薬剤性パーキンソン症候群

薬剤性パーキンソン症候群(drug-induced parkinsonism)

抗精神病薬や制吐薬などによりドパミン作用が抑制され、パーキンソニズムを生じる二次性の病態。

どんな病気?

薬剤性パーキンソン症候群は、薬剤の影響で黒質線条体のドパミン神経伝達が抑制され、パーキンソン病に似た症状が出現する状態。原因薬剤の開始・増量後に発症することが多く、両側性・左右差が乏しい傾向がある。
症状が薬剤中止後も長く続く場合は、薬剤によって潜在していたパーキンソン病が明らかになった可能性も考える。

主な原因薬剤

  • 抗精神病薬:ハロペリドール、リスペリドンなど
  • 制吐薬・消化管運動改善薬:メトクロプラミド、プロクロルペラジンなど
  • その他、ドパミン伝達に影響する薬剤が原因となることがある
高齢者、認知症患者、パーキンソン病の素因がある人では発症に注意する。

主な症状

パーキンソニズム

  • 動作緩慢、動作開始困難
  • 筋強剛、身体のこわばり
  • 小刻み歩行、歩行速度の低下
  • 姿勢保持障害、転倒
  • 振戦:出現することはあるが、パーキンソン病より目立たない場合がある

その他の錐体外路症状

  • アカシジア:じっとしていられない、落ち着かない
  • 急性ジストニア:頸部・眼球・顎などの筋緊張異常
  • 口周囲の不随意運動、舌の突出など
  • 嚥下障害、流涎、構音障害

原因・病態

ドパミンD2受容体遮断薬などにより、線条体におけるドパミンの作用が低下する。大脳基底核の運動調節が障害され、筋強剛や動作緩慢などが生じる。
パーキンソン病と異なり、原因薬剤との時間的関係があり、左右対称性の症状が多い。ただし、両者を完全に区別できない場合もある。

診断・鑑別

  • 症状が始まった時期と、薬剤の開始・増量時期を確認する
  • 抗精神病薬、制吐薬、睡眠薬などの服薬歴を確認する
  • 症状の左右差、安静時振戦、嗅覚低下、便秘、レム睡眠行動障害などを評価する
  • 薬剤中止・変更後の改善経過を確認する
  • 症状が遷延・進行する場合は、パーキンソン病や非定型パーキンソン症候群を再評価する

治療の考え方

原因薬剤の見直し

  • 原因薬剤の必要性、用量、代替薬の有無を確認する
  • 処方医の管理下で減量・中止・変更を検討する
  • 抗精神病薬などは自己判断で急に中止せず、再燃や離脱にも注意する

症状への対応

  • 必要に応じてアマンタジンなどを検討する
  • 抗コリン薬は症状に有効なことがあるが、高齢者ではせん妄、認知機能悪化、尿閉、便秘、口渇に注意する
  • 転倒予防、嚥下評価、歩行訓練などのリハビリテーションを行う
  • 改善には数週から数か月かかることがあり、経過を記録する

看護のポイント

服薬・症状の観察

  • 服薬内容、開始日、増量日、症状出現日を確認する
  • 動作緩慢、筋強剛、振戦、歩行、姿勢保持、転倒を観察する
  • アカシジア、ジストニア、口周囲の不随意運動の有無を確認する
  • 薬剤変更後の症状と精神症状の変化を記録する

転倒・嚥下への対応

  • 歩き始めや方向転換時のふらつきを確認する
  • 環境整備、見守り、補助具の使用で転倒を予防する
  • むせ、湿性嗄声、流涎、食事時間の延長を観察する
  • 必要時は嚥下評価や食形態の調整につなげる

緊急性の判断

  • 高熱、著しい筋強剛、意識変容、発汗、頻脈などがある場合は、悪性症候群を疑い緊急に報告する
  • 強い頸部・喉頭部のジストニアや呼吸困難がある場合も、速やかに対応する

関連用語

パーキンソニズム/錐体外路症状/ドパミンD2受容体遮断/抗精神病薬/メトクロプラミド/アカシジア/ジストニア/悪性症候群/パーキンソン病