薬学教育

薬学教育モデル・コア・カリキュラム(令和4年度改訂版)
 
F. 臨床薬学
作成方針
「F 臨床薬学」は、「C 基礎薬学」、「D 医療薬学」、「E 衛生薬学」で学ぶ医薬品や医 療等に関する科学的知識を、大学において、薬物治療を個別最適化するために統合し、更に 医療現場で実践することで「薬物治療の実践的能力」を修得することを目指した目標を中心 として提示している。さらに、「B 社会と薬学」で学ぶ基本的な社会制度やコミュニケーション等に関する知識や行動規範、医療人としての考え方や心構えを理解して、質の高い医 療・福祉・公衆衛生等を医療現場や社会で実践するための目標も合わせて掲げた。 「F 臨床薬学」の各学修目標は、B~G領域の学修内容とのつながりを深く意識した上で、 大学での学びを、医療現場等で「実践」して目標の達成を評価し、成長を促すことを目指して作成されている。
 
平成25年度改訂版との相違点、改訂の意図
平成25年度改訂版の「F 薬学臨床」では、病院・薬局での実務の内容に焦点をあてた学修の項目立てを行い、実務実習履修前に大学教育で修得すべき事項と医療現場の実習を経て修得すべき目標を区別して提示していた。しかし、今回の改訂では、「薬物治療の実践的能力」を醸成することを最大の目的として、薬物治療という用語を、疾患の薬物治療(「D 医療薬学」)と患者個々の薬物治療(「F 臨床薬学」)という概念に分割し、「F 臨床薬学」で体系化することを主眼とした。例えば、「D 医療薬学」で学ぶ疾患や治療薬の標準的、一般的な知識や技能を、「F 臨床薬学」の薬物治療で患者の薬物治療を個別最適化する能力に高めるために統合することが、「F 臨床薬学」における薬物治療である。まず、大学での薬物治療の症例を中心とした学修を十分に行った上で、医療現場での経験を基本とした学修につなげる。したがって、これらの目標は、医療現場における実務実習だけに任せるのではなく、大学と医療施設が連携して教育する目標である。さらに、実習終了後に大学で実習成果を共有して、卒業時の目標達成につなげることを意図して作成している。
内容の構成
急激な薬剤師業務の質的な変化に対応できる医療人材育成を目指し、まず薬剤師の臨床対応能力の根幹である「F-1 薬物治療の実践」能力を提示した。更に薬剤師に求められる社会からのニーズに対応するため、「F-2 多職種連携における薬剤師の貢献」を項目として取りあげ、医薬品の適正な管理や医療安全、感染症制御への貢献を「F-3 医療マネジメント・医療安全の実践」にまとめた。医療現場だけでなく、広く地域住民の健康や衛生環境を維持・増進する薬剤師の重要な役割(能力)を「F-4 地域医療・公衆衛生への貢献」にまとめ、最後に、社会人として医療人として医療現場や地域社会で活動する際に常に実践できなければならない行動・行為・態度の目標を「F-5 臨床で求められる基本的な能力」として提示している。
「A 薬剤師として求められる基本的な資質・能力」とのつながり
「F-1 薬物治療の実践」「F-3 医療マネジメント・医療安全の実践」「F-4 地域医療・公衆衛生への貢献」で修得する能力は、[専門知識に基づいた問題解決能力]、[情報・科学技術を活かす能力]、[薬物治療の実践的能力]、[総合的に患者・生活者をみる姿勢]、[社会における医療の役割の理解]に対応し、「F-2 多職種連携における薬剤師の貢献」は[多職種連携能力]、[コミュニケーション能力]に直接関連している。それらの能力を通して[科学的探究]を具体的に実践する。そして、「F-5 臨床で求められる基本的な能力」は、医療人としての[プロフェッショナリズム]を具体的に行動として示せることを目標としており、[生涯にわたって共に学ぶ姿勢]の醸成を目指すものである。
評価の指針の作成方針
各学修目標の到達レベルは、各大学で設定され、その設定されたレベルにどこまで到達しているかを、大学、医療現場で常に評価しながら学修を進めることになるが、「F 臨床薬学」の入学時から卒業時までの一貫した評価は、大学、医療現場でも一貫して実施する必要がある。そのための共通の評価の観点・視点を指針として提示した。
その他
薬学生の能力や適性は個々に違い、特に実務実習の場では全ての学生に均等な学修機会が与えられるわけではない。その学生の能力や適性、学修現場の環境に合わせた適切な方略を大学と実習施設等が連携して準備し実施することで、ここに提示した目標への到達が可能になるよう、大学、医療現場での具体的な学修対応の幅が確保できるよう配慮した。 また、「G 薬学研究」で修得する能力を、臨床現場の課題解決につなげ、医療・福祉・公衆衛生等の向上に寄与することも「F 臨床薬学」の学修では重要である。