抗コリン薬のリスク評価
どんな指標があるのか?
抗コリン作用による有害事象が懸念される場面は、臨床でも遭遇することが多い有害事象の一つです。抗コリン作用を持つ薬剤は、数多く存在し、広く使われていることも一因といえます。
これまでに、服用薬剤の抗コリン作用を、定量的に評価するために、いくつかの指標が検討されています。
a modified version of the ARS
a modified version of the ACB
100薬剤
SS (Salahudeen Scale) [Salahudeen (2015), New Zealand]
195薬剤
GABS (German Anticholinergic Burden Scale) [Kiesel (2018), Germany]
151薬剤
これらの指標について、開発から時間が経っており、新しい薬が含まれていない、薬の特性が反映されていない、などの問題点も指摘されていました。
CALS (CRIDECO Anticholinergic Load Scale)
2024年には、日本老年学会から、日本版のリスクスケールが発表されました。
日本版抗コリン薬リスクスケール
日本老年薬学会
- 個別薬物の評価: 各薬物の抗コリン作用によるリスクを3段階で評価
- 高スコアの薬物は、より低スコアの薬物へ切り替えることを検討
- 総合的なリスク評価: 総抗コリン薬負荷を評価
- 複数の薬物を服用している高齢者の場合、個々の薬物のスコアを合算して総抗コリン薬負荷を算出することで、薬物療法全体の抗コリン作用によるリスクを把握することが可能になる
臨床で、どのように活用されているのか
ARS
「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」の中で、「L. 抗コリン薬」を見ると、抗コリン作用は単独の薬剤の作用ではなく、服用薬剤の総コリン負荷を評価することが重要であり、有害事象のリスクを示す指標として、Anticholinergic risk scale (ARS) などが用いられることがある、と触れられている。