炎症性腸疾患(IBD)と5-ASA製剤
症例
30歳男性。
3ヶ月前から血性下痢・腹痛・体重減少が続いていた。
大腸内視鏡検査で直腸からS状結腸にかけて連続性のびまん性炎症が確認され、
潰瘍性大腸炎と診断された。
医師はメサラジン(5-ASA)の経口薬と注腸薬を処方し、
寛解導入療法を開始した。
メサラジン(5-ASA)の作用機序として最も適切なものはどれか。
腸管局所で抗炎症作用を発揮し、炎症性サイトカインやロイコトリエンの産生を抑制する
メサラジン(5-アミノサリチル酸)は腸管粘膜に直接作用する局所抗炎症薬である。
全身には吸収されにくく、腸管局所で以下の作用を発揮する:
メサラジン服用
↓
大腸の炎症部位に到達
↓
① ロイコトリエン・PG産生の抑制
② 炎症性サイトカイン(TNF-α等)の抑制
③ 活性酸素の除去
↓
腸管炎症の鎮静化
↓
血性下痢・腹痛の改善
※ 寛解導入だけでなく寛解維持療法としても長期服用する。
※ 注腸薬・坐薬で直腸〜左側の炎症に直接作用させることもできる。
※ 副作用は比較的少ないが、まれに腎障害があり定期的な腎機能チェックが必要。
免疫全体を強力に抑制するため
メサラジンは腸管局所での抗炎症薬であり、免疫抑制薬ではない。免疫抑制にはアザチオプリンや生物学的製剤(インフリキシマブ等)が使用される。
腸管の細菌を殺菌するため
メサラジンは抗菌薬ではない。潰瘍性大腸炎は感染症ではなく自己免疫的な炎症性腸疾患であり、抗菌薬は基本治療ではない。
腸管の蠕動運動を抑制して下痢を止めるため
メサラジンには止瀉作用はない。炎症を抑えることで結果的に下痢は改善するが、蠕動運動を直接抑制する薬ではない。
潰瘍性大腸炎の治療で看護師が注意すべき点は?
【治療のステップアップ】
- 軽症:5-ASA(メサラジン)経口+注腸
- 中等症:ステロイド(プレドニゾロン)追加
- 重症・難治性:免疫抑制薬(アザチオプリン)、生物学的製剤(インフリキシマブ等)
【看護師の観察・指導ポイント】
- 排便回数・性状・血便の有無を記録
- 5-ASAの自己中断は再燃の原因 → 寛解中も継続服用の重要性を説明
- ステロイド使用時は感染症・骨粗鬆症・血糖上昇に注意
- 生物学的製剤使用中は結核・B型肝炎の再活性化のスクリーニングが必要
- ストレス管理と食事指導(活動期は低残渣食)
- 大腸がんのリスク:長期罹患で定期的なサーベイランス内視鏡が重要