虫よけスプレーの選び方
ディートは、1946年に米国陸軍で開発され、最も古くから使われており、効果も高いことから、世界的にも広く普及しています。
ディートの蚊の防除効果は、成分の濃度に比例し [1]、濃度が高いほど、防除効果が高いといわれています。30% 濃度では効果持続時間は6時間と言われており、50% 以上では効果は最大に達しているため、それ以上、濃度を上げても効果は同程度です。
デート濃度 | 効果持続時間 |
---|---|
30% | 6 |
15% | 5 |
10% | 3 |
5% | 2 |
米国では高濃度のディートを含む製品が使用されていますが、日本では制限があります。ただし、従来、医薬品が12%、防除用医薬部外品では10%以下のものしか認められていませんでしたが、安全性等を検討した結果、適切に使用すると安全に使用できることが認められた結果、30% までの製品が認められるようになりました。それに合わせて、製品に記載する事項として、ディート濃度を記載すること、改定した使用上の注意事項を記載することが定められました [2]。
防除する害虫
蚊,ブユ(ブヨ),アブ,ノミ,イエダニ,マダニ,サシバエ,トコジラミ(ナンキンムシ),ツツガムシの忌避
小児に使う時の注意点
6ヶ月から使える虫よけ成分です
ディートは、6ヶ月以上のお子さんに使っていただける虫よけ成分です。ただし、使用にあたり、いくつかの注意点があります。
- 使用部位:顔には使用しないでください
- 使用回数
- 6ヶ月未満:使用しないでください
- 6ヶ月〜2歳未満:1日1回
- 2歳以上12歳未満:1日1〜3回
- 成分濃度:12歳未満には、ディート濃度 12% 以下の製品を使いましょう
- 使用方法:スプレー噴霧した液を吸い込まないように、小さなお子さんの場合は、大人の方の手に噴霧して、その手で塗ってあげると良いでしょう。
漫然的に使うのではなく、蚊などが多い屋外に行く時に使う等、必要な時に使いましょう。
乳児の方には、ベビーカー用の蚊帳などもあります。
虫よけスプレーを選ぶ時、ディート濃度を確認しましょう。
(「0歳から使える」と書いてある製品は、6ヶ月以上から使えます)
使用上の注意点
衣類やプラスチック製品などに薬液が付着すると、生地やプラスチックを痛める可能性があります。製品にも、「変色の恐れがあるので、プラスチックや合成繊維にはかけないこと」等の注意書きがあります。
虫よけスプレーのパッケージを見ると、「衣類の上から使える」などと書いている製品は、ディートを含有しない製品だといえます。
安全性
ディートは毒性が低いとされていますが、経口摂取したときや、慢性的に常用した場合、稀に血圧低下や神経性の影響が懸念されています。しかし、諸外国でも安全性の再評価(小児に対して)が勧められており、正しく使うことで、安全に使えることがわかってきました。
イカリジン
イカリジンは1986年にドイツで開発され、日本では防除用医薬品として2015年に承認されました。
イカリジンの特徴は、ディートのような、使用に際し、年齢制限や使用回数制限がないことです。
制限がないと、効き目も弱いのかというと、そのようなことはありません。イカリジンは、ディートと同等の効果があり、長時間持続します。一方で、毒性は低く、ディートが持つ独特の匂い・べたつき、生地やプラスチックを痛めにくい特徴があります [4]。
そのため、服の上からも安心して使用できます。
日本では、イカリジン濃度が、5% の製品と、15% の製品が市販されています。
イカリジン20% スプレーが蚊を防除する効果は、最低3〜4時間は持続すると言われています [5]。
防除する害虫
蚊、ブユ(ブヨ)、アブ、マダニ
ディートと比較して、小児も安心して使いやすい製品です。
ただし、対象の害虫の種類は少ないです。
ディートとイカリジンの使い分け
使いごごち
ディートには独特の匂いやベタつきがあるので、それらが気になる方は、イカリジンを選ぶと良いでしょう。
小児
ディートには、年齢制限や使用回数制限があります。
何回か塗り直したい時には、イカリジンを選ぶと良いでしょう。
ただし、どちらの製品でも噴霧する時には口に入らないように、小さいお子さんには、大人の手に一度スプレーしてから、その手で塗ることをおすすめします。
お出かけの場所
防除対象の害虫の種類は、ディートの方が多く、イカリジンは少ないです。
日常的に公園などのお出かけには、イカリジンでも十分ですが、山の中にキャンプに行く時などには、いろんな虫に効果があるディートを選ぶ方が良いでしょう。
マダニの防除
マダニの防除には、ディート及びイカリジンの両方ともに有効です。
厚生労働省が作成した資料にわかりやすいまとめがありましたので、ご紹介します。
ただし、防除剤だけでは完全ではありませんので、屋外では肌の露出を少なくするような服装をするなどの対策を合わせて行うことが大切です。
お気をつけて、お出かけをお楽しみください。
参考論文)
1) Koren G, Matsui D, Bailey B. DEET-based insect repellents: safety implications for children and pregnant and lactating women. CMAJ. 2003 Aug 5;169(3):209-12. Erratum in: CMAJ. 2003 Aug 19;169(4):283. PMID: 12900480; PMCID: PMC167123. [PMID: 12900480]
2) 厚生労働省医薬食品局安全対策課長:「ディートを含有する医薬品及び医薬部外品に関する安全対策について」、薬食安発第0824003号、2005 (平成17) 年8月24日.
3) Katz TM, Miller JH, Hebert AA. Insect repellents: historical perspectives and new developments. J Am Acad Dermatol. 2008 May;58(5):865-71. doi: 10.1016/j.jaad.2007.10.005. Epub 2008 Feb 13. PMID: 18272250. [PMID: 18272250]
4) Tavares M, da Silva MRM, de Oliveira de Siqueira LB, Rodrigues RAS, Bodjolle-d'Almeida L, Dos Santos EP, Ricci-Júnior E. Trends in insect repellent formulations: A review. Int J Pharm. 2018 Mar 25;539(1-2):190-209. doi: 10.1016/j.ijpharm.2018.01.046. Epub 2018 Feb 3. PMID: 29410208. [PMID: 29410208]
6) 厚生労働省「マダニ対策 今できること」https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000164561.pdf
正しく使って、身を守りましょう!