GLP-1 受容体作動薬
GLP-1 受容体作動薬
薬剤一覧
- 注射製剤
- 短時間作用型
- リラグルチド(ビクトーザ):1日1回
- エキセナチド(バイエッタ):1日2回
- リキシセナチド(リキスミア):1日1回 →販売中止
- 長時間作用型
- デュラグルチド(トルリシティ):週1回
- セマグルチド(オゼンピック):週1回
- 経口製剤
- セマグルチド(リベルサス)
GLP-1 受容体作動薬の特徴
Q 5-9 GLP-1 受容体作動薬の特徴は何か?
【ステートメント】
・注射製剤であり、血糖値に依存して食後のインスリン分泌を促進すると同時にグルカゴン分泌を抑制する。その結果として、空腹時及び食後高血糖を改善させる。単独投与では低血糖のリスクは少ない。SU薬やインスリン製剤との併用においても血糖降下作用を認めるが、低血糖の発症頻度を増加させる可能性があり、SU薬やインスリン製剤の減量を検討する必要がある。
・副作用として、消化器症状があげられる。胃腸障害の発現を軽減するため、低用量より投与を開始し、用量の漸増を行うことが必要である。急性膵炎の発症リスクの増加に関しては、否定的である。また、心血管イベント発症リスクの高い患者において、リラグルチドや日本の承認用量を超えたデュラグルチド投与は、大血管症の発症を有意に抑制することが示されている。 [1]
Q 5-9 GLP-1 受容体作動薬の特徴は何か?
【ポイント】
・日本では、1日1〜2回の注射製剤、週1回の注射製剤の他に経口薬がある
・血糖値に依存して食後のインスリン分泌を促進すると同時にグルカゴン分泌を抑制する。その結果として、空腹時及び食後高血糖を改善させ、単独投与では低血糖のリスクは少ない。SU薬やインスリン製剤との併用においても血糖降下作用を認めるが、低血糖の発症頻度を増加させる可能性があり、SU薬やインスリン製剤の減量を検討する必要がある。
・副作用として、消化器症状があげられる。胃腸障害の発現を軽減するため、低用量より投与を開始し、用量の漸増を行うことが必要である。急性膵炎の発症リスクの増加に関しては否定的である。
・2型糖尿病患者の大血管症の進行抑制に GLP-1 受容体作動薬が有効であることが示されている。
・2型糖尿病患者の腎症の進行抑制に GLP-1 受容体作動薬が有効であることが示されている。[2]
薬理作用:
- 血糖値に依存して食後のインスリン分泌を促進させる →単独投与では低血糖リスクは少ない
- グルカゴン分泌を抑制する
効果:
- HbA1c 改善作用
- 体重増加の抑制
- →食欲抑制作用が関与していると考えられている
- 体重減少に関する効果は、短時間作用型と長時間作用型では差はない [2]
- 食後過血糖の改善効果
- 短時間作用型(エキセナチド、リキシセナチド)は、食後過血糖の改善効果に優れる[2]
副作用:
- 消化器症状
- 対策:低用量から開始
- 急性膵炎
- 最近のメタ解析や大規模試験の結果から、否定的
注意点:
- 筋肉量の減少・・・食事療法や運動療法を合わせて行うことが重要
薬効群内の薬剤比較
有効性
ガイドラインでは、経口血糖降下薬で十分な血糖コントロールが達成できていない2型糖尿病患者に対して、追加したときの血糖改善効果について、明確な差がある旨の記載はない(いずれも有効)
アドヒアランスの点で、週1回注射製剤や経口製剤のメリットが挙げられている
有害事象
- 注射時の痛み
- ビクトーザ皮下注:A型専用注射針が使用可能(適合性の確認をペンニードルで行っている)
- バイエッタ皮下注:A型専用注射針が使用可能(適合性の確認をBDマイクロファインプラス及びナノパスニードルで行っている)
- トルリシティ(週1回):固定注射針付きキット製剤(29G)
- オゼンピック皮下注(週1回):A型専用注射針が使用可能(適合性の確認をペンニードルで行っている)
- オゼンピック皮下注SD(週1回):固定注射針付きキット製剤
- 消化器症状
【対策】低用量から開始し、漸増
- 急性膵炎:急性膵炎のリスクを上げる可能性については、否定的
参考資料
[1] 日本糖尿病学会:「糖尿病診療ガイドライン2019」.http://www.jds.or.jp/modules/publication/index.php?content_id=4
[2] 日本糖尿病学会:「糖尿病診療ガイドライン2024」.https://www.jds.or.jp/modules/publication/index.php?content_id=4
経口GLP-1受容体作動薬の開発状況
経口GLP-1受容体作動薬の開発は、糖尿病および肥満治療の利便性とアクセス性を高めるため、近年急速に進展しています。以下に、主要な開発状況をまとめました。
主な開発中の経口GLP-1受容体作動薬
1. Orforglipron(オルフォグリプロン) – Eli Lilly
- 世界初の経口GLP-1受容体作動薬として、フェーズ3試験で有意なHbA1c低下(1.3~1.6%)と体重減少(最大7kg)を示しました。
- 注射製剤と同等の効果を持ちながら、冷蔵保存不要で食事に関係なく服用可能です。
- 肥満治療薬として2025年末、糖尿病治療薬として2026年初頭の承認申請を予定しています。 Taylor & Francis Online
2. GSBR-1290(アレニグリプロン) – Structure Therapeutics
- 経口小分子GLP-1受容体作動薬で、フェーズ2a試験において有意な体重減少と良好な安全性を確認しました。
- 現在、肥満および過体重患者を対象としたフェーズ2b試験が進行中です。 Wikipedia+1ir.vikingtherapeutics.com+1structuretx.gcs-web.com
3. CT-996 – Genentech(Roche)
- 経口小分子GLP-1受容体作動薬で、糖尿病および肥満治療を目的としています。
- 特定の細胞内シグナル経路を選択的に活性化する「バイアス型作動薬」として設計されており、フェーズ1試験が実施中です。
4. HS-10535 – Hansoh Pharma / Merck
- MerckがHansoh Pharmaからグローバルライセンスを取得した経口GLP-1受容体作動薬です。
- 開発、製造、商業化に向けて最大19億ドルのマイルストーン契約が締結されています。 Merck.com
開発中止の事例
- Danuglipron(ダヌグリプロン) – Pfizer
- 経口GLP-1受容体作動薬として開発されていましたが、フェーズ2試験での忍容性の問題により、2025年4月に開発中止が発表されました。
今後の展望
- 経口GLP-1受容体作動薬の市場投入は、2025年から2027年にかけて本格化すると予想されています。
- 注射製剤に比べて服用の利便性が高く、冷蔵保存が不要であることから、患者のアドヒアランス向上や医療資源の効率的な活用が期待されています。
- 複数の製薬企業が経口製剤の開発に注力しており、今後の競争が激化する見込みです。 Ozmosi
経口GLP-1受容体作動薬の進展は、糖尿病および肥満治療の新たな選択肢として注目されています。今後の臨床試験結果や承認動向に注視することが重要です。