ARB と ACE 阻害薬の比較

副作用の有無だけでなく、作用機序の違いも活用されるべき薬剤

効果

心筋梗塞

冠動脈疾患に対する有効性のエビデンス:
 →大規模スタディで有効性が確認されているのは、ACE 阻害薬
急性冠症候群ガイドライン(2018年改訂版)
  • 左室機能低下(LVEF 40% 以下)心不全症状を有する患者に対して、発症後早期(24時間以内)に、ACE 阻害薬を開始することが推奨されている
    • ACE 阻害薬の有効例が高い例:
      Killip 分類クラス II または III
      入院時 の心拍数が 100 / 分以上の高リスク例
      前壁梗塞患者
急性冠症候群ガイドライン(2018年改訂版)
急性冠症候群ガイドライン(2018年改訂版)
この違いには、ACEi は、RA系を阻害するだけでなく、カリクレイン-キニン系を促進することが一因と考えられる

心不全

心不全に対する有効性のエビデンス
ARNI>ACEi>ARB
2021年 JCS/JHFS ガイドライン フォーカスアップデート版 急性・慢性心不全診療
 
2021年 JCS/JHFS ガイドライン フォーカスアップデート版 急性・慢性心不全診療
2021年 JCS/JHFS ガイドライン フォーカスアップデート版 急性・慢性心不全診療
急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)
左心機能不全に基づく心不全患者:
  • ACE阻害薬
    • ACE 阻害薬は、種々の心血管イベントを抑制する
    • 無症候の左室収縮機能不全についても、ACE 阻害薬は、心不全の入院を抑制し、生命予後を改善する
    • 認容性がある限り、増量すべき
  • ARB
    • 左室収縮機能低下に基づく慢性心不全患者において、ARB は、ACE 阻害薬と同等の心血管イベント抑制効果を有する
    • ACE 阻害薬と ARB の併用について付加的な有効性は確認されていない

副作用

 
ARB と ACE 阻害薬について、薬効(副効用も)と副作用の両面から比較してください 検索日:2024.8.24 Perplexity
ARBとACE阻害薬の薬効と副作用について、以下のように比較できます。

薬効

共通点

  • 両薬剤ともレニン-アンジオテンシン系(RA系)を抑制し、降圧作用を示します[2]。
  • 心臓や腎臓の保護作用があります[1]。

違い

  1. ACE阻害薬
      • RA系抑制に加え、カリクレイン-キニン系を促進します[2]。
      • 心筋梗塞や虚血性心疾患に対して強いエビデンスがあります[2]。
      • 心不全患者の寿命を約30%延長させる効果があります[3]。
  1. ARB
      • RA系をより強力に抑制します[2]。
      • 降圧効果はACE阻害薬よりもやや強いとされています[2]。

副作用

ACE阻害薬

  1. 空咳:最も特徴的な副作用で、特にアジア人で頻度が高いです[2]。
  1. 血管性浮腫:稀ですが重篤な副作用として知られています[2]。
  1. 高カリウム血症:ARBと同様に注意が必要です[1]。

ARB

  1. 副作用が全般的に少なく、忍容性が高いです[2]。
  1. 高カリウム血症:ACE阻害薬と同様に注意が必要です[1]。
  1. 末梢性浮腫:Ca拮抗薬との併用で軽減できる可能性があります[1]。

使い分け

  1. 心筋梗塞や虚血性心疾患:ACE阻害薬が第一選択とされています[2]。
  1. 咳が気になる患者:ARBが選択されることが多いです[2]。
  1. 腎機能障害のある患者:両薬剤とも使用可能ですが、個別の状況に応じて選択します[1]。

その他の特徴

  1. 価格:ACE阻害薬はARBより安価です(概ねARBの半額)[2]。
  1. 排泄経路:ACE阻害薬は主に腎排泄、ARBは主に肝胆汁排泄です[2]。
両薬剤とも有効な降圧薬ですが、患者の状態や併存疾患、副作用のリスクなどを考慮して適切に選択することが重要です。また、妊娠中の使用は禁忌であることに注意が必要です[1]。
論文を根拠に、ACE阻害薬とARBの比較を教えてください 検索日:2024.8.24 Perplexity
ACE阻害薬とARBの比較について、論文を根拠に以下の点を説明します。

心血管イベントに対する効果

複数の大規模臨床試験のメタ解析により、ACE阻害薬はARBと比較して、心筋梗塞や虚血性心疾患の発生リスクをより低下させることが示されています[2]。特に、急性心筋梗塞などの虚血性心疾患に関して、国内外のガイドラインでACE阻害薬の使用が推奨されています[2]。

作用機序の違い

ACE阻害薬はレニン-アンジオテンシン系(RA系)抑制に加え、カリクレイン-キニン系を促進します。一方、ARBはRA系をより強力に抑制します[2]。この作用機序の違いが、ACE阻害薬特有のエビデンスを生み出していると考えられています。

副作用プロファイル

ACE阻害薬は空咳や血管性浮腫などの副作用があり、特に日本を含むアジア人では空咳の頻度が高いことが報告されています[2]。一方、ARBは全般的に副作用が少なく、忍容性が高いとされています[1][2]。

降圧効果

ARBの降圧効果はACE阻害薬よりもやや強いとされています[2]。

経済性

ACE阻害薬はARBより安価(概ねARBの半額)であり、コスト面で有利です[2]。

腎機能への影響

ACE阻害薬は主に腎排泄、ARBは主に肝胆汁排泄であるため、腎機能障害のある患者では考慮が必要です[2]。

使い分けのポイント

  1. 虚血性心疾患や心不全のある患者には、ACE阻害薬が第一選択として推奨されます[2]。
  1. ACE阻害薬による空咳などの副作用が出現した場合、ARBへの切り替えが考慮されます[2]。
  1. 降圧効果や忍容性を重視する場合、ARBが選択されることがあります[2][3]。
これらのエビデンスを踏まえ、患者の状態や併存疾患に応じて適切な薬剤を選択することが重要です。ただし、妊娠中の使用は両薬剤とも禁忌であることに注意が必要です[1]。