漢方を食間に飲むわけ
こんにちは、こはく堂薬局です。
前回は、「食間」の薬をいつ飲んだらよいのか?
ということを、ご説明しました。
その中で、漢方薬は食間に飲んでください、ということが多いことをお伝えしました。
なぜ。食間なのか?について、ご説明します。
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漢方を食間に飲むのはなぜ?
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「食間」に飲む薬は、
食事と食事の間に飲んでください、という薬です。
つまり、目安としては、食事の2時間後に飲んでください、と基本的にお伝えしています。
胃や腸が空っぽの時に飲んだ方が、よく効くからです、と言いましたが、それは、なぜでしょう?
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生薬の秘密
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漢方薬と似た言葉で、「生薬(しょうやく)」という言葉があります。
生薬とは、漢方薬の元となる、ひとつひとつの植物のことを指していいます。漢方薬というのは、生薬を、目的の調合で合わせたものを、指していいます。
生薬には、薬となる成分が含まれています。
植物細胞の中には、多くの水が存在しており、薬の成分は、水に溶けて、存在しています。溶けにくい成分の場合、糖が結合した“配糖体”として存在しています。
お砂糖が水に溶けるように、糖をつけると、配糖体は “水に溶けやすい” ので、薬の成分も水に溶けて存在することができます。
ただし、人の腸の中では、水に溶けやすいものは、吸収することができません。
なぜなら、人の細胞の表面の膜は、「脂」の性質を持っているからです。脂に溶けやすい性質(脂溶性が高い)を持つ成分の方が、吸収されやすい、という特徴があります。
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腸内細菌の働き
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そこで、働くのが、もともと、人の腸の中に存在している、腸内細菌です。
腸の中には、たくさんの種類の腸内細菌が存在しています。
腸内細菌の働きで、配糖体から糖を外すことで、薬の成分は、水溶性を失い、脂溶性が増すため、腸から吸収されやすくなります。
吸収されやすいということは、薬がよく効くことが、期待できます。
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食後に飲むと・・・
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食後は、胃や腸の中に、たくさんの食べ物が存在しています。
食べ物から栄養を吸収するために、胃や腸は盛んに動き、消化液で消化・分解しようと働いています。
食後に漢方薬を飲むと、薬と腸内細菌とが、出会うことが難しくなります。
ちょうど、人ごみの中では、迷子になりやすい状態と似ています。
腸の最後の方で、ようやく出会えます。
この場合、食後に漢方薬を飲むと、効き目が出にくくなったり、効き目がゆっくりになる可能性があります。
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食後に飲む場合もある
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ただし、すべての漢方薬について、「食間」に飲むべき、というわけではありません。
食事を摂ると、食物を消化するために、胃酸がたくさん出ます。
漢方の中には、胃酸によって、吸収されやすくなる薬があります。
この漢方薬の場合、特に、高齢者では、食後に飲むと、薬が強く効きすぎてしまう、可能性があります。
そのため、効き目が強く出過ぎないように、ゆっくりとじっくりと薬を効かせるために、あえて、「食後」という指示がでることもあります。
また、飲んだらすぐ効く薬では、「症状が出た時に」と飲んでください、と言われることもあります。