 下痢
- 腹痛
- 肝機能
- 脈拍
- 動悸
- 失神
- ECG
- K・Mg
- 併用薬
注意するタイミング
特に見るポイント
QT延長リスク。
アジスロマイシンなどではQT延長・致死性不整脈の可能性があり、もともとQT延長、徐脈、低K・低Mg、他のQT延長薬などがある場合は特に注意する。
ニューキノロン系
観察
- 腱痛
- 腱周囲の腫脹
- 歩行
- 筋・関節痛
- しびれ
- 感覚異常
- めまい
- 不眠
- 不安
- 混乱
- 幻覚
- 血糖
- QTリスク
- 腎機能
注意するタイミング
特に見るポイント
「足が痛い」「しびれる」「急に混乱した」を見逃さない。
重篤な腱・神経・中枢神経症状は、投与開始後比較的早期から生じる場合がある。
アミノグリコシド系
観察
- Cr/eGFR
- 尿量
- 薬物血中濃度
- 耳鳴
- 聴力変化
- めまい
- 平衡障害
- 歩行
- 他の腎毒性薬
注意するタイミング
特に見るポイント
腎毒性+耳毒性。
アミノグリコシド系の主要な用量制限毒性として、腎毒性と耳毒性が知られている。
グリコペプチド系
バンコマイシンで観察すること
- Cr/eGFR
- 尿量
- 血中濃度・曝露量
- 発赤
- 掻痒
- 血圧
- 呼吸状態
- 投与速度
注意するタイミング
特に見るポイント
投与中の発赤・掻痒・血圧変化と腎機能。
投与時反応では、投与速度との関係を確認する。
クリンダマイシン
観察
- 排便回数
- 水様便
- 腹痛
- 発熱
- 食事摂取量
- 水分摂取
- 脱水
- WBC
- 腎機能
注意するタイミング
特に見るポイント
C. difficile感染症。
5|見逃したくないサイン
⚠️ アナフィラキシー
抗菌薬投与後に、
- 全身性蕁麻疹
- 顔面・口唇腫脹
- 喘鳴
- 呼吸困難
- 血圧低下
- 意識状態変化
→ アナフィラキシーを考える。
⚠️ C. difficile感染症
- 頻回の水様便
- 腹痛
- 発熱
- 食欲低下
- 脱水
- 全身状態悪化
→ 抗菌薬使用歴を確認する。
現在服用していなくても、最近の抗菌薬使用歴が重要である。
⚠️ ニューキノロン系
- 新しい腱痛
- 歩行時痛
- しびれ
- 筋力低下
- 混乱
- 幻覚
→ 薬剤との関連を考える。
⚠️ アミノグリコシド系
- 尿量低下
- Cr上昇
- 新しい耳鳴
- 聞こえにくさ
- めまい
- 歩行不安定
→ 腎毒性・耳毒性を考える。
⚠️ βラクタム系使用中の意識変化
特に腎機能低下患者で、
- 急な混乱
- ミオクローヌス
- 意識障害
- けいれん
→ 敗血症性脳症だけでなく、薬剤蓄積による神経毒性も考える。
6|抗菌薬を使用している患者の見方
① 感染症は改善しているか
- 体温
- 呼吸
- 疼痛
- 咳・痰
- 排尿症状
- 創部
- 炎症反応
- 培養結果
↓
② 生活はどう変化したか
- 食べられているか
- 下痢していないか
- 眠れているか
- 安全に歩けるか
- 認知状態は保たれているか
↓
③ 抗菌薬による新たな問題はないか
- 発疹
- アナフィラキシー
- 下痢
- C. difficile感染症
- 腎機能悪化
- QT延長
- 腱障害
- 神経症状
- 耳毒性
↓
④ 患者の状態と投与量は合っているか
- 腎機能
- 肝機能
- 体重
- 脱水
- 高齢
- 併用薬
- 血中濃度
↓
⑤ 抗菌薬を続ける必要性は変化していないか
- 培養結果
- 感受性
- 感染症の改善
- 投与期間
- 経口薬への切り替え
「抗菌薬を投与している」だけでなく、適切な薬を適切な量・期間で使用できているかを見る。
7|Evidence Memo
抗菌薬関連下痢・C. difficile
CDCは、C. difficileを抗菌薬関連下痢の約15~25%を占める重要な原因としている。
特に、
- フルオロキノロン
- 第3・4世代セフェム
- クリンダマイシン
- カルバペネム
はC. difficile感染症との関連が比較的大きい抗菌薬として挙げられている。
リスクは抗菌薬使用中だけでなく、使用終了後にも続く。
ニューキノロン系
FDAは全身投与フルオロキノロンについて、
- 腱炎・腱断裂
- 筋・関節障害
- 末梢神経障害
- 中枢神経症状
など、長期間持続あるいは不可逆的となる可能性のある重篤な有害作用について警告している。
症状は投与開始後、数時間~数週間の範囲でも発症しうる。
アミノグリコシド系
アミノグリコシド系では、
腎毒性と耳毒性
が代表的な用量制限毒性である。
2023年のレビューでも、腎障害と聴覚・前庭障害が主要な毒性として整理されている。
マクロライド系
アジスロマイシンなどの一部マクロライドではQT延長が生じる。
特に、
- 既存のQT延長
- 徐脈
- 低K
- 低Mg
- 他のQT延長薬
がある患者では不整脈リスクを意識する。
8|この早見表を使うときの注意
抗菌薬使用中の、
- 発熱
- 下痢
- 意識変化
- 倦怠感
- 腎機能悪化
は、
感染症そのものによる症状
と、
抗菌薬による有害作用
の両方が考えられる。
特に、
感染症が悪くなったのか?薬剤によって新しい問題が起きたのか?
という視点を持つ。
また、抗菌薬は薬効群内でも腎排泄率、相互作用、有害作用が大きく異なるため、「抗菌薬」という一括りだけで評価しない。