在宅自己注射 対象薬剤追加審議(R5.5.17)

中央社会保険医療協議会 総会(第545回)
○ 在宅自己注射の対象薬剤に係る運用基準(令和2年12月23日中医協総会において 承認)及び学会からの要望書等を踏まえ、以下の薬剤について、保険医が投与することができる注射薬及び在宅自己注射指導管理料の対象薬剤に追加してはどうか。
 
1.ネモリズマブ(遺伝子組換え) 【販売名】 ミチーガ皮下注用60mgシリンジ
【効能・効果】 アトピー性皮膚炎に伴うそう痒(既存治療で効果不十分な場合に限る)
【用法・用量】 通常、成人及び13歳以上の小児にはネモリズマブ(遺伝子組換え)として1回60mgを4週間の間隔で皮下投与する。
【薬理作用】 ネモリズマブは、ヒト化抗ヒトIL-31受容体A(IL-31RA)モノクローナル抗体であり、IL-31と競合的にIL-31RAに結合することにより、IL-31の受容体への結合及びそれに続く細胞内へのシグナル伝達を阻害し、そう痒を抑制する。
【主な副作用】 アトピー性皮膚炎、皮膚感染症(ヘルペス感染、蜂巣炎、膿痂疹、二次感染等)、上気道炎、脱毛症、紅斑、蕁麻疹、中毒疹、ざ瘡、湿疹、尋常性疣贅、自家感作性皮膚炎、落屑、注射部位反応(内出血、紅斑、腫脹等) 等
【承認状況】 令和4年3月 薬事承認
 
 
2.ラナデルマブ(遺伝子組換え)
【販売名】 タクザイロ皮下注300mgシリンジ
【効能・効果】 遺伝性血管性浮腫の急性発作の発症抑制
【用法・用量】 通常、成人及び12歳以上の小児には、ラナデルマブ(遺伝子組換え)として1回300mgを2週間隔で皮下注射する。なお、継続的に発作が観察されず、症状が安定している場合には、1回300mgを4週間隔で皮下注射することもできる。
【薬理作用】 本剤は活性化された血漿カリクレインの基質切断活性に対する阻害薬であり、遺伝性血管性浮腫の急性発作の原因となるブラジキニンの過剰な放出を抑制する。
【主な副作用】 注射部位反応(疼痛、紅斑、内出血、不快感、血腫、出血、そう痒感、腫脹、硬結、異常感覚、反応、熱感、浮腫、発疹)、浮動性めまい 等
【承認状況】 令和4年3月 薬事承認
 
 
3.ホスレボドパ・ホスカルビドパ水和物配合剤
【販売名】 ヴィアレブ配合持続皮下注
【効能・効果】 レボドパ含有製剤を含む既存の薬物療法で十分な効果が得られないパーキンソン病の症状の日内変動(wearing-off現象)の改善
【用法・用量】 本剤投与前の経口レボドパ量に応じて1時間あたりの注入速度を設定し、24時間持続皮下投与する。患者がオフ状態で本剤の投与を開始する場合には、持続投与開始前に負荷投与を行う。なお、必要に応じて持続投与中に追加投与を行うことができる。
通常、成人には、本剤を0.15~0.69mL/時間(レボドパ換算量として約26~117mg/時間)で持続投与する。負荷投与を行う場合は本剤0.6~2.0mL(レボドパ換算量として約100~350mg)を投与する。追加投与は本剤を1回あたり0.1~0.3mL(レボドパ換算量として約17~51mg)で投与する。
本剤の投与量は症状により適宜増減するが、1日総投与量は16.67mL(レボドパ換算量として2840mg)を超えないこと。
【薬理作用】 プロドラッグであるホスレボドパはホスファターゼによりレボドパに速やかに変換される。ドパミンの前駆体であるレボドパは、血液脳関門を通過し、脳内でドパミンに変換され、レボドパがパーキンソン病の症状を軽減すると考えられる。レボドパは末梢でドパ脱炭酸酵素(DDC)及びカテコール-O-メチルトランスフェラーゼ(COMT)により大部分が代謝されるため、代謝酵素阻害剤を併用しない場合、脳内に取り込まれるレボドパ量はごくわずかである。
また、プロドラッグであるホスカルビドパはホスファターゼによりカルビドパに速やかに変換される。カルビドパは末梢性ドパ脱炭酸阻害薬である。カルビドパの脱炭酸酵素阻害活性は脳外組織に限定されるため、カルビドパとレボドパとの併用投与によって、カルビドパは末梢におけるレボドパの脱炭酸化を阻害し、脳内に移行するレボドパ量を増加させ、また、レボドパの脱炭酸反応に起因する末梢作用(悪心、嘔吐など)を軽減する。
【主な副作用】 悪性症候群、幻覚、錯乱、抑うつ、溶血性貧血、血小板減少症、突発的睡眠、悪性黒色腫、閉塞隅角緑内障、注入部位感染、ジスキネジア、浮動生めまい、オンオフ現象、悪心、注入部位紅斑、注入部位結節、注入部位浮腫、注入部位疼痛、体重減少 等
【承認状況】 令和4年12月 薬事承認
 
 
4.ペグバリアーゼ(遺伝子組換え)
【販売名】 パリンジック皮下注2.5mg、同皮下注10mg、同皮下注20mg
【効能・効果】 フェニルケトン尿症
【用法・用量】 通常、成人にはペグバリアーゼ(遺伝子組換え)として1日1回20mgを維持用量とし、皮下投与する。ただし、週1回2.5mgを開始用量として、以下の漸増法に従い、段階的に増量する。1日1回20mgを一定期間投与しても効果が不十分な場合は、40mg又は60mgに段階的に増量できるが、最大用量は60mgである。なお、患者の状態に応じて適宜増減する。
【薬理作用】 本剤は、遺伝子組換えフェニルアラニンアンモニアリアーゼ類縁体であり、テトラヒドロビオプテリン非依存的にフェニルアラニンをアンモニア及びケイ皮酸に代謝する。
【主な副作用】 過敏症反応(アナフィラキシー、蕁麻疹、発疹、呼吸困難、血清病、血管浮腫等)、注射部位反応(紅斑、発疹、そう痒症、硬結、変色等)、関節痛、補体因子C3低下、補体因子C4低下、CRP上昇、低フェニルアラニン血症、頭痛、浮動性めまい、咳嗽、腹痛、悪心、嘔吐 等
【承認状況】 令和4年12月 薬事承認
 
○ また、在宅自己注射の対象薬剤に係る運用基準(令和2年12月23日中医協総会において承認)及び学会からの要望書等を踏まえ、以下の薬剤について、保険医が投与することができる注射薬の対象薬剤に追加してはどうか。
 
1.パビナフスプ アルファ(遺伝子組換え)
【販売名】 イズカーゴ点滴静注用10mg
【効能・効果】 ムコ多糖症II型
【用法・用量】 通常、パビナフスプ アルファ(遺伝子組換え)として、1回体重1kgあたり2.0mgを週1回、点滴静注する。
【薬理作用】 本剤は、末梢組織・臓器では、主にカチオン非依存性マンノース- 6 -リン酸受容体とトランスフェリン受容体1(TfR)を介して細胞内に取り込まれた後、ライソゾームへ運ばれ、蓄積したGAGを分解する。また、TfRを介したトランスサイトーシス3)によって血液脳関門(BBB)を通過し、脳実質の細胞についても、末梢組織と同様にカチオン非依存性マンノース- 6 -リン酸受容体とTfRを介して取り込まれた後、蓄積したGAGを分解する。
【主な副作用】 アナフィラキシー、蕁麻疹、発熱、悪寒 等
【承認状況】 令和3年3月 薬事承認
 
2.アバルグルコシダーゼ アルファ(遺伝子組換え)
【販売名】 ネクスビアザイム点滴静注用100mg
【効能・効果】 ポンぺ病
【用法・用量】 通常、アバルグルコシダーゼ アルファ(遺伝子組換え)として、遅発型の患者には1回体重1kgあたり20mgを、乳児型の患者には1回体重1kgあたり40mgを隔週点滴静脈内投与する。
【薬理作用】 本剤はALGLUを改変した遺伝子組換えヒト酸性α-グルコシダーゼであり、マンノース-6-リン酸(M6P)受容体を介した横隔膜及び他の骨格筋への取込みの増大を目的として、ALGLU上の酸化シアル酸残基にM6Pを結合させたものである。細胞内に取込まれた本剤はライソゾーム中グリコーゲンのα-1,4-及びα-1,6-グリコシド結合を加水分解することにより、グリコーゲンを分解し、組織損傷を改善する。
【主な副作用】 悪寒、頭痛、悪心、そう痒症、発疹、蕁麻疹、咳嗽、筋痙縮、アナフィラキシー等
【承認状況】 令和3年9月 薬事承認