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神経|統合失調症・抗精神病薬

学習目標

  1. 統合失調症の主な症状を区別できる
  1. 4つのドパミン経路を説明できる
  1. 抗精神病薬の薬効群と受容体作用を説明できる
  1. 副作用を受容体作用から予測できる
  1. 生活機能の変化と緊急性の高い症状を観察できる
事前学習スライド構成案

Slide 1|タイトル

抗精神病薬
サブタイトル:
ドパミン経路と受容体作用から、効果と副作用を理解する

Slide 2|抗精神病薬は何を治療する薬か

主に、統合失調症などの精神病症状を治療する。

陽性症状

  • 幻覚
  • 妄想
  • 思考のまとまりにくさ
  • 興奮など

陰性症状

  • 意欲低下
  • 感情表出の低下
  • 社会的引きこもりなど

認知機能障害

  • 注意
  • 記憶
  • 遂行機能など
抗精神病薬は、特に陽性症状への効果が期待される。一方、鎮静によって静かになったことと、精神病症状が改善したことは同じではない。

Slide 3|ドパミンはどこでも同じように働くわけではない

「統合失調症では脳全体のドパミンが過剰」という説明は正確ではない。
症状や副作用を理解するには、4つのドパミン経路を区別する。
ドパミン経路主な働き
中脳辺縁系報酬、情動、動機づけ
中脳皮質系認知、意欲、感情
黒質線条体系運動調節
結節漏斗系プロラクチン分泌の抑制

Slide 4|中脳辺縁系と治療効果

中脳辺縁系のドパミン活動亢進は、陽性症状に関係すると考えられている。
中脳辺縁系のドパミン活動亢進
↓
幻覚・妄想など
↓
D₂受容体遮断・調節
↓
陽性症状を改善
ここが抗精神病薬の主要な治療標的となる。

Slide 5|中脳皮質系と陰性症状

中脳皮質系では、ドパミン機能の低下が陰性症状や認知機能障害に関係すると考えられている。
そのため、すべての経路を強くD₂遮断すればよいわけではない。
必要な経路ではドパミン作用を抑え、その他の経路への影響をできるだけ小さくすることが重要となる。
ただし、統合失調症の病態はドパミンだけでは説明できず、グルタミン酸、セロトニンなども関与する。

Slide 6|第一世代抗精神病薬

主な作用

D₂受容体を強く遮断する

代表例

  • ハロペリドール
  • クロルプロマジン
  • レボメプロマジンなど

特徴

  • 陽性症状への効果
  • 薬剤によって鎮静作用などが異なる
  • 錐体外路症状や高プロラクチン血症に注意
「第一世代だから必ず副作用が多い」ではなく、薬剤、投与量、患者背景によって異なる。

Slide 7|第二世代抗精神病薬

主な作用

D₂受容体への作用に加えて、5-HT₂A受容体などにも作用する。

代表例

  • リスペリドン
  • パリペリドン
  • オランザピン
  • クエチアピン
  • クロザピンなど
第一世代薬と比較して錐体外路症状が少ない傾向があるが、薬剤差が大きい。
一方で、
  • 体重増加
  • 高血糖
  • 脂質異常
などの代謝異常に注意する薬剤がある。

Slide 8|ドパミン部分作動薬

代表例

  • アリピプラゾール
  • ブレクスピプラゾール
D₂受容体を完全に遮断するのではなく、ドパミンの状態に応じて受容体刺激を調節する。
ドパミン活動が強い部位
→ 過剰な刺激を抑える方向
ドパミン活動が弱い部位
→ 一定の受容体刺激を保つ方向
ただし、アカシジアなどには注意する。

Slide 9|受容体作用から副作用を考える

受容体への作用起こり得る症状
D₂遮断錐体外路症状、高プロラクチン血症
H₁遮断眠気、食欲亢進、体重増加
5-HT₂C遮断食欲亢進、体重増加、代謝異常
ムスカリン受容体遮断口渇、便秘、尿閉、認知機能低下
α₁受容体遮断起立性低血圧、めまい、転倒
心筋イオンチャネルへの影響QT延長、不整脈
抗精神病薬はD₂受容体だけに作用する薬ではなく、薬剤ごとに受容体作用の組み合わせが異なる。

Slide 10|錐体外路症状

黒質線条体系のD₂受容体が遮断されると、運動調節が障害される。
症状主な特徴起こりやすい時期の目安
急性ジストニア頸部・眼球・顎などの異常な筋収縮開始・増量後早期
アカシジアじっとしていられない、足を動かす数日~数週
薬剤性パーキンソニズム振戦、筋強剛、動作緩慢数週以降
遅発性ジスキネジア口・舌・顔面などの不随意運動長期使用後
アカシジアは「落ち着きがない」「精神症状が悪化した」と誤認されることがある。

Slide 11|高プロラクチン血症

結節漏斗系では、ドパミンがプロラクチン分泌を抑えている。
D₂受容体遮断
↓
プロラクチン分泌抑制が解除
↓
プロラクチン上昇
症状:
  • 乳汁分泌
  • 月経異常
  • 性機能障害
  • 女性化乳房
  • 長期的な骨量低下など
症状を訴えにくい領域であるため、問診が必要となる。

Slide 12|代謝異常

H₁受容体や5-HT₂C受容体への作用などによって、
  • 食欲亢進
  • 体重増加
  • 高血糖
  • 脂質異常
が起こることがある。
観察項目:
  • 体重・BMI・腹囲
  • 食欲
  • 血糖・HbA1c
  • 口渇・多飲・多尿
  • 脂質
  • 血圧
オランザピンなどでは、重篤な高血糖、糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡にも注意する。PMDA電子添文

Slide 13|生活機能に現れる副作用

食事・嚥下

  • 口渇
  • 食欲亢進
  • 体重増加
  • 鎮静や錐体外路症状による嚥下障害
  • 誤嚥

排泄

  • 便秘
  • 尿閉
  • 多飲・多尿

睡眠

  • 日中の傾眠
  • 過鎮静
  • 夜間不眠

運動・活動

  • 筋強剛
  • 動作緩慢
  • アカシジア
  • 起立性低血圧
  • 転倒

認知機能

  • 反応の低下
  • 注意力低下
  • 抗コリン作用による混乱・せん妄

Slide 14|見逃したくない悪性症候群

抗精神病薬の重大な副作用である。
主な症状:
  • 高熱
  • 強い筋強剛
  • 意識状態の変化
  • 発汗、頻脈、血圧変動
  • CK上昇
  • ミオグロビン尿
  • 腎機能障害
抗精神病薬開始・増量
+
脱水・身体的疲弊・高温環境など
↓
悪性症候群のリスク
疑った場合は、緊急に報告して治療につなげる。ハロペリドールの電子添文でも、急激な増量、脱水、栄養不良などが注意事項として示されている。PMDA電子添文

Slide 15|薬剤選択と投与方法

薬剤選択では、症状だけでなく、
  • 過去の効果
  • 副作用歴
  • 糖尿病や肥満
  • 心疾患・QT延長
  • 便秘・排尿障害
  • 転倒リスク
  • 腎・肝機能
  • 本人の希望
  • 服薬継続のしやすさ
を考慮する。
内服の継続が難しい場合などには、持効性注射剤、LAIが選択肢となる。ただし、本人の意思を無視して使用するものではない。
治療抵抗性統合失調症ではクロザピンが検討されるが、無顆粒球症、心筋炎などのリスクがあり、専用の監視体制下で使用する。

Slide 16|効果と副作用を同時に評価する

効果

  • 幻覚・妄想
  • 興奮・不安
  • 会話のまとまり
  • 睡眠
  • 食事・清潔保持
  • 活動性
  • 対人交流
  • 本人が感じる生活のしやすさ

副作用

  • 眠気・過鎮静
  • 錐体外路症状
  • 起立性低血圧・転倒
  • 便秘・尿閉
  • 嚥下障害・誤嚥
  • 体重・血糖・脂質
  • QT延長
  • 高プロラクチン血症
  • 発熱・筋強剛・意識変化
自己判断による急な中断は、再発や離脱症状につながる可能性があるため、服薬上の困り事を確認して治療者へ共有する。

Take Home Message

抗精神病薬は、受容体作用の違いによって効果と副作用が変わる。
  • 中脳辺縁系のD₂作用を抑えることで陽性症状を改善する
  • 黒質線条体系への影響で錐体外路症状が起こる
  • 結節漏斗系への影響でプロラクチンが上昇する
  • H₁、5-HT₂C、ムスカリン、α₁受容体への作用も観察につながる
  • 症状が静かになったことだけで効果を判断しない
  • 生活機能と副作用を同時に評価する
薬物療法全体の考え方は、日本神経精神薬理学会・日本臨床精神神経薬理学会の統合失調症薬物治療ガイドライン2022と整合する。