Giorgino F, Cardiovasc (2020) [PMID: 33222693]
「SGLT2阻害薬患者指導箋(JSNP版)」被引用論文
AI まとめ
この論文は、「SGLT2阻害剤による糖尿病性腎症の予防:2型糖尿病患者における心血管疾患および腎疾患リスクスペクトラムに関するレビュー」というタイトルで、次のような内容で構成されています。
概要:
約半数の2型糖尿病患者が何らかの腎機能障害を発症し、多くの場合、慢性腎臓病(CKD)が進行し最終的に末期腎不全(ESKD)を発症することがあります。SGLT2(ナトリウム・グルコース共輸送体2)阻害剤は、糖尿病患者において腎保護効果があることが示唆されています。これらの治療法は、ESKDや急性腎障害の発症率を低下させる可能性があります。
背景:
2型糖尿病患者の約50%が何らかの腎障害を発症します。これは、心血管疾患などの合併症リスクを高めることが知られています。
方法:
主要な心血管アウトカム試験(CVOT)において、SGLT2阻害剤の腎保護効果が評価されました。これには、EMPA-REG OUTCOME、CANVASプログラム、DECLARE-TIMI 58、VERTIS CVなどが含まれます。これらの試験は、末期腎不全や腎臓死などの「ハードエンドポイント」を含む腎イベントの複合体を評価しました。
結果:
EMPA-REG OUTCOME試験では、empagliflozinを使用したグループでプラセボ群に比べて腎障害の発症または悪化が少ないことが報告されました。DECLARE-TIMI 58試験では、dapagliflozinはプラセボに比べて腎複合エンドポイント(腎機能の40%以上の減少、新たなESKD、腎臓または心臓の死)の発生率を有意に減少させました。CREDENCE試験では、canagliflozin群はプラセボ群に比べて主要な腎複合エンドポイント(ESKD、血清クレアチニンの倍増、腎臓または心臓の死)のリスクを30%低下させました。DAPA-CKD試験では、dapagliflozinを使用した患者は、T2Dを持つ患者と持たない患者の両方でプラセボに比べて主要な腎複合エンドポイント(eGFRの50%未満、ESKD、腎臓または心臓の死)の発生率を有意に減少させました。
議論:
SGLT2阻害剤の腎保護効果は、心血管リスクの有無や心不全の有無に関わらず観察されました。腎リスクに応じて、CREDENCE試験のプラセボ群では腎複合エンドポイントの発生率が最も高かったが、SGLT2阻害剤は腎機能障害を持つ2型糖尿病患者においても腎保護効果を維持することが示唆されています。
限界:
SGLT2阻害剤による治療の初期段階で、一部の患者では腎機能指標であるeGFRの一時的な低下が報告されています。これは治療後数週間で安定化することが多く、治療継続によりeGFRの減少が遅くなることが示されています。
可能な応用:
SGLT2阻害剤は、2型糖尿病患者におけるCKDの発症を予防し、CKDの悪化を遅らせる可能性があります。これらの効果は、心血管リスクの高い患者だけでなく、CKDが進行する前の患者においても有効であることが示唆されています。