トラロキヌマブ(遺伝子組換え)
最適使用ガイドラインの要点:
① 薬剤の位置づけ(What)
- ヒトIL-13に対するIgG4モノクローナル抗体
- 既存治療(抗炎症外用薬)で効果不十分な成人アトピー性皮膚炎に用いる生物学的製剤
- IL-4/IL-13経路のうちIL-13を選択的に阻害する点が特徴
- 全身免疫抑制薬の代替・前段階として位置づけられる
② 適応・効能の範囲(Where)
- 効能・効果
「既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎」
- 対象は成人(18歳以上)
- 小児・思春期は本ガイドラインの対象外
③ 対象患者の要件(Who)【最重要】
以下①②の両方を満たす成人患者
① 診断要件
- アトピー性皮膚炎診療ガイドラインを参考に
アトピー性皮膚炎と確定診断されていること
② 治療歴+疾患活動性要件
抗炎症外用薬による適切な治療を行っても効果不十分、または継続困難で、かつ一定以上の疾患活動性を有する患者
a) 抗炎症外用薬治療歴
- 直近 6か月以上
- 以下を適切に使用
- ステロイド外用薬(ストロングクラス以上)
- カルシニューリン阻害外用薬
- それでも十分な効果が得られない
または
- 過敏症・顕著な局所/全身副作用により継続困難
b) 疾患活動性(すべて該当)
- IGAスコア:3以上
- EASIスコア:16以上
または
顔面広範囲に強い炎症(目安:頭頸部EASI ≥2.4)
- 体表面積(BSA)10%以上
👉 「外用治療が不十分」+「数値で確認された中等症〜重症」が必須
④ 投与・使用方法の要点(How)
- 初回投与:600 mg 皮下注
- 維持投与:300 mg を **2週間隔(Q2W)**で皮下注
- 投与開始時は原則
ステロイド外用薬・保湿外用薬と併用
- 16週時点で治療反応がなければ中止
- 寛解維持(目安6か月)できた場合
→ 一時中止を検討
- 再燃時の再投与では
再度②の治療歴要件を満たす必要はない
⑤ 医療機関の要件(Where / By whom)
以下すべてを満たす施設で使用
- アトピー性皮膚炎の
- 重症度評価(IGA・EASI等)
- 診断・治療に精通した医師が責任者
- 医師要件(いずれか)
- 皮膚科診療経験 5年以上
- またはアレルギー診療経験 3年以上含む臨床経験6年以上
- 製造販売後調査を適切に実施可能
- 医薬品情報管理・副作用報告体制が整備
- アナフィラキシー等重篤副作用への即時対応体制
⑥ 併用療法・支援の要件(Support)
- 原則併用
- ステロイド外用薬
- 保湿外用薬
- 投与中の注意
- 生ワクチン接種は避ける
- 経口ステロイド使用中の場合
→ 急な中止は不可(漸減)
- 自己注射実施時
- 妥当性の慎重判断
- 十分な教育・訓練・指導が必須
⑦ 有効性・安全性の要点(Why careful)
有効性
- 第Ⅲ相試験で
- IGA(0/1)達成率
- EASI-75達成率
がプラセボに対し有意に改善
- 長期投与でも効果維持が確認
安全性
- 主な副作用
- 結膜炎
- 上気道感染
- 注射部位反応
- 頭痛、そう痒、疲労など
- アナフィラキシー等重篤な過敏症の報告あり
- 寄生虫感染に注意
→ IL-13阻害により生体防御低下の可能性
⑧ 実務でのチェックポイント(Summary)
- 🔲 成人(18歳以上)か
- 🔲 外用治療を十分・適切に6か月以上行っているか
- 🔲 IGA・EASI・BSAが基準を満たすか
- 🔲 16週評価の中止判断を忘れていないか
- 🔲 生ワクチン・寄生虫感染・アナフィラキシーの確認
- 🔲 外用療法・スキンケア継続の指導ができているか
- 🔲 「漫然投与」になっていないか
関連通知等