2型糖尿病の薬物療法のアルゴリズム
2型糖尿病の薬物治療のアルゴリズム
目的
日本と欧米では、2型糖尿病の病態や治療戦略が異なっており、日本独自に、「糖尿病の病態に応じて治療薬を選択する」ためにアルゴリズムを作成した
- 病態:
- 欧米人:インスリン抵抗性主体の肥満糖尿病が多い
- 日本人:肥満と非肥満が半々。インスリン分泌低下と抵抗性の程度が個人ごとに異なる
- 治療戦略
- 欧米:2021年版まで初回処方薬として、BG薬が推奨
- 日本:血糖コントロール及び合併症抑制のために、個人ごとの病態に合わせて治療薬を選択する.日本の2型糖尿病の初回処方の実態が、実際に欧米とは大きく異なっていた
→糖尿病の病態、併存疾患に対するエビデンス、日本における処方実態を踏まえて、アルゴリズムを作成(エビデンスや使用実績の蓄積に伴い、適宜修正を行う)
目標 HbA1c
- 熊本宣言 2013
- 高齢者糖尿病の血糖コントロール目標(HbA1c値)
を元に決定する。
合併症予防のための目標:HbA1c 7% 未満
※年齢や併存症等を考慮して目標を設定する
Step 1:肥満合併の評価の重要性
2型糖尿病の病態をある程度判別できる臨床指標として、「肥満の有無」を採用した。
肥満の定義:BMI 25 kg/m 以上
肥満度とインスリン抵抗性には、正の相関がある
→肥満度が高い症例では、インスリン抵抗性の2型糖尿病の病態への寄与度が高い
→それにあった薬剤選択を考慮
日本人を含むアジア人では、低い BMI においても、内臓脂肪蓄積が多く、BMI では非肥満でも、内臓脂肪蓄積によるインスリン抵抗性を認める症例が散見される
→BMI に加えて、ウエスト周囲長を同時に評価することで、内臓脂肪蓄積過剰の有無をより正確に判断することができると考えられる
内臓脂肪蓄積過剰が疑われるウエスト周囲長:
男性 85 cm 以上、女性 90 cm 以上
肥満症例における薬剤:
インスリン分泌非促進系:BG薬、SGLT2 阻害役、チアゾリジン薬
GLP-1 受容体作動薬・・体重減少降下が期待できるため
イメグリミン・・インスリン抵抗性改善作用を併せ持つため
非肥満症例における薬剤: インスリン分泌不全に対する治療薬
インスリン分泌促進系を中心に
Step 2:安全性への配慮
糖尿病治療薬に求められる最重要事項:「安全に血糖を下げる」
HbA1c 低下効果:
GLP-1 受容体作動薬>メトホルミン>ピドグリタゾン>SU薬
低血糖リスクの高い高齢者:SU薬、グリニド薬を避ける
腎機能障害合併者:ビグアナイド薬、SU薬、チアゾリジン薬、グリニド薬を避ける
心不全合併者:ビグアナイド薬、チアゾリジン薬を避ける
Step 3:Additional benefits
心血管疾患:
SGLT2 阻害薬、GLP-1 受容体作動薬
心不全:
糖尿病患者は、症状がなくても将来の心不全のリスクが高い「前心不全状態」と考えられており、心不全の評価と適切な治療が重要である
慢性腎臓病(特に顕性腎症)
Step 4:考慮すべき患者背景
服薬遵守率
医療費