エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023
重要な改訂点:
- 健診受診者に対する医療機関受診勧奨基準の厳格化
- 「蛋白尿(±)が2年連続みられた場合は受診勧奨とする」
- 糖尿病性腎臓病(DKD)患者に対するSGLT2阻害薬の投与が強く推奨される
第 11 章 薬物治療
11-9 CKD 患者のシックデイにおける薬物の中止
CKD 患者は,著しい体調不良時には速やかに医療機関を受診し,薬物の減量や一時休薬を含めた適切な治療を受ける必要がある
- 高齢者や CKD 患者は AKI のリスクが高く,薬剤性の AKI を合併しやすい.
- CKD患者に多く処方され,AKI リスクが高い薬物: RA 系阻害薬,利尿薬,NSAIDs
- 体調不良のシックデイには薬剤性を含む AKI リスクが高くなる
- CKD患者
- 著しい体調不良時には速やかに医療機関を受診し,薬物の減量や一 時休薬を含めた適切な治療を受ける必要がある.
- ヨード系造影剤を使用した CT 検査など
- 腎機能が低下して造影剤腎症のリスクがあるため,ビグアナイド薬は休薬し,NSAIDs の使用は推奨しない
- CKD患者が造影CT検査などを受ける場合(造影剤腎症リスクが高まる状態が予想される場合)
- 薬物の一時休薬を具体的に指導する
CKD 患者に対するシックデイの定義や,シックデイ・ルールは確立されていない
(シックデイルールの例)
- KDIGO
- GFR 60 mL/分/1.73 m2 未満(CKDステージG3a ~G5)のCKD患者
- AKI リスクが高くなるような重篤な併存疾患がある場合には,腎毒性をきたし得る薬物と腎排泄性の薬物の一時休薬を推奨
- RA 系阻害薬(ACE 阻害薬,ARB,抗アルドステロン薬,直接的レニン阻害薬),利尿薬,NSAIDs,メトホルミン(ビグアナイド薬),リチウムとジゴキシン
- 英国におけるAKI 予防を目的としたCKD患者へのシックデイ対策
- 定義:
- ①嘔吐や下痢(軽症でも)
- ②発熱,多汗,戦慄 を呈する場合
- 対処:
- ACE 阻害薬とARB,NSAIDs,利尿薬の一時休薬を患者に指導
- メトホルミン
- 脱水状態が懸念される患者に対する投与には注意が必要
- SGLT2阻害薬
- シックデイ(発熱・下痢・嘔吐などがあるとき,ないしは食思不振で食事が十分に摂れない場合)には、必ず休薬する
- CKD 患者はシックデイには速やかに医療機関を受診し,治療を受けるよう指導することが重要
- 非糖尿病のCKD 患者
- シックデイには「SGLT2阻害薬の休薬・中止を考慮する.」,また「食事摂取ができない手術が予定されている場合には,術前 3 日前から休薬し,食事が十分摂取できるようになってから再開する.」
- 心不全の悪化にともなうシックデイ
- SGLT2 阻害薬の休薬が,心不全をさらに悪化させることが懸念されるため,病態に応じて休薬を判断すべき
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