血管性パーキンソン症候群
血管性パーキンソン症候群(vascular parkinsonism)
脳梗塞や脳小血管病変により、大脳基底核や前頭葉—皮質下回路が障害されて生じる二次性パーキンソニズム。
どんな病気?
血管性パーキンソン症候群は、脳血管障害によって運動調節回路が障害され、パーキンソン病に似た症状を示す病態。下半身優位の歩行障害と姿勢保持障害が目立ちやすく、両側性で左右差が乏しいことが多い。
原因・病態
高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙、心房細動などを背景に、ラクナ梗塞や白質病変が蓄積する。
大脳基底核や前頭葉—皮質下回路が障害されることで、歩行開始、歩行リズム、姿勢保持、運動の切り替えが難しくなる。
主な症状
運動症状
- 下半身優位の小刻み歩行
- すくみ足、歩行開始困難、方向転換困難
- 姿勢保持障害と転倒
- 両側性の筋強剛、動作緩慢
- 振戦は少ないことが多い
- 上肢の症状よりも歩行障害が先行することがある
伴いやすい症状
- 認知機能低下、注意・遂行機能障害
- 構音障害、嚥下障害
- 尿意切迫、頻尿、尿失禁
- 錐体路徴候、反射亢進、感覚障害
- 脳卒中後の片麻痺や運動障害
危険因子
- 高血圧
- 糖尿病
- 脂質異常症
- 心房細動などの不整脈
- 喫煙、肥満、運動不足
- 既往の脳梗塞・一過性脳虚血発作
診断・鑑別
- 症状の経過、脳卒中の既往、血管危険因子を確認する
- MRI・CTで基底核梗塞、白質病変、脳萎縮などを評価する
- 下半身優位の歩行障害、早期転倒、認知機能障害、尿失禁の組み合わせに注目する
- パーキンソン病、薬剤性パーキンソン症候群、正常圧水頭症、非定型パーキンソン症候群などと鑑別する
- レボドパへの反応は乏しいことが多いが、症例によって効果がみられるため個別に評価する
治療の考え方
脳卒中再発予防
- 高血圧、糖尿病、脂質異常症を管理する
- 禁煙、体重管理、適度な運動を行う
- 原因に応じて抗血小板薬や抗凝固薬を使用する
- 服薬状況と出血症状を確認する
運動・生活への対応
- 歩行・バランス訓練、筋力訓練、作業療法を行う
- レボドパなどの効果と副作用を確認し、薬物療法を調整する
- 杖、歩行器、手すりなどの補助具を活用する
- 嚥下障害や構音障害には、言語聴覚士による評価・訓練を行う
看護のポイント
転倒予防
- 歩行開始時、方向転換時、トイレ移動時のふらつきを観察する
- すくみ足が出やすい場所や時間帯を把握する
- 段差、コード、滑りやすいマットを取り除く
- 急かさず、足元の目印や掛け声を活用する
脳血管障害の管理
- 血圧、血糖、体重、服薬状況を確認する
- 顔のゆがみ、片側の脱力、ろれつ不良、急な意識変化があれば脳卒中再発を疑い、緊急対応する
- 抗血栓薬使用中は、皮下出血、血尿、黒色便、頭痛などの出血症状を観察する
嚥下・排泄・認知機能
- むせ、湿性嗄声、食事時間の延長、体重減少を確認する
- 尿失禁や頻尿による夜間移動・転倒に注意する
- 注意力や遂行機能の低下に合わせ、手順を簡潔にして環境を整える
- 家族と転倒・服薬・受診継続の支援方法を共有する
関連疾患・用語
パーキンソン症候群/脳梗塞/ラクナ梗塞/白質病変/大脳基底核/前頭葉—皮質下回路/脳卒中再発予防/小血管病