【症例】肺高血圧症(PAH疑い):労作時息切れ・失神

症例(肺高血圧症|PAHを想定)

患者情報

  • 30代後半
  • 性別:女性
  • 既往歴:特記事項なし
  • 服薬:なし
  • 妊娠:可能性あり(/希望あり)※指導論点用

現病歴(受診理由)

数か月前から階段での息切れ・動悸が出現し、最近は平地歩行でも息切れを感じる。数日前、駅の階段で息切れとめまいが強くなり、短時間の失神を起こしたため受診。

身体所見・バイタル(例)

  • 体温 36.7℃
  • 脈拍 98/分
  • 血圧 102/64 mmHg
  • 呼吸数 20/分
  • SpO₂ 94%(室内気)
  • 身体所見:頸静脈怒張、下腿浮腫(軽度)、口唇チアノーゼ(軽度)
  • 聴診:Ⅱ音肺動脈成分亢進を示唆(※例)

検査(例)

  • 心電図:右心負荷を示唆(右軸偏位など)
  • 胸部X線:肺動脈陰影の拡大を示唆(※例)
  • 心エコー:右室拡大、三尖弁逆流から肺動脈圧上昇を示唆
  • BNP:上昇(右心負荷)
  • 確定診断:右心カテーテルで mPAP ≥ 20 mmHg(※授業の確認ポイント)

初期評価(ポイント)

  • 進行性の労作時息切れ+失神 → 肺高血圧症を疑う
  • 右心不全徴候(浮腫、頸静脈怒張)に注意

治療方針(例:概要)

  • 原因検索(5群分類を意識):
    • 膠原病、先天性心疾患、左心疾患、肺疾患/低酸素、慢性血栓塞栓など
  • 支持療法:酸素、利尿薬(浮腫/体液貯留)、必要に応じて抗凝固
  • PAHが想定される場合の薬物療法(3経路):
    • ERA(エンドセリン受容体拮抗薬)
    • NO経路:PDE5阻害薬 / sGC刺激薬
    • PGI₂製剤 / IP受容体作動薬
  • 妊娠回避の指導(ERA・sGC刺激薬などは妊娠禁忌)

学習課題

  1. 肺高血圧症の確定診断に必要な検査は?(右心カテーテル)
  1. 失神が出るのはなぜ危険サイン?(心拍出量低下、重症化のサイン)
  1. 肺高血圧症の薬物療法が標的とする3つの経路は?(ET/NO/PGI₂)
  1. ERA、PDE5阻害薬、sGC刺激薬、PGI₂関連薬の代表例を挙げてください
  1. 妊娠・避妊に関する看護指導ポイントは?(妊娠禁忌薬、定期検査・服薬遵守)

追加情報(展開用)

  • 関節痛や皮疹があり膠原病が疑われる(第1群の原因検索につなげる)
  • 長時間の飛行機移動歴があり慢性血栓塞栓(第4群)も鑑別に入れる

ねらい(教員メモ)

  • 「労作時息切れ+失神+右心負荷」→ PHを疑う流れ
  • 確定診断=右心カテ(mPAP基準)
  • 5群分類の視点と、薬物療法の中心が第1群/第4群である点
  • 妊娠禁忌・併用禁忌(硝酸薬、PDE5阻害薬×sGC刺激薬)など安全性の要点