12 対面授業(精神科薬:行動から効果と有害事象を捉える)

90分の流れ(今日やること)

時間内容ゴール
0〜5分事前学習確認症状を「病状/薬/身体」の3方向で見る
5〜33分各薬効群の要点(抗精神病・抗うつ/気分安定・睡眠薬)重大副作用を“行動とバイタル”で拾える
33〜35分依存・離脱(扱い)急な中止の危険を言える
35〜45分整理演習(症状カード)原疾患/副作用/離脱を仕分けできる
45〜85分3症例演習緊急度判断→確認→報告を練習する
85〜90分小テスト今日の型を確認する

到達目標(対面)

  1. 抗精神病薬の効果と主要副作用を説明できる
  1. 悪性症候群とセロトニン症候群を疑う徴候を挙げられる
  1. 抗うつ薬開始後の気分・行動変化を評価できる
  1. 睡眠薬による転倒・せん妄を評価できる
  1. 向精神薬の急な中止による離脱症状を説明できる

0〜5分|事前学習確認(口頭チェック)

  1. せん妄の特徴を2つ(急性発症+変動、注意障害 など)
  1. 気分や不安に関係する神経伝達物質を2つ
  1. 精神症状を性格と決めつけず考える3方向は?(病状/薬/身体疾患)

5〜17分|抗精神病薬(要点)

作用の基本

  • D₂遮断 → 幻覚・妄想などの陽性症状を改善
  • ただしドパミン経路の遮断で副作用が起きる

主要副作用(まずここだけ)

  • 錐体外路症状(急性ジストニア、アカシジア、薬剤性Parkinson、遅発性ジスキネジア)
  • 鎮静、起立性低血圧、抗コリン作用、QT延長
  • 代謝異常(体重増加、高血糖、脂質異常)
  • 高プロラクチン血症
アカシジアは「落ち着きがない=病状悪化」と誤認されやすい。

17〜27分|抗うつ薬・気分安定薬(要点)

抗うつ薬:効果判定は“経時的”

  • 気分、睡眠、食欲、活動量、会話
  • 希死念慮
  • 副作用

セロトニン症候群(疑うサイン)

  • 焦燥・興奮、発汗、発熱
  • 下痢
  • 振戦、腱反射亢進、クローヌス

気分安定薬:中毒や臓器障害に注意

  • リチウム:腎機能・甲状腺・血中濃度(下痢、粗大振戦、構音障害、傾眠は中毒疑い)
  • バルプロ酸:肝機能、血小板
  • カルバマゼピン:皮疹、低Na、血球減少
  • ラモトリギン:皮疹(重症薬疹に注意)

27〜33分|抗不安薬・睡眠薬(要点)

  • ベンゾ系:鎮静、筋弛緩、呼吸抑制、転倒、依存
  • 非ベンゾ:転倒、健忘、異常行動
  • オレキシン拮抗:翌朝の眠気、転倒
見ること
  • 服用時刻、追加服用
  • 翌朝の眠気、ふらつき
  • 夜間転倒、せん妄
  • 呼吸・SpO₂

33〜35分|依存・離脱(最短)

  • 長期使用後に自己判断で急に中止しない
  • ベンゾ系、一部抗うつ薬、アルコールなどは離脱症状が起こり得る

35〜45分|整理演習(症状カード)

症状カード(例)を「原疾患の症状/薬の副作用/離脱症状/緊急性」で整理する。
  • じっとしていられない
  • 高熱と筋強剛
  • 振戦と下痢
  • 口渇と尿閉
  • 体重増加
  • 粗大な振戦と構音障害
  • 翌朝の眠気
  • 急な不眠・発汗・けいれん

45〜60分|症例1:発熱・筋強剛

32歳男性。抗精神病薬増量3日後に 39.4℃、強い筋強剛、発汗、頻脈、反応鈍い。CK 3500。
  • 最優先:悪性症候群を疑う
  • 確認:薬剤/増量時期、体温、意識、筋強剛、BP/HR、呼吸、尿量/尿色、CK、腎機能、脱水
  • 対応:緊急報告(次回投与を漫然と続けない)

60〜75分|症例2:希死念慮

24歳女性。抗うつ薬開始1週間。会話量と活動性は少し増えたが「薬を全部飲めば死ねるかも」。
  • 直接確認:希死念慮の有無、具体的方法、手段、予定、過去歴、一人になる予定、支え
  • 注意:活動性だけで「改善」と判断しない(切迫性評価が必要)
  • 対応:安全確保(独りにしない等)、危険物アクセス確認、速やかに共有

75〜85分|症例3:転倒・せん妄

83歳男性。入院後不眠に睡眠薬追加。深夜に転倒。翌朝眠気強く「ここは自宅」。
  • 何を考える?:睡眠薬の鎮静、夜間せん妄、起立性低血圧、薬物蓄積、感染/低酸素/疼痛/尿閉/便秘、環境変化、頭部外傷
  • 確認:薬の種類/量/時刻/追加、併用鎮静薬、呼吸・SpO₂、血圧、意識・見当識、排尿排便、頭部打撲、腎肝機能
  • 注意:一律の急中止で離脱が起こり得る → 使用期間とリスクを整理して見直し

症例ワークシート(記入用)

1 観察(事実)
  • いつから(薬の開始/増量/追加):____
  • バイタル(T/BP/HR/SpO₂):____
  • 意識・行動の変化:____
  • 筋所見(筋強剛/振戦/反射):____
  • 消化器症状(下痢/嘔吐):____
  • 排尿(尿量/尿色)、脱水:____
  • 服薬(追加服用/自己中止):____
2 判断
  • 原疾患/副作用/離脱:どれが最優先?____(根拠:____)
  • 緊急性:高い/中/低(理由:____)
3 報告(SBAR)
  • S:____
  • B:____
  • A:____
  • R:____

小テスト(例)

  1. 悪性症候群の主要徴候を2つ。
  1. セロトニン症候群で特徴的な神経所見を1つ。
  1. 抗うつ薬開始後に評価すべき項目を2つ。
  1. 睡眠薬使用中に転倒リスクとなる要因を1つ。
  1. ベンゾ系を急に中止してはいけない理由を1つ。