メトホルミンの適正使用に関するRecommendation

2020年3月18日の改訂:ヨード造影剤投与時のメトホルミンの扱いについての記載を改訂
 

乳酸アシドーシス

乳酸アシドーシスの発現を避けるために重要な事項
  • 添付文書に記載された禁忌や慎重投与の事項を遵守する
  • 投与にあたり患者の病態・生活習慣などから薬剤の効果や副作用の危険 性を勘案した上で適切な患者を選択し、患者に対して服薬や生活習慣などの指導を十分に行うことが重要
 

乳酸アシドーシスの症例に多く認められた特徴

1) 腎機能障害患者(透析患者を含む)
2) 脱水、シックデイ、過度のアルコール摂取など、患者への注意・指導が必要な状態
3) 心血管・肺機能障害、手術前後、肝機能障害などの患者
4) 高齢者
高齢者だけでなく、比較的若年者でも少量投与でも、上記の特徴を有する患者で、乳酸アシドー シスの発現が報告されていることに注意。
 

Recommendation

まず、経口摂取が困難な患者や寝たきりなど、全身状態が悪い患者には投与しないことを大前提とし、以下の事項に留意する。
 
1)腎機能障害患者(透析患者を含む)
  • 腎機能を推定糸球体濾過量eGFRで評価する
  • eGFR 30(mL/分/1.73m2)未満・高度腎機能障害患者:禁忌
  • eGFR 30~45:リスクとベネフィットを勘案して慎重投与
  • eGFR 30~60・中等度腎機能障害患者:腎機能に応じて添付文書上の最高用量の目安を参考に用量を調整
 
  • eGFR 30~60:
    • ヨード造影剤投与後48時間はメトホルミンを再開しない
    • 腎機能の悪化が懸念される場合、eGFRを測定し腎機能を評価した後に再開する
 
  • 適切なタイミングで腎機能をチェックする
    • eGFR は急激に低下することがあるため
      • 脱水、ショック、 急性心筋梗塞、重症感染症の場合など
      • ヨード造影剤の併用など
 
2)脱水、シックデイ、過度のアルコール摂取などの患者への注意・指導が必要な状態
  • 脱水、脱水状態が懸念される下痢、嘔吐等の胃腸障害のある患者、過 度のアルコール摂取の患者で禁忌
  • 利尿作用を有する薬剤(利尿剤、SGLT2阻害薬等) との併用時には、特に脱水に対する注意が必要
  • 指導内容
    • シックデイの際には脱水が懸念されるので、いったん服薬を中止し、主治医に相談する
    • 脱水を予防するために日常生活において適度な水分摂取を心がける
    • アルコール摂取については、過度の摂取患者では禁忌であり、摂取を適量にとどめるよう指導する。また、肝疾患などのある症例では禁酒させる。
3)心血管・肺機能障害、手術前後、肝機能障害などの患者
  • 禁忌
    • 高度の心血管・肺機能障害(ショック、急性うっ血性心不全、急性心筋梗塞、呼吸不全、肺塞栓など低酸素血症を伴いやすい状態)
    • 外科手術前後の患者
      • 飲食物の摂取が制限されない小手術は除く
  • メトホルミンでは軽度~中等度の肝機能障害には慎重投与である。
4)高齢者
  • メトホルミンは高齢者では慎重に投与する(特に75歳以上)
 
 
禁忌
2.1 次に示す患者[乳酸アシドーシスを起こしやすい。]
  • 乳酸アシドーシスの既往歴のある患者
  • 重度の腎機能障害患者(eGFR 30mL/min/1.73m未満)又は透析患者(腹膜透析を含む)
  • 重度の肝機能障害患者
  • 心血管系肺機能に高度の障害(ショック、心不全、心筋梗塞、肺塞栓等)のある患者及びその他の低酸素血症を伴いやすい状態にある患者[嫌気的解糖の亢進により乳酸産生が増加する。]
  • 脱水症の患者又は脱水状態が懸念される患者(下痢、嘔吐等の胃腸障害のある患者、経口摂取が困難な患者等)
  • 過度のアルコール摂取者[肝臓における乳酸の代謝能が低下する。また、脱水状態を来すことがある。]
2.2 重症ケトーシス、糖尿病性昏睡又は前昏睡、1型糖尿病の患者[輸液、インスリンによる速やかな高血糖の是正が必須である。]
2.3 重症感染症、手術前後、重篤な外傷のある患者[インスリン注射による血糖管理が望まれるので本剤の投与は適さない。また、乳酸アシドーシスを起こしやすい。]
2.4 栄養不良状態、飢餓状態、衰弱状態、脳下垂体機能不全又は副腎機能不全の患者[低血糖を起こすおそれがある。]
2.5 妊婦又は妊娠している可能性のある女性
2.6 本剤の成分又はビグアナイド系薬剤に対し過敏症の既往歴のある患者